大衆の眼前で公然と振られた挙げ句、マゲを切られ逆上する浦島。
お菊は堂々としたもので、とくに怯えることも狼狽える様子もないように見えるのだが、そこに割って入ったルフィ。
ルフィとしても、お菊をかばうつもりは毛頭ない。浦島の一方的な言い分も、お菊の正当性もまったくどうでもいいらしく、ただ相撲を取りたかっただけのようだ。
ルフィにとって浦島はとくに「弱者を虐げる許せないヤツ」というわけでも「嫌いなヤツ」というわけでもなかったが、あくまで相手の土俵(相撲のルール)で完膚なきまで叩きのめす。ついでにこの騒ぎを見かねてこの町のボス(ホールデム)を引っ張り出すことができれば御の字だ。
│
まず、ホールデムはルフィの素性に気づいていない。部下は瓦版の(おそらく筆書きで拙い)似顔絵からゾロ十郎に気づいているのに、変装しているとは言え、全国手配の15億の賞金首ルフィに気づかない中ボス。
これは、カイドウが、ドフラミンゴとの取引をぶっ潰した憎っくき麦わらの一味がワノ国を目指していることを知っているにも関わらず、それを部下に徹底して警戒させていないということになるだろう。
また、ホールデムがまっ先に疑ったのが盗賊「酒天丸」とやら。日頃からホールデムたちに刃向かっているらしい。
どうやら、バットマンたちが探していた、農園で盗みを働いた者と関係がありそうだが、彼らは反将軍勢力なのか、それとも単なる義賊なのか…。
そもそもホールデムがこの町のボスかどうかがまだ未確定。
現在この町には「真打ち」が三人いるのだ。ルフィがボスの名を尋ねた下っ端が、たまたまホールデムの直属だっただけかもしれない。そいつのボスはホールデムなんだろう。この町のボスとは言っていない。
浦島が暴れている騒動に興味を示さなかった辺りから、なんだか僕には、ホールデムが「この町=自分の町」と考えていない気がする。
「スピード」とやらが出てこないことには、三人の「真打ち」の関係性も分からないよな。対等であるとは思えないし、ホーキンスが焦っているように見える理由も気になる。
そう… ホーキンスはなぜ焦っている?
│
「そいつは麦わらのルフィだ」と言えば、どれだけ手強い相手か、ザコにだってすぐ理解できるのに、回りくどい説明しかできないのは、部下にも、そしてホールデムにも、相手が「麦わらのルフィ」であることを悟られたくないからとしか、僕には考えられない。
それは取り逃がしたヘマを知られたくないから? それとも手柄を横取りされたくないから? …違うやろ…。
「麦わらのルフィ」という15億の手駒を切り札として隠しておきたいからじゃないのか。すなわちホーキンスは、カイドウに弓引く機会を虎視眈々と狙っている、と考えられる。やはりこれは味方になる布石と考えていいのではないだろうか。
│
あと、やはり気になるのはお菊だ。こいつは謎すぎる。
浦島の選民的差別発言を懲らしめて、ルフィさえも痺れさせたお菊が、
強いことがバレたゾロに、とぼけたことを咎められると口をつぐんでしまう。
それなりに剣術ができることも、博羅町の役人たちをよく思っていないことも、本当は隠しておくべきなのだが、ついうっかり感情的になって本性を出してしまうのだろうか。
さては「光月家」のご落胤だとか、「光月家」縁の忍びだとか、実は男(?)だとか、いろいろと可能性は考えられるのだが、身分を偽っているとか出自を隠しているなら、お鶴にすら剣士であることを知られているのは不自然。いくら刀を持っている理由を聞かれようとも、例えば「預かっている」とか言い訳はなんとでもできたはずだ。
お菊はいったい何を隠している? 何をしようと考えている?
│
ホールデムが言うには、「光月家」は20年前にワノ国を滅ぼそうとした「悪霊一族」だそうだ。
光月おでんは、ワノ国にとっては異端の開国派だった。おでんがワノ国のために何を考えどう行動したかは明らかになっていないが、長く鎖国をし外の文化を知らない国民にとっては、おでんが為そうとした改革(?)は、国を滅ぼす危険な思想に思えたとて不思議ではない。
では「悪霊一族」とは何か?「悪魔」ではなく「悪霊」とは少し違和感がある。
20年前におでんがした事、もしくはしようとした事が、人々の目には悪霊の仕業と思えるような摩訶不思議な出来事だったのではないか。ひょっとするとそのあたりに、8才のモモの助が、ロジャーの記憶を持っていたり、20年前に焼け落ちたと思われるおでん城を焼け出されたかのような回想があったことに繋がるように思えてならないのだ。