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ジョジョの奇妙な冒険 第三部 #28「アヌビス神 その1」

コミックス 21巻02章~04章中盤までに該当。

花京院が未だ入院する病院前で、看護師たちにモテモテのイギー。
原作にはないカットだ。
このあと、色々と細かい部分にイギーの出番が増やされている。
原作では、イギーの存在が往々にして忘れられているため、
イギーもこの星屑十字軍の小さな、されど立派な一員であることを
所々でアピールしようというのだと思う。
しかし、
イギーは、従順な、いわゆるDIOが嫌うような

「人間にへーこら」する犬ではないので
本来であれば、一行と常に足並みを揃えて描写する必要はない。
たとえば数話分まったく姿を現さなくとも
気まぐれに、しかししっかりとついて来ているとわかりさえすれば、
演出として、必要な部分に少しだけ顔を出すその方が
むしろイギーらしいといえる、と僕は思うのだが
「何か役割を与えられた時以外は忘れられている」かのような印象が
不都合だと、アニメスタッフは考えたのではないだろうか。
くれぐれも出過ぎに注意していただきたい。
イギーの出番追加については、もうひとつ理由がありそうなので
それについては後で述べる。
貧しい牛飼いの青年:チャカが拾った「刀」

刀自身が意志を持つかのように主を選ぶ。
宿り木を探していた意志持つ刀は、
日頃から抑圧されたチャカの負の心に呼応した・・・のか?
おまえは私の本体になるのだ…
おまえは剣の達人だ…

「アヌビス神」は本体を持たないスタンドとされている。
ネタバレすると、
500年前にこの刀を作った刀鍛冶がスタンド使いで、
彼の死後、スタンドだけが刀に宿ったもの。
本来スタンドは人間の生命のエネルギーから発生するもので、
生きていても、本体の人間が弱まればスタンドもまた弱体化し
生命が消失すれば、それに由来するスタンドも消滅するはずである。
しかしそうならなかったのは、
死んだスタンド使いが、余程強い残留思念を残したとしか考えられず
たとえば
卓越した鍛冶としての技術を持ちながら不当な評価をされるなど
社会や個人に強い怨嗟の念を抱いて死んでいったとか、
逆に、破滅的快楽殺人趣向の人(第一部のジャックみたいな)だったとか、
そんな人を斬らずに居れない衝動が「怨念」として刀に定着したものだろう。
ま、平たく言えば「妖刀」だ。
妖刀の伝説は世界各地に存在するので
それがスタンドによるものかもしれない、という切り口にはロマンがある。
これまでにない斬新なスタイルのスタンド。
斬新なだけに稀有。
なぜアヌビス神だけが・・・? などというツッコミは野暮なのだ。
ところで余談だが:
「アヌビス神」とは、エジプト神話に登場する冥界の神で
ジャッカルの頭部を持つ半獣半人の姿で描かれることが多い
マンガやファンタジーではお馴染みのキャラクターだ。
古代エジプトをモチーフとした「ONE PIECE」のアラバスタ編には
明らかにアヌビスをモデルとしたであろう
ジャッカルの守護神が描かれ、その化身として

動物系悪魔の実「イヌイヌの実 —モデルジャッカル-」の能力者:チャカ
というキャラクターが登場する。
アヌビスの化身の名前が同じくチャカ・・・
これは偶然ではないはずだ。
刀を拾ったチャカの名前の由来は、歌手のチャカ・カーンとされているが
それは「アヌビス → チャカ」の図式がまず在りきで
語呂あわせに歌手の名前を当てはめた、と考えたほうが自然だ。
どうやら、ジャッカルのことを
トルコ地方の言葉で「チャカー、チャカル (çakal) 」というらしく
そこから「チャカ・カーン」が想起されたと、勝手ながら推察した。
ちなみに、あとで出てくる理髪店主人の名前は「カーン」だ。
閑話休題

アスワンから北へ60kmほどのコム・オンボ
漫画的には舞台映えする観光地を次々と巡って行きたかったのだと思うが
こんなところに寄り道するのは行商人の船に便乗させてもらっている都合
という説明がなされている。
まぁ寄り道とはいっても、ナイル川を北上する通り道なので
この「寄り道」とは、「上陸している暇も惜しい」と言う意味だ。
別段、大きく迂回するルートを通っているわけではない。
そして原作では、ただ皆とはぐれて神殿まで来たポルナレフだったが

本作では、パピルス売りを構っている間に皆を見失い、
空腹凌ぎにガムを出したと同時に、
ガムを奪って逃げたイギーを追って神殿に辿り着いたことになっている。
前述の続きであるが、
これらの執拗なまでのイギーの絡め方は、ある意味「伏線」「前フリ」だ。
大切な仲間のひとり(一匹)として、
視聴者に忘れられないよう等しく出番を与えると同時に、
物語終盤、イギーとポルナレフは重要なパートナーとなるので
彼らの関係性をより濃く描写するため
今から「仲良しさん」にしておく作戦と、僕は読み取った。

「アヌビス神」チャカとの邂逅。

こいつ…剣をにぎっているが…
スタンドでなく、その剣でおれと闘うというのか?

うん。そこはまだ変じゃないね。
生身で(しかもハサミで)チャリオッツと打ち合う婆を知ってるもんな。
原作とはセリフが入れ替えられており、
素人丸出しの握りや身のこなしと、なにかヤバい威圧感の矛盾に
違和感を覚えたと分かりやすくなっている。

こそこそ隠れてねェで、出てきやがれッ!!
打ちあいながら柱を回りこむ。
ここのアクションすごくいいです。

柱を切り倒しポルナレフに襲いかかるチャカ。
この瞬間、チャカは刀を左手で持っている。
原作でもこのシーンでは左で、他にも右だったり左だったり定まってはいないが
基本的に斬りつける構えは右利きのものだ。
本作では最初に刀を拾い上げるときからして

左手で逆手で拾うという、不自然極まりない持ち方をしており、

ここでは両手で構える際に、柄を余して握った左手はそのまま添え手に、
右手を後から上に、すなわち、見た目だけは右利きの剣の持ち方をしている。
しかし、右利きの剣士が戦闘中に剣を片手で持つことがあった場合
利き手でない左手で持つことなんてあるだろうか。(あったらゴメン
これはチャカの剣を操る所作がまるで素人であるということを
原作よりもより強調しているのだと思う。

秘密の奥の手、剣針を飛ばし、跳弾でチャカを仕留めたポルナレフ。
本当にヤバかったんだね。
しかし勝利後
この刀・・・すげぇ美しいぜ・・・
刀の魔力に魅せられ・・・
・・・なかった
ここでもイギーが存在感を出してます。

当然おれ様ほどじゃない、という確固たる自信の気持ちはあるがね。
と、ポルナレフは内心思った。

エジプト編に入ってからここまで3話、まったく出番がなかった
ナレーション:大川透の声を久しぶりに聞いたと思ったら
原作ではト書きでもなんでもないところだった・・・
無理やりナレーションにした感じがしないでもない。
一行はエドフへ。
エドフはコム・オンボよりさらにナイル川を北上した町。
コム・オンボとおなじく神殿が有名らしいが、今回は神殿は登場しない。
刀を警察に届ける前に理髪店に立ち寄るポルナレフ。

昨日はころげまわったんで・・・」と原作にはないセリフが挿入され
チャカとの戦いが前日の出来事だったことが示唆されているが
その直前、ふらりと出かけようとするポルナレフに
「ひとりになるんじゃあない!」「さっき言ったばかりじゃろうが」
と、ジョセフが言うのはちょっと不自然だな。
何度も言われている可能性もあるが、
視聴者に分かるように言ったのは前日のチャカ戦の後だからな。

今度は理髪店店主が襲ってきたッ!!そして!そしてッ!!!
次回「アヌビス神 その2」
注)
アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」 のレビューは
コミック版との比較をしてみようというスタンスで書いています。
決して原作やOVA版崇拝者ではありませんし、アニメスタッフに喧嘩を売るつもりもありませんが
思ったことは言うというブログ自体の姿勢を崩すつもりはないので
ファンの方には、しばしば不愉快な思いをさせることがあると思います。
それについては、何というかもう・・・ご了承ください。
また、検証・認識の甘さから、的はずれなことを書くかもしれません。
その場合は、遠慮なくご指摘ください。

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