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あしたのジョー

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いろんな意味で出来がビミョーらしい「GANTZ」とどっち観ようか
さんざん迷ったあげく、
ネットでの評価が概ね良好な「あしたのジョー」を観ることに。
ストーリーは今さら言うまでもないので割愛しますが
ちゃんと「あしたのジョー」でした。
とりわけCG畑での実績ばかりが目に付く曽利文彦が監督なので
いったいどんな出来になるのか期待薄だと思っていましたが
打撃のスーパースローや回り込み撮影以外には
とくに鼻につくほど目立ったCG描写がなく
ヤマトを撮った山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」と真逆のベクトルで
昭和中期をみごとに表現していたと思います。
もう少し空がくすんでいても、らしかったと思いますが
主演:山下智久という時点で、ジャニオタが観ることを意識しているからか
食いつめ者が流れ着く昭和の貧民街の描写もあまりヘビーすぎず
“拳闘”という、現代のボクシング以上に「死闘」というに相応しい
野放図な男の闘いをもライトユーザーに受け入れやすくなっていると感じました。
やはり特筆すべきは
矢吹丈:山下智久
力石徹:伊勢谷友介 の肉体の作り込みで
監督が監督だけに、どうせCGで修正するんだろうと考えていましたが
侮っていました。
本作撮影に当たり体脂肪率を、山下は5%、伊勢谷は3%まで落としたそうで
それでいてガリガリではなく
実にシャープで精悍な戦士の肉体を作り上げてきました。
有名な減量苦のくだりを経て、
ほんの数秒しか使われない計量シーンでのあばらが浮いた力石の肉体。
さすがにここだけはCGじゃないのかと疑いたくなるゲッソリ具合が
何とあれも伊勢谷が実際に作った肉体だったそうで
主役ふたりの役者根性にひたすら脱帽です。
白木葉子お嬢様の生い立ち以外はさほど大きなアレンジもなく
(西との出会いやウルフ金串の所属など細かな改変はある)
漫画版・アニメ版に慣れ親しんだ僕にとっては
この昭和の名作を、今の観客にどう見せるのか・どう再現するのかが一番の見所で
肉体の作り込みがマスコミに過剰に取り上げられたため
いかに体だけそれらしく作っても、試合内容が実際のボクサーの鑑賞に堪えない
などの批判もされたようだが、そんなことはあたりまえで
そんな枝葉末節のリアル描写は無くてもいっこうに構わないのである。
これはドキュメントではない。
連載開始当初はボクシングのルールもろくに知らなかった漫画家が作画していた
子供向けの娯楽漫画なのである。
ノーガードの丈に“フルスイング”でなぜか“左ストレート”を打ち込む力石だとか
カーロス・リベラばりの目にも留まらぬ高速ジャブだとか
ディフェンスをまるでせずただブルファイトの選手たちとか
その辺の漫画的表現も実に絶妙な再現性だったと僕は感じた。
鑑別所での丈vs力石のクロスカウンターなんか文句の付け所のない完成度だ。
ただ、惜しむらくは
白木葉子役の香里奈が、昭和の女性に見えないことと
丹下団平が、見た目もしゃべり方もあまりに丹下団平すぎ
名優:香川輝之が演じている意味を感じられなかった
(あれほど完璧にメイクして物まね演技なら誰が演じても同じなのでは?)
のが残念だ。
そういう意味では、
丈も西もおっちゃんも原作通りのキャラクターに終始しており
そんな中、ただ力石だけが伊勢谷友介らしさを持っていたと言える。
伊勢谷友介の魅力を再発見し、観ていなかった「CASSHERN」を
今さらながら観てみようかと思わされた昨日。
なかなか良作でした。

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