前から考えていたことがある。
悪魔の実の能力者は、超常の特殊能力と引き換えに、その呪いとして海に嫌われ一生カナヅチになる。海の中では能力を使うどころか、体から力が抜け満足に動くことすらできなくなることは、すでに常識として知られているところだ。
「海」は能力者にとって「絶対的な弱点」であるべきだ、と以前の僕は考えていて、
かつて、605話でロビンが海中で巨大樹でパワー技を使ったことや、
「力が抜ける〜」と言いながらもルフィが”ギア3rd”を硬化させ、ゴムゴムの象銃でクラーケンを倒したりした違和感を問うたことがあった。
ギア2ndの脚ポンプが腕のひと振りで済むようになったことや、ギア3rd後に二頭身化しなくなったのは、2年間の修業による身体能力の強化と、能力やそのシステムのブラッシュアップと考えられるが、「海」と能力者の関係はルフィたち能力者個人レベルの問題ではなく、訓練で克服できるとか、少しなら耐えられる、という風には考えたくなかったのだ。
実は今でも「本当なら海は絶対的な弱点であってほしい」と考えているんだが、残念ながら、数々の描写がそれを明確に否定している。
青キジは海を凍らせたし、赤犬は海水を煮えたぎらせた。バンダーデッケンが投げた斧やナイフは海中でも勢いを失うことはないし、ペロスペローは海底まで届く巨大な「キャンディー」で強固な足場を自在に伸張させていた。
能力者は海中では力が抜ける。だから満足に動けない=泳げない。そして海中で自発的に能力を使うこともできない。
ところが、重しをつけたままアーロンに水中に投げ込まれたルフィは、自力では不可能だが、他人が引っ張れば水中で首を伸ばすことができた。海の中でもゴム人間でなくなるわけではない。「能力の特性」は失われないのだ。
能力者は「海」に弱いが、だからといって、地上で能力を使って生成した「ナニカ」は、海の中に入れても「ナニカ」の特性を失わない。と考えていいだろう。
また、身体の半分が水に浸かると力が抜けるとのことなので、青キジは手のひらを水面に接触させても能力を使えたし、海そのものを凍らせることにも何の問題もないことになる。
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ちなみに、
モリアの「カゲカゲの実」については少し例外で、ルフィやモリアの生きた肉体に数体の「影」を追加できたことからも分かるように「影」を肉体に留め置くには精神力が必要だ。
だから1体につきひとつの「影」なら放っておいてもそこに留まってそのうち定着するが、もとより他人から抽出した「ニセモノの魂」とゾンビの「かりそめの肉体」の結びつきが弱い部分に、海水の塩分が反作用すると結合していられなくなる、とブルックは解説している。
ただ、これで納得してしまうと、能力者を塩漬けにすれば比較的簡単に弱体化できることになりかねないし、下手すれば海楼石の拘束具も不要になってくるので、モリアは例外と考えるべきかもしれない。
能力者は海中では力が抜ける。「カナヅチになる」は結果論だ。そして、能力そのものは海中だろうと影響を受けない。
どうやら、これが正解のようだ。
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さて、では上と少し関連する次の疑問。
今回ビッグ・マムが、「魂」を与えた超巨大な「高波」を使役して襲ってきた。
果たして「海」そのものに能力を直接作用させ、その上で自律させることができるものだろうか。これはちょっと微妙だ。青キジが海を凍らせたのとは意味が違う。
トットランド各地にいる、動いて喋る様々なものは、ママによって「人間の魂」を与えられた「ホーミーズ」。木や花や動物、建造物や調度品などに「魂」を入れると擬人化する。
ただ、一部例外があると僕は考えていて、その代表格が、ママが自分の魂で特別に作った「雷雲」ゼウスと「太陽」プロメテウス。
「雷雲」なんてものは、空気中の水分の集合体でしかなく「状態」であって「物質」ではない。「雷雲」というひとつの個体は存在しないのだ。
そして当然のことながら、人も、小さな帽子ですらも上に乗せることなどできない。
※ドフラミンゴが「雲」に糸をかけて宙を走っていたので、ワンピ世界の「雲」が固体の可能性は…いや、ねェよ!
また、言うまでもなくプロメテウスは「太陽」ではない。「太陽」が燃えるのは燃焼ではなく核融合。パワー不足で「火を食いたい」と言っているプロメテウスは、小型の「太陽」ですらないのだ。
※マザー・カルメルは炎に魂を与えている様だった
すなわちこの二者は、「雷雲」っぽい何か「太陽」っぽい何かに、それぞれ「魂」を与えたものということになる。
それが飴細工なのか、粘土細工なのか、はたまた違う別のものなのかは分からないが、同様に「高波」のような何かに「魂」を与えることはできるということだ。
この「高波」に見える物が、たとえば水壁と同じ大質量を持っていないなら、気体のような密度でしかないなら、恐れることはない。津波に飲まれて「もうダメだ」と思ったけど、何ともなかった…なんてこともあるかもな。