コミックス 30巻02章中頃~06章までに相当。
「大切な目的」のために、謎の弓と矢を使い、杜王町にスタンド能力者を増やし続けている張本人。
アンジェロの独房に現れた「学生服の男」というのも、この形兆・・・のはずだ。ただ、前回も書いたように、アンジェロの証言にあるような「神秘性」を感じさせるキャラクターでは、もはやなくなってしまっている。
加えて、原作では、形兆というキャラクターはほとんど感情を顔に出さない。
だからこそ「CDをケースにしまう話」を無表情に淡々と話す様に、サイコで不気味な迫力を感じるのだ。ニヤけながら話されては効果は半減である。ただの増上慢にしか見えない。
まぁ結果的に、形兆は、第四部導入部の最大のギミック「スタンド使い大増殖」のきっかけを作った要因ではあるが、ラスボス足り得る「正体不明の絶対悪」などではなかったわけなので、一般的な「小癪な人間」の範囲で表現するのは間違ってはいないのだが、まだこの時点では、杜王町に突然現れた脱走犯で連続殺人鬼のアンジェロにスタンド能力を与えた謎の人物という、作中最大の「悪」という大本命の存在でありながら、物語の仕掛け上、ここで種明かしをする必要はまったくない…ってか、してはならない。
アニメのスタッフは「虹村形兆」というキャラクターを理解できていない、と考えざるを得ない。
億泰の助けもあり、なんとか康一を助けられた仗助。
目覚めた康一の動きが、原作と少し異なる。
クレイジー・Dを一瞥するかのような目の動をするのだ。
これはまったくいただけない。
この時点で、康一にスタンドが見えているかもしれないことを視聴者に気づかせたり、疑わせてはいけない。絶対にダメ。
原作では、実に微妙な表現がなされており、痛くて苦しくて死にそうだった身体がいきなり全快し、突然目覚めたことによる戸惑いのなかで、何かを知覚している様に描かれているが、この時点では読者がそれに気づきにくいように考慮されている。
せめて康一の目の動きと同時に、クレイジー・Dが姿を消すなどしていればよかったのだが。
仗助と康一を屋敷から逃すまいと姿を表した形兆のスタンド「バッド・カンパニー」。
ジェロニモ!
「G・Iジョー人形」はシナリオ上「おもちゃの兵隊」に変更。
その上「M16とかいうカービン・ライフル」という、いかにも荒木作品らしい無駄に細かい説明描写が削られた。
前者は商標的な問題よりもむしろ、今の視聴者がG・Iジョーを知らないからだと思うが、後者は、原作の再現度という意味では少し勿体無い。
実は、M16を短くしたM4が「カービン」と呼ばれるもので、M16自体は「アサルト・カービン」には分類されないそうなので、その誤りを危惧して削除した可能性も考えられるが、「とかいう」と曖昧な表現にしていることと、仗助のミリタリー知識がその程度だったとすれば改変するほどの必要性はない。
この削除は、やはり地味に勿体無い。
ひとりだけ顔のデザインが違う個体が中隊長なのか、中隊長(?の号令に従い一斉射するカンパニー。
塵も積もれば莫大なダメージとなる恐ろしさや「命令に忠実」「規律正しい」ことを強調する演出なのだが
続いて、左に避けた仗助を追う際、「左向け左」と号令が無いと、標的を逃したままなのはどうなのかwww。
この「左向け左」は原作にない演出だ。
これは、個々の兵隊には自我がなく、命令に忠実というよりは、命令通りにしか動けない木偶であることを表していると言えるだろう。
「スタンドは一人につき1体」の原則に合致し理解はしやすいものの、個々に自我がないなら、それを「規律正しい」とは言わないぞ、形兆。
歩兵だけでなく、戦闘ヘリや戦車まで出してくるバッド・カンパニー。
第三部では「ジープ」も「ランクル」もセリフでカットされていたが「アパッチ」はTVで言っても構わないらしい。
自動車メーカーってのは特に配慮が必要だったのかもしれない。
ちなみに、アパッチヘリ胴体横のスタブ翼の兵装は、原作・アニメともに、対戦車ミサイル4発×4装のものと、対戦車ミサイル4発×2装+ロケット弾ポッド2装のものが登場している。
戦車のことは、名称出てこないし、よく知らないので割愛する。
そして、その能力を見極めるために、二人の前に姿を表した形兆。
どうやら、自分にとっての危険因子である仗助を排除することよりも、康一の未確認の能力を確かめることの方が、優先順位が高いらしい。
形兆がスタンド能力者を増やし続けているのは「あること」をできる能力を求めているためだそうだが、その能力をどれほど待ち焦がれているかが垣間見える。
そしてッ・・・
実体化した康一のスタンドは卵状態。
しかし事態がまるで飲み込めない康一は、スタンドを動かすどころか引っ込めることもできないため、その能力は未知。
そして康一のスタンドが進化(孵化)する予兆を見た形兆は康一を殺せない。
余談だが:
このまま「海をまっぷたつに裂いて紅海を渡ったっつうモーゼ」のように・・・
荒木飛呂彦らしい仰々しい喩えだが、この喩えはいかがなものか。
近年の研究者の発表では、モーセが割ったのは紅海ではなく、ナイル川の三角州北東部にある都市付近にできたラグーン(潟湖)であるとするデータもあるが、無神論者の僕にとっては所詮フィクションなのでどうでもいい。
「海を割ったモーセのように」というのは、その人の威厳や圧力に気押されて、自ずと人垣が割れて通り道ができる場合の喩えである。このように、力ずくで道を切り拓くときには、通常引用されない。
喩えるなら「劉備の子を守りながら単騎で敵軍を突破した趙雲子龍のように」などの方が相応しいと思う。
まず足を撃ち逃げられなくし、次に腕を攻撃し防御できなくする。そして最後に頭部を攻撃するという。
まず、地雷で足。
この地雷もスタンドなのか・・・と考えると、少し面白いけど、なんとも陰湿な攻撃だ。
この部屋の中央一体が地雷原になっているとも考えにくいので、絵の通りひとつだけ設置してあったものと推察する。そのたったひとつの地雷を確実に踏ませるために、無意味にも思われた「髪型をけなす挑発」を使ったのだと思われる。
仗助がマジでキレるとどうなるのか熟知していたか、までは分からないが「お前の弱点を知っているぞ」と適度に煽り、短絡的に一直線に向かってくるであろう仗助の性格を形兆は見事に利用したのだ。(たぶん
次にアパッチのミサイルで腕。
見た感じ、大したダメージじゃなさそう・・・
むしろ、こうやってあらゆる弾丸や砲弾を殴って弾き返すことによる「拳のダメージ」の方が大きいんじゃないのか。だがこのとき、すでに仗助の反撃は終わっていた。
さっき叩き落としたミサイル2基が修復され・・・
形兆ノックアウト!
次回「虹村兄弟 その3」
形兆が求める能力とは・・・!?
・・・って、いやいや・・・ちょっと待て。
アパッチに搭載されている対戦車ミサイル「AGM144ヘルファイア」は、通常セミアクティブレーザー誘導。射出装置から照射されたレーザーを受けた目標からの反射光を、ミサイルのシーカーがリアルタイムに捉えて、目標の座標を割り出し誘導する。
移動する目標については、ミサイル内蔵の演算装置が常に、変化する目標の座標を演算し、操舵するのだ。それに必要なレーザーの照射機は、この場合アパッチ本体に内蔵されている。
つまり、仗助がどのような作為を込めてミサイル単体を修復しようとも、ミサイルはアパッチが仗助を狙っている限り、仗助を攻撃するのである。修復されたミサイルが形兆を狙うのは明らかにおかしい。
だがしかし・・・
仮に・・・
このミサイルがリアルタイムなレーザー誘導ではなく射出時の仗助の座標に目標を固定していたと仮定し、ミサイルを腕に受けた仗助が後ろにふっ飛び、
もともと仗助がいた位置(すなわちミサイルの本来の目標の座標)まで形兆が自ら進み出た可能性がある。
このモヤモヤを解消するために、原作にはない「後ずさる描写」を加えたのだとしたら、それはグッジョブ!だよ。アニメスタッフの皆さん!
おことわり)
アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」 のレビューは
「原作準拠」の検証の意味も込め、コミックとの比較をするスタンスで書いています。
基本的に、筆者の好みに応じた揚げ足取り中心の文章となるため
ファンの方には、しばしば不愉快な思いをさせることがあると思いますが、
筆者は決して悪意を持ってはいないことをご理解の上読み進めていただけると幸いです。
また、検証・認識の甘さから、的はずれなことを書くかもしれません。
その場合は、遠慮なくご指摘ください。