ONEPIECE 896「最後のお願い」

   





カカオ島でルフィと麦わらの一味を待ち受けるビッグ・マム海賊団の兄弟たち。
彼らはカタクリが負ける可能性を微塵も考えず、刻限まで逃げ回ったルフィがブリュレの能力を使って、島に唯一残された鏡から出てくるに違いないと考えている。


一方の麦わらの一味は、ルフィが勝つことを前提に、戦いながらブリュレの身柄の確保を気に留めるほどルフィが器用ではないことを危惧していた。
ルフィvs.カタクリの激闘は、いったいどうなったのか!?


相打ちの上、Wノックダウン …そして、


ギア4thで極限まで戦ったルフィは、ノックダウンからキッカリ10分で目を覚まし、同じ瞬間まで倒れていたカタクリもルフィに呼応するかのように立ち上がった。


しかし、未来を見通した(?)ルフィの強い意志を確認するや、カタクリは背中を地につけるどころか大の字で力尽きた。

さっきのWノックダウンでは、まだ腹ばいに倒れていたが、これはカタクリ自身がルフィの歩む未来を認め、敗北を受け入れた証左である。


ルフィは麦わら帽子にかけていたオーバーハットを、カタクリの口元を覆うように被せてその場を去る。もちろんこれは、戦いの中で心を通わせた相手に対する敬意なわけだが、僕には少し気になることがある。

これがサンジやフランキー、ブルックならば何の問題もない当然の行動だった。しかしルフィは、他人の容姿について素直に感想を述べることがあっても、相手を思い遣って言葉や行動を慎むような男ではない。
カタクリが、慕っていた妹に手のひらを返され、罵詈雑言を吐かれるさまを目の当たりにしようと「第三者として」同情するルフィでは、断じてないはずである。

カタクリは、口が耳まで裂けていることで、幼少期より「フクロウナギ」と馬鹿にされ、忌み嫌われ、それが今もなお克服しきれていないことは、普段は口元を隠していることからも明らかだ。

従来なら容姿のことなど気にしないルフィが、カタクリにここまで気を遣ったのは、戦いの中でカタクリの感情と深くシンクロしたからと思わずにいられない。バトル中の「痛ェ、苦しい、腹へった!」は、やはりカタクリが飲み込んだ言葉を読み取ったのだろう。
「自分の醜い素顔を誰にも見られたくない」というカタクリの強い感情を、ルフィは知ってしまったのだ。カタクリ個人の言動やフランペとのやり取りだけを客観的に見ただけでできる行動ではないように、僕には思えた。

ルフィは「他人の気持ちがわかる」というスキルを身に着けた、…というより、大人として当たり前の心配りができるよう成長したのだ。・・・しかし、それってルフィのキャラクター的にどうなん?という気がしないでもないな。

さて、

戦いは終わった。次はこの鏡世界から脱出して、サニー号と合流しなければならないのだが、ナミたちが心配した通りルフィはノープラン…というか、考える余裕もなかったのだが、なにせ時間がない。


そこへ現れた謎の救世主「ナゾムズ」
そげキングの正体に気づかないルフィが、よくペコムズだと分かったものだが、それはおそらく時間の都合ww ルフィがここでナゾムズの思考を読むほど新能力に熟達しているとは思いたくない…。感覚的に分かった、分かるようになった…という可能性はあるな。

脱出の糸口は掴めた。しかし待ち合わせ場所唯一の出口には千軍万馬が待ち受ける。
だがペコムズだって、ブリュレをルフィに引き渡しただけでは命を救うことにならない事は知っているはず。ペコムズに何か考えがあると思いたいところだが、立場上ここまでしかしてやれない、ということもありそうだ。

そうなると、頼みの綱はサンジ。「一つだけ考えてある、カカオ島を通過する策」とはいったい何か。

プリンがいるのだから、どこかから新しい鏡をサニー号へ持ってくれば、新しい出口は簡単に作れそうだ。だが、問題はそれをルフィに伝える方法がないことなのだ。


ルフィにとって「深夜1時にカカオ島で仲間と合流」は絶対条件なのだ。ペコムズが現在のカカオ島の状況をルフィに伝えたとしても、そこに仲間が向かっているならルフィも行く。ルフィを止めることはできない。偽ルフィをたくさん作るための動物も、今の鏡世界にはいないだろう。


今カカオ島でルフィが現れるのを待っているサンジが「おれが必ず船にルフィを連れていく」と言っているのだから、サンジの考えとは、約束通りに現れたルフィを「なんとかして」連れ去ることなのだろう。

本意でない自己犠牲から始まった身内のゴタゴタに仲間を巻き込んだサンジがなんとか解決することが、物語のケジメ的にも良いだろう。サンジが作ったケーキでめでたく雪解け…となるかと思われたが、ママがケーキ食う場面に居合わせなさそうだし、ここはサンジの頑張りに乞う期待である。

さて、今回のサブタイトルは「最後のお願い」。


プリンは、サンジの一点の曇りもない下心に、心を丸裸にされてしまった。

カタクリと同じように、幼少期からバケモノ扱いをされ、人々に忌み嫌われてきた結果、すっかりひねくれてしまったプリン。「三つ目」を唯一必要としてくれるママにさえ「気味が悪いから隠せ」と言われ、自分でもこの「三つ目」を忌まわしいものと認識していた。

だが、プリンは生まれて初めて、「三つ目」を嫌うどころか、その「三つ目」を本心から好いてくれる男に出会った。得意の演技で籠絡することはできたが、その演技もサンジの素直な言葉の前に敗北した。自分たち家族にはない仲間を信じる気持ち、仲が良かった姉ローラが認めた男のひとり、そして腕(脚)っぷしも強く、ケーキを作る技術においてもサンジはプリンにとって非の打ち所がない男だった。


当初は自分の感情の変化に戸惑っていたプリンだが、条件反射的に憎まれ口を叩く身体とはうらはらに、今ではもう自分の気持ちを受け入れている。サンジのことが好きで好きでたまらない。素直に謝罪もお礼も、もちろん愛の告白もできない自分がもどかしい。

そのサンジとも別れのときが近づいている。

最後にたったひとつだけ、プリンがサンジにした願い事とは何か。

サンジの口からタバコを取り上げたプリン。よくあるパターンならキスシーンへの導入である。しかしプリンがこの機会にサンジにたった一つ願うことが愛の告白やキスであるはずはない。
これはキスするふりをして、サンジの記憶を消すつもりと考えるのが妥当だ。なんとも切ない。

プリンはサンジが自分の記憶操作を見たことがある事をたぶん知らない。そして自分だけが秘めた想いを封印して悲しい別れをしようとしているプリンを見過ごすサンジではないだろう。

おそらく、ここでプリンとサンジの間にどういうやりとりが交わされたかは、後日まで語られることはあるまい。サンジの「男の美学」が、この別れに際し、プリンを幸せにするのか、はたまた不幸にするのか。いやぁ、気になるな・・・

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