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宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち

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無限に広がる大宇宙・・・

耳に馴染みのあるナレーションで、いよいよ始まった「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」。劇場には見に行けなかったが、ようやくDVDを観ることができたので、軽く雑感など述べておく。

DVD第一章の「嚆矢こうし篇」には第01・02話が収録。第二章以降は四話ごとの収録になるということなので、おそらく前作「2199」と、そして旧作のTVシリーズとも同じ、全26話の構成になるのだろう。「2199」のときと同じように、1年後くらいにTV放映されることを願い、そのときには一話一話じっくり旧作との比較レビューをしたいと思う。

旧作から40年近くが経ち、成熟した現代のアニメ技術で、映像はもちろん構想・設定まで現代のアニメファンの視聴に耐えるように、そして、アニメオタク文化の誕生と発展や紆余曲折を共にしてきた旧作世代のファンの期待に耐えうるクオリティにするべく練って練って練り上げられているのは、前作「2199」と同じ。弥が上にも期待が高まる。

結城信輝の美麗なキャラクターや、旧作の松本零士テイストを継承した緻密なメカデザインはそのまま引き継がれているので、ぱっと見の印象として前作との大きな変化を感じにくいが、「2199」の要であり総監督だった出渕裕が降板し、監督は羽原信義に、脚本及びシリーズ構成は福井晴敏に引き継がれた。
まぁ、ブッちゃんはもともと続編を作るつもりがなかっただろうから、降板というよりは「出渕裕はあくまで2199の監督であり、2202には無関係」と割り切るべきだろう。とりあえずは新体制での「2202」を楽しもう。

さて、それでは気づいた点などぼちぼちと・・・。
まずは「お馴染み」と思いがちな冒頭のナレーションだが、旧作と本作「2202」では、まったく似て非なる扱いが為されている。

無限に広がる大宇宙、そこには様々な生命が満ち溢れている。
死んでゆく星、生まれて来る星
その、生命から生命へ受け継がれる大宇宙の営みは、永遠に終わることはない。
あの忌まわしいガミラスと地球の戦いも、宇宙の雄大な時の流れの中では、束の間の混乱に過ぎなかった。
そして今、時は流れて・・・。

これはTV放映版の「2」で使用されたナレーションで、劇場版「さらば〜」ではまた微妙に異なるのだが、内容やその趣旨に大きな違いはない。大宇宙の雄大さと、地球の人類史など比較にもならない悠久の歴史を客観的に述べている。

ところが「2202」では、
無限に広がる大宇宙
静寂な光に満ちた世界
死んでいく星もあれば、生まれてくる星もある
そうだ・・・宇宙は生きているのだ。
生きて・・・ 生きて・・・
だから・・・「愛」が必要だ!


ナレーションを担当しているのは、ズォーダー大帝役の手塚秀彰氏。
・・・というか、この一説は客観的なナレーションではなく、ズォーダーの主観垂れ流しになっている。
ちなみに、このアオリの立ち絵は湖川友謙氏の作画らしい。

実は、はじめの四行は「さらば〜」や「2」ではなく1977年の最初の第一作劇場版の冒頭と同じもの。

旧作では、どこまでも広大な深遠なる静寂で生命に満ち溢れた宇宙、しかしその片隅で、今「地球」という星が滅びようとしている、という導入だった。
そして、地球人にとって大きな出来事だったあの戦争も、宇宙は何もなかったかのように受け入れている。しかし地球レベルにおいては、今また新たな災厄が迫っていた。というのが「さらば〜」や「2」の冒頭だ。

「愛」が必要だ!
どっから出てきたよ、このフレーズ!

あくまで私見だが、旧作の劇場版「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」は、まったく桁外れに強大で理不尽な敵に、古代が地球人類を勝手に代表して「宇宙の愛」や「宇宙の真理」を解き、同胞の屍を涙ながらに踏み越えて地球が平和を手にする物語だ。今観ると、かなり説教じみてて古臭い。
そして、さらに続編を作ることが決定したため、主要クルーを死なせないように改変したのがTV版「2」なので、メインテーマを失った「2」は相当ぬるくてつまらない作品になっている(あくまで私見)。

この21世紀に「犠牲の美学」は受け入れられにくい。「2202」は、時代錯誤とならないように、されど「さらば〜」「2」を明らかに踏襲した展開が求められるという、困難な問題に立ち向かわざるをえないのだ。
そこで採用されたと思われるのが「愛」。
「愛の戦士たち」という副題からして、もう寒気がするほど古臭いのだが、それを押して「愛」をメインテーマに据えることで旧作とのリンクを図ろうというのだろう。方向性は間違っていないと思う。

虚しい・・・実に虚しい・・・
彼らの生命に何の意味があったんだ・・・
その苦痛に報いるどんな意義が、人の生涯にあるんだ・・・
やはり愛が必要だ・・・
この宇宙から根こそぎ苦痛を取り除く「大いなる愛」が・・・。

征服者に抗う弱者の殉死ほど無意味なものはない。暴力によってそれらをも包括統制し、最終的に広義の平穏を与えることができるのは自分だけであると、ズォーダーは極めて独善的な「愛の在り方」を解く。

これに対し、古代たち地球人は、そしてテレサは、どのような「愛」を訴えるのか。羽原・福井コンビの作り出す新たな世界に期待したい。

また、前作「2199」を観た方は誰しも考えたと思うが、前作の制作陣が続編を作らない覚悟で「2199」を完結させた(たぶん)ため、旧作をただなぞっては作れない様々な事情が存在する。

「2199」において、地球を汚染物質から救う「コスモリバース」の依代となったヤマトが、波動エネルギーの兵器への転用を禁止することをスターシアと約束し、艦首波動砲を封印していたことや、
地球連邦政府が、ガミラス新政府との間に和平を結び、同盟国となっていることなどが、その代表的な例だ。

ヤマトの波動砲はもとより、波動エネルギーの兵器転用ができないとなれば、アンドロメダも建造できない。
しかし地球連邦政府は、あれは沖田艦長の独断で為された口約束に過ぎず全地球の意思ではないと、スターシアとの約束を反故にし、アンドロメダを旗艦とする波動砲艦隊構想を進めていた。イスカンダルの姉妹星であるガミラスと同盟関係にあるというのに、である。


済んだことよりも未来のこと。地球の復興とより一層の発展、またガミラスと共に宇宙の恒久平和を目指すためには強力な軍備が必要となることは明白なので、政治的な決断としては正しいのかもしれないが、地球は未来永劫「恩人に後ろ足で砂をかけた」と言われ続けることになるだろう。


この3年で再編成された地球連邦宇宙軍にも相応の変化があったことが伺え、ヤマトに潜入させたクーデター部隊の首謀者としての咎で更迭されたのか、「2199」最終回には司令部から姿を消していた芹沢が、以前よりも軍事最高責任者としての発言権を増している。波動艦隊構想推進派とタカ派の後押しによって復権したらしい。


そして、あろうことかヤマトも波動砲艦隊構想の一翼を担うべく大幅な改装工事が施されていた。
あぁ、ティザーサイトの小林誠のイラストはこれだったか。
ヤマト強化の理由付けとしてはいささか苦しい気がする。

で、ガトランティスは「2199」と「星巡る方舟」で、すでに登場済みだからなのか、「全てが謎に包まれた正体不明の敵」ではない。ガミラスと抗争中の敵勢国家で、ドメル艦隊に蹴散らされていたのがウソのように強い。

しかも謎の巨大石柱の中から大型戦艦が現れ、ガミラス・地球連合艦隊は壊滅的被害を被るのだが、

コレ・・・ちょっとネタバレするけど・・・
ラストで超巨大戦艦が出て来る布石と考えるべきなのか、超巨大戦艦登場の驚きや絶望感が台無しになると危惧するべきなのか、第一話でこのギミック使っちまうのかよ・・・と少々驚いた。

余談だが:
本作では白色彗星帝国のことを「ガトランティス」と呼んでいるが、旧作では「ガトランチス」だった。


旧作では「ものすごい高出力で発せられている恒星間通信」だったテレサのメッセージは、元ヤマトクルーの脳にだけ直接伝わる念波のようなものになっており、各人身近な故人の幻覚を見たという。古代の場合は沖田艦長が「ヤマトに乗れ」と・・・。
故人の幻がオレンジ色の世界なのは旧作を踏襲していて良いね。

ヤマトに残された謎の女性からのメッセージ。それは地球へ向かっている未知のクエーサーとほぼ同じ方角から明らかに地球をめがけて発せられていた。謎の女性は間違いなくヤマトを呼んでいる。


スターシアとの約束を破ってまで軍拡路線に発展してきた地球への違和感と、沖田艦長の願いが古代の背中を押したのはもちろん、今の地球を方向づけた側に立っていた真田さんまでが「行くべき」と考えている。

テレサのことは、ガミラスの地球駐在大使も知っており、地球とガミラスの命運に関わる事態と認識、古代たちに何かを期待しているようだ。

旧作で印象的だったエピソードも忘れてはいない。


古代と雪は旧作同様婚約しているし、


英雄の丘に集まる元ヤマトクルーとか、


アンドロメダに向かって「バカヤロー」とか・・・。

EDテーマは「ヤマトより愛をこめて」だ。
旧作「さらば〜」で使用された音源が流用されているので、若々しいジュリーの歌声に感激したファンも多かったそうだが、僕的にはイマイチ。TVサイズに編集されているのは仕方のないこととして、何よりこの曲は毎回聞くものではないような気がするのだ。・・・いや、第二章は違うEDに変わる可能性高いか。では尚の事、今使うべき楽曲ではないと思う。

ついでに言うとOPテーマは「宇宙戦艦ヤマト」の吹奏楽バージョンで歌詞がない。やっぱり「イスカンダルへ」がマズイのかなぁ・・・。

こんなところにしておこう。後はTV放映が決まったときに、もしくはどうしても書きたいことが思いついたときに。

前作「2199」のレビューはこちらから。

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