物語はいよいよ終盤へ
ここから先はおそらく旧作とは大きく異なる展開に
なるものと推測する。
なぜなら、
本土救済の一縷の望み
イスカンダルへ旅立つという主題はかわらずとも
旧作のヤマトが、太平洋戦争終盤をあわせ鏡に、
仮想「鬼畜米英」である敵国ガミラス打倒に熱く燃える
男の艦だったこととは異なり、
イスカンダルの救済原理の違いと、ユリーシャという監視者の存在、
また、戦後70年近くが過ぎた21世紀日本の視聴者の価値基準を鑑み
本作のヤマトは
仇敵を積極的に打倒することを佳しとしていないからである。
旧作では、軍部首脳にデスラー以外の幹部が
ほぼ登場しなかった(登場しても機能しなかった)が
本作におけるガミラスは政府、軍部ともに組織性が明らかとされており
唯一悪のデスラーを倒せば済むという単純な話ではない。
さらに、国家としてのガミラスには
善良(たぶん)なる一般国民も多数おり
星としての寿命が近いからといって、
星そのものを壊滅させてしまうような攻撃が許されるはずもない。
(本作ではガミラスの寿命云々は問われていない)
よって、ここから最終話までは
比較はぐっと少なくなり、
僕が気付いたこと、感心したこと、残念に思ったことなどを
淡々と述べていくことにお付き合い願いたい。
ガミラス現政権に反旗を翻したディッツ提督率いる勢力と
共闘の関係は築けなかった。
恩讐を越えて手を携えることはできなかったと沖田は言っているが
地球の命運を一身に背負っているヤマトと
政権を打倒してまで守護するものがある彼らにとって
今もっとも大事な事象と互いの恩讐は、まったく別の問題であり、
単純に「敵の敵は味方」とはならない。
一朝一夕で手に手を取ることが出来ないのは当然だ。
連絡将校としてメルダを残したことは
ユリーシャを保護することが第一義であることは明らかで
ディッツの信頼に足る手駒が少ないことも物語っているのかもしれない。
無論、メルダ本人の希望もあったのだろう。
その辺の事情を、「航海日誌」という体裁で
掻い摘んで分かりやすく説明してくれた沖田艦長。
旧作ではこの時点ですでに床に伏せったままになっており
そのために古代が艦長代理を任命されるのだが
本作では、組織的にも古代の能力的にもそれはちょっと厳しいのか
沖田艦長は体調を騙し騙し、艦長席に座り続けている。
復讐心からガミラスを叩きたいとは、もう思っていない。
これだ。
ヤマトの任務はイスカンダルへ向かうこと…
ガミラスへ行き、我々と戦うことではないはずだ。
旧作でも、意思決定の流れと、艦長代理:古代の葛藤はそこだったが
執拗にそれを許さないガミラスを葬らない限り
イスカンダルへの道はないという
沖田の判断のもと、ガミラスの駆逐を決意していた。
冒頭にも述べたように、制作時の世界情勢や国民感情、
制作者がアニメ作品に込めたいメッセージなどは、
40年前とは大きく様変わりしており、
あくまでも目的は「地球を救うためにイスカンダルへ向かうこと」
がより強調されている。
山本や島の反感情や、新見をはじめとする違う意見との和合、
また伊東など相容れなかった者の顛末など
反ガミラスに燃え上がる闘志のような単純な感情は
いくつもの細かいエピソードによって、
徐々にフェードアウトさせられてきたことが伺える。
ガミラスとイスカンダルが同じ場所にあると知っていたら
来たかしら?来なかったかしら?
思えばそこから地球人類の試練は始まっていた。
今や地球を滅ぼそうとしている敵国への復讐心も薄れ
敵国人同士が仲良く(?)会話するこの現状に、
父シュルツの殉職特進を経て、名誉ガミラス臣民の地位を得たヒルデ。
そのために特別な徴用があったのか
非純血ガミラス人であるため、セレステラの目に留まったのか
この場に仕えていることに、若干の疑問を感じるが
ファンが多いらしいので、単にそのための再登場かもしれない。
思えば本作でのシュルツは、ただの冒頭のやられ役ではなく、
二等臣民のしくみを視聴者に理解させる重要な役どころであり
かつてはドメルにも信頼されていたという設定が追加された辺りなど
実に恵まれたキャラだと思う。
幼い頃に不当に収容所へ入れられていたセレステラを
若き日のデスラーが御手自ら救い出した。
そのため、セレステラはデスラーに心酔しているのだが
僕には、魔女の血を引くジレル人の数少ない生き残りだから
手駒にしたかっただけにしか思えないんだが。
ただ、その若き日のデスラーの眼差しは
その頃から眠そうな半開き眼だったが、やさしさが垣間見え
現在のような気怠さを感じる冷たい視線ではなかったことから、
総統の座に就いて、今では失ってしまった感情が
あるような気もしないではない。
この悲しみを癒し、未来を示してくれるものは希望
ドメルの追悼式典で
悲しみに暮れる国民感情に便乗し
ドサクサに紛れて大統合を推し薦める
その民意の誘導にユリーシャを利用するデスラー。
ちなみに、
その様子をイスカンダルで見ているスターシャの部屋が
どうにも違和感があると思ったら
旧作のままだった・・・www
ついに大マゼランのサレザー恒星系に到達。
第5惑星エピドラの凪いだ海を、
第一種戦闘配備のまま進むヤマトに突如迫る一陣の光弾
これがデスラーの奥の手なのか!?
次回、急転直下! 何が!? 誰が!? w
余談ですが:
あまねく星々、その知的生命体の救済・・・
言葉は立派だが、自分では動かず他人を試すだけ
そう。
この上から目線での投げっぱなしの博愛精神には僕も違和感を感じている。
救済するテクノロジーは持っているが
旧作と同じくそれを運搬・運用する人員がもうすでに居ないのだろうか。
しかし、イスカンダルは何百年も前から
同じ様な救済を行ってきたようだし、
救済したにもかかわらず滅んでしまったビーメラ4のような星もある。
あまねく星々には、さまざまな要因で
絶滅の危機に瀕している知的生命がいることだろう。
そのすべてを救えるというのか、スターシャ?
あまねく星々と言いながら
ひょっとしてイスカンダルが救いの手を差し伸べていたのは
兄弟星ガミラスが侵略した星だけではないのか。
わからない・・・スターシャの真意がわからない・・・