崇拝者が多いので少し怖いと思いながらも、あえて言ってみましょう。
僕はカトキハジメ氏のメカに魅力を感じません。
VガンダムとV2だけは独創的で好きなのですが
ここ数年の、理屈で凝り固まった、定規で引いたかのごとき冷たい直線の塊が
どうにも好きになれないのです。
バンダイからの発注で、平面の矛盾をなくすというのはいいと思います。
しかしそれはあくまで立体化するためのものであり
2次元には2次元の見せ方や良さがある、あくまで「別物」だということ。
僕はマジンガーやゲッターを見て育った世代ですから
ロボットは正義の味方であり、男の子の憧れでした。
そこには「燃え」が必須だったのです。
勘違いしないでいただきたいのは、
僕は決してアンチではないし、
永野護や大河原邦男や大張正巳や金田伊功らと比較する気も全くありません。
ただ、カトキ氏をはじめ、同じ方向性でなされたメカデザインは
「燃え」とは対局にあるもので
科学的な根拠(っぽいもの)や、理論的な説得力(っぽいもの)で
塗り固められた、堅くて冷たいゴタクの塊にしか感じられず
「ああ格好いいな」と一瞬思うことがあっても
惚れ込めないと言っているのです。
ガンダム以降ロボットアニメは勧善懲悪ではなくなり
敵には敵の正当性があり、そこにドラマがあるとする作品が増えました。
ウルトラマンは怪獣にも人権(?)があるので倒さないで済ましたり
仮面ライダーはライダーどうしで大バトルだ。
もはやアニメや特撮が子どもたちのためだけに作られていない
という背景があるため、仕方ないのかもしれませんが、
単純な娯楽作品ではなくなったというのはなんとも寂しい話です。
話を戻して付け加えると
近頃のカトキ氏のデザインは、すべて他人の作ったものが下敷きにあって
それを再構築しているだけにしか感じられません。
バンダイの仕事に限って言うと
他人の作ったものを揚げ足取って、理屈を付け足したものを
自分の手柄みたいに「ver.ka」とか言ってるし
それが悪いとは言いませんが、元を考えた人へのリスペクトが足りないんじゃないか。
空想科学読本なんかと同じで、元を作った作家さんに失礼な行為ですよ。
過去のメカは、どんな矛盾があろうともその時点ではそれで完成してるんですよ。
同人作家やガレージキットがするならともかく
「ガンダムのメカは、今日からカトキがスタンダードですから。」みたいな
バンダイの姿勢は、とうてい納得できるものではありません。
たとえばゲッターロボの完全変形玩具を作った人がいます。
そりゃスゴイ。すばらしいと思うし努力は買う。
しかしゲッターを楽しむためには、そんな理屈はいらないんです。
考えるんじゃないんです、感じるんですよ。
今の子どもたちにもっと必要なのは
知識を蓄えたり理論武装することではなく、感受性を高めることじゃないでしょうか。
(・・・と強引な締め。)