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ONEPIECE 841「”東の海”へ」

母に手料理を食べてもらいたい。

病気の母の体調を慮ってのことであれば、サンジの下手くそな料理よりも、病人用に作られた食事を食べた方がいいくらいのことは、子どもにでも分かる。それでも、嵐の中、遥か船団の端にある病棟まで、手ずから届けたかったのは孤独な生活の中で優しい母に会う口実が欲しかったことと、何より、喜ぶ母の顔が見たかったからだ。


侍女が味見をしたら意識が飛びそうになるほどのサンジの激マズ弁当を、母は「おいしい」と喜んでくれた。

本当はもっと美味しく作りたかった。
雨に濡らしたり、転んで落としたりしていない、ちゃんとした物を食べさせたかった。

だが、「また…作ってくれる?」と言ってくれた母の願いに再びちゃんとしたものを作って応える機会は、もう訪れなかった。


母が他界したからだ。

その果たせなかった母への奉仕を、二度と失敗しないように、コックになりたいという夢は、サンジの心に深く募った。


6ヶ月間、ただ牢の中で過ごしていたサンジだったが、他の兄弟に見つかってしまい、再び始まった地獄の日々。
このままでは、この牢でおとなしくコックの勉強もさせてもらえないだろう。殺されることもあるかもしれない。


そんな折、ジェルマ王国は東の海で戦争(ビジネス)をしに大移動を始めていた。

ジェルマ王国はビジネスが終われば北の海へ帰るはず。

東の海に逃げ出せば、あの凶悪な父兄弟と二度と会わずに済むだろうか。
サンジ以外の兄弟で唯ひとり「情」を持つレイジュの手引きで、サンジは逃げ出す。

その際、父親ジャッジに見つかってしまうが、

どこへでも行けばいいが、ひとつだけ
私がお前の父親であることは絶対に口外しないでくれ。恥ずかしいから。と言い放ち、サンジを放逐した。


サンジが、逃げるために乗り込んだ船こそ、客船オービット号。


11年前に、ゼフのクック海賊団に襲われた客船だ。
サンジは密航した船でそのままコック見習いをしていたようだ。

レイジュと会うのが13年ぶりということは、回想のサンジたち4兄弟は、4〜5歳に見えると前回は書いたが、このとき8歳だったことになるな。

さて、今回も気になる点がいくつかある。
まずは、マユゲ以外レイジュにそっくりの母。
「グルまゆ」は、ジェルマ66のシンボルとして最強の戦士を育成する上で人為的にデザインされた可能性があるが、容姿からして、レイジュがこの女性から生まれたことは間違いない。

そして、母のベッドの枕元にある写真立てに注目すると
5人の小さな人影が写っていることから、サンジたち4人もまた、間違いなくこの母から生まれたと考えられる。

その母に、ふたたび手料理を振る舞う機会がなくなったのは、病気だった母が死んだからだが、作中の描写だと、サンジの激マズ料理を食べて体調を崩し、そのまま病状を悪化させて死んでしまった可能性がないとはいえない。

もしそんなことがあったなら、父ジャッジがサンジにだけ、他の兄弟には抱かない感情を持った理由となるかもしれない。
何年も、流浪の姿なき王国として世界の「影」に徹していたのに、北の海の制圧に、ジャッジが突然心変わりしたことにも妻を失ったことに理由があったりする可能性もあるかもな…いや、それはないか。

ただ、その父王ジャッジ。

「無駄な存在」として「生まれなかった事にしたい」のであれば
サンジを殺せばよかったのに、それをしなかった。


そればかりか、王族と同じ食事を与え続け、本や料理の道具などの要望も許可をした。
いずれも牢番の裁量で判断できることではないだろうから、王でなくとも、やんごとなき人物の許可が出ているハズだ。

サンジを殺さなかったことは

自分の甘さに苦悩していたことを吐露しているが、直接手をかける事ができなくとも、処分する方法はいくらでもあるし、飢えさせないだけに留まらず、王族と同じ食事を施すことには、何か明確な意図があるだろう。

そして最後の別れに「自分との血縁を口外するな」と言ったことにも、これらすべて、サンジを守ろうとする意志が見え隠れしているのだ。亡き妻が、いまわの際に何かをジャッジに願ったのかもしれない。

微笑みかけたり愛したりはせずとも、せめてサンジに生きていてほしい・・・と、ジャッジが考えているように思えてならないのだ。そこにねじ曲がった「父の愛」は在るのか・・・。

そして最後に
サンジの境遇に同情し、サンジを逃したレイジュ。


これまでも、巻き込まれるのはごめんだ、と表向きは三兄弟に同調しながら、陰ながら治療などはしてくれていたが


あまりに不憫なサンジを泣きながら旅立たせてくれた、あの姉が、今ではすっかり冷徹になってしまったように見える。
わずかばかり、同情の気持ちはあるようだが、ルフィを助けてくれたのだって、偶然レイジュが「毒」が好物だっただけで、サンジの仲間だからと手心を加えてくれるようにも思えない。そればかりか、サンジの大切な両腕に爆弾付きの腕輪をつけたりしている。


レイジュはすっかり変わって(変えられて)しまったのか、それとも、何か考えがあって冷徹な素振りをしているのか。
はたまた、子供の頃のレイジュの方が、偽りの性格だったとか・・・

レイジュにだけ「情」が残されていたことに、何かウラがある気がするなぁ。

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