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ONEPIECE 937「おいはぎ橋の牛鬼丸」

ルフィの心を折るつもりなのか、それとも見せしめか、はたまた始末するつもりなのか、クイーンプレゼンツの大相撲地獄はやや生ぬるく、ルフィの快進撃が続いていた。


ルフィの実力をどの程度に見積もっているのかわからないが、単にルフィを苦しめるよりも、体力的・精神的に徐々にキツくなる過程を、じっくり眺めるのが楽しいらしい。(やっぱ変態だな…


そして、娯楽としてじっくり楽しむのに欠かせないのが大好物の「おしるこ」なのだそうな。この、サディスティック・カウチポテト野郎め。

だが、この「おしるこ」が、なんだか波乱の火種となりそう…。


というのは、おこぼれ町で「おしるこ」の味に惚れ込んだビッグ・マムこと「おリン」が、兎丼に行けば「おしるこ」が食えると信じてこちらへ向かっているからだ。

おこぼれ町ではまるで食べ足りなくても大人しかったリンリンだが、いつ記憶が戻るか、また、いつ食い患いを起こすかわかったものではなく、「おしるこ」が何かのトリガーになることだけは容易に想像できる。

その後の展開は無限のパターンが予想できるが、オダッチだけに安易な展開にはなるまい。
たとえば…
1.
リンリンが「おしるこ」を食べるのが止まらなくなり、止めに入ったクイーンが食われる。
2.
リンリンの到着と同時にクイーンが「おしるこ」を食い尽くして、リンリンは食べられず。ぬか喜びが渇望を加速させ、食い患い発動。
3.
大相撲地獄がいいかげんキツくなってきたルフィが、クイーンの「おしるこ」を奪い取る。そこにリンリンも合流して、ふたりでわんこそば様の大食いバトル。
挙げ句、あんたなかなかイケる口だね、と意気投合(?)
などなど、とにかくクイーンが酷い目に遭いそうなことだけはわかるな。

ところで、そのクイーン。強さはおろか、まだその能力もわかっていないものの、古代種の動物系ゾォン能力者であることはほぼ疑いがない。ジャックもビビる存在なのに、部下の軽口を許すこの男、いったいどれほど強いのだろうか。

カイドウの懐刀である三人には「災害」の通り名がつけられ、ジャックは「旱害」キングは「火災」、そしてこのクイーンは「疫災」と呼ばれている。
それぞれ悪魔の実の能力者なので、災害の種類は特殊能力によるものではなく、その行動や主義から受けるイメージと思われる。
たとえばジャックの場合は「ジャックの通った土地は、まるで旱魃でも来たかの様に朽ち果て滅ぶ」と言われ、それはおそらく、老人や赤子にまでまったく容赦なく殺し、奪う様を喩えたものだろう。
また、キングはというと、何をもって「火災」と称されるのかはまだ明らかにされていないものの、背中に火焔を背負っているため、それを使って過去に行った趣味的で残虐な拷問や戦い方が予想できる。

一転、クイーンの「疫災」とは、伝染病が蔓延する災厄を指す言葉だが、それが悪魔の実の能力に由来するのでないとしたら、人為的に伝染病をばらまき、人びとが苦しむのを見て楽しむ趣向の人物ということになる。そうなると化学兵器を研究開発する知識と技術をもった化学者である可能性が出てくるのだが、その風体や初登場時にビスや歯車を弄っていた様子からはそれが想像できない。

ちなみに、つい先日アニメ版のジョジョ第五部「黄金の風」で、フーゴが離脱したばかりだが、荒木先生はフーゴを離脱させた理由のひとつとして「殺人ウイルス能力(しかも制御不能)が扱いづらかった」としていたらしい。

二つ名の印象では「火災」よりも恐ろしくタチが悪い「疫災」だが、はたしてクイーンはどんな個性を隠しているのか。
「過去に伝染病をばらまいて国一つ滅ぼしたことがある」…とか、だけでないならいいなぁ。

一方、ルフィはというと…、この地獄の責め苦にあっても、自己を研鑽中。


カタクリと戦うことで飛躍的に成長した「見聞色」に続き、「武装色」を強化できれば、持って生まれた「覇王色」と併せて、ルフィの死角はさらに少なくなることになる。この地味な戦いも決して馬鹿にできないのである。

そのころゾロは、伝説の剣豪「リューマ」とその愛刀「秋水」について熱弁をふるう、武蔵坊弁慶のような風体の僧兵:牛鬼丸の話を、とくに焦りもなく余裕で聞いていた。


「〜〜丸」といえば、武家が子息に授ける幼名に多く、丸いもの=宝珠=価値があり尊いものとして名付けた説や、丸とは「おまる」のことで穢れを嫌う鬼(凶事)から子供を守る意味がある説など、由来は様々だが、少なくとも仏門に入って名乗る名前ではないと僕は思う。

かの武蔵坊弁慶は、のちの源義経=牛若丸に敗北するまでは、力自慢の単なる破戒僧だったそうで、僧といってもまじめに修行したこともないはみ出し者で、武蔵坊弁慶という名前も自分でつけたというDQNぶりである。
「牛鬼丸」という名前からは、弁慶の悲運の主君:義経のイメージを併せ持つ設定が予想されるが、こんな端キャラにそこまで深いキャラメイクをしても、作中で活かす機会はなさそうだし、なんでこんな名前にしたかなぁ…と、現段階では思わずにいられない。


まぁ、正々堂々の真反対の戦法は、義経に由来している気がしないでもない…かな。

そこに乱入した


オロチを嘲笑したトコを抱いて逃げる女と


それを追う「人斬り鎌ぞう」その正体は、無差別な辻斬りを装ったオロチの刺客。要するに幕府御用達の暗殺者だ。
御庭番衆が政治的な暗躍集団だとすれば、市井に紛れ込んだ反逆者を個別に始末する実行部隊というところか。


笑っているところ以外、奉行所が出した人相書きと随分印象が違うのは、正体を掴ませないための工作なのだろうな。
または、生存が疑われている光月家恩顧の侍:傳ジローが、まかり間違って引っ立てられる可能性を見越して、ハナから捕まえるつもりのない鎌ぞうの人相書きを意図的に傳ジローに似せて描いたということも考えられるかもしれない。

ともあれ、


鎌ぞうはゾロの煉獄鬼斬りに敗北
ここ、今は持っていない「秋水」以外の二本の刀はもちろん、口に咥えた鎌までもが「黒刀化」していることに注目。


先の諍いで牛鬼丸が言った


秋水は「黒刀」。リューマの歴戦で「成った」刀。

その「成った」という言葉の真意を聞く前に乱入者があり続きは聞けなかったのだが、どうやら「黒刀」とは、達者な武芸者が振るえば振るうほどその地力を増し、その果てしない繰り返しのうちに、しだいに黒光りして味わいが出てくるらしい(意訳)。丁寧に使い込んだ中華鍋みたいだな。

おそらく、武装色の覇気を纏わせることで刀の組成に何らかの影響があり、それを尋常でない回数繰り返すことで刀が常時「黒刀」のままになった姿こそ、「成った黒刀」なのだろう。

自分の武力と胆力に拠らず、予め完成された他人の「黒刀」を奪い、一端の武芸者を名乗ることがおこがましい、と、牛鬼丸は憤っているようだ。


なるほど、ゾロには思うところがあるようで、ミホークは「覇気をまとえていれば、かつて折られた刀も折れることはなかった。すべての刀剣は黒刀に成り得る」と言った。
「黒刀」といえば、「秋水」とミホークの「夜」くらいしか目にしたことはなかったかもしれないが、その刀を打った鍛冶や研師が高名とは聞いたことがない。「黒刀」の強さが、武装色の覇気を纏わせた普通の刀と同じ種類のものであるなら、刀鍛冶や研師が覇気を込めて鍛え上げたと考えるよりも、武装色の覇気をより実践的に研鑽している剣士こそが、刀剣に覇気を注ぐことができるはず、というか自ずとそうなり、その結果が「黒刀」ではないのか。そうなる過程が、おそらく尋常ならざる数の修羅場をくぐること…なのだろうな。

ジョジョ三部に出てきたアヌビス神のように、「武人の残留思念が覇気というかたちで憑依したままになった刀」とも考えられないこともないか…。いやいや、そんな刀、何本も出てきてたまるか…

ところで、トコを抱いて逃げてきたこの女。


いったい誰?

服装と髪飾り、トコのことを「おトコちゃん」と呼ばずに「おトコ」と呼ぶあたりから、遊女のひとりと思われる。
小紫が変装している可能性も考えたが、装飾物に小紫との共通点はなく、同じ変装するならわざわざ別の遊女に化ける意味もわからないので、この女は小紫ではないだろう。しかし、トコをかばい将軍オロチを敵視している様子からは、レジスタンスの思想が見て取れ、それは取りも直さず背後にいる組織を伺わせる。

小紫が、狂四郎親分が、ひいては遊郭が総ぐるみでオロチへの反逆を企てている可能性を示唆しているのだ。

鎌ぞうがオロチの手の者であることは話を聞いていればわかる。将軍の指示で追われる女と娘を、容赦ない横槍(槍ではなく薙刀だが)を苦ともせず、救ってみせた目の前の豪胆な剣士。先は「気概なき小僧」と下した牛鬼丸だが、


今度はどのような眼差しでゾロを見つめるのだろうか。

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