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ONEPIECE 942「”白舞大名”霜月康イエ」

丑三つ小僧として捕まったトの康。
その正体は、白舞の元大名:霜月康イエだった。ほぅ霜月…シモツキ…、あぁ…なるほどね。
余談だが:
「シモツキ」とは、ゾロの故郷の村の名前。やはりゾロの師匠コウシロウのルーツは、ワノ国にあると考えて間違いなさそうだ。

しかし、康イエは丑三つ小僧ではなかった。
丑三つ小僧の名を騙ったのは、オロチの手勢が無視できないようにするためと、国民すべての興味を引くために違いない。
そして、その昔オロチに激しく抵抗した自分の生存が知れれば、きっと公開処刑しようとするオロチの単純な性格を逆手にとり、自分の言葉をワノ国のあまねくすべての民が聴かざるをえない状況を、まんまと作り出した。

皆に詫びたいことがふたつ、あとオロチのバカに言いたき事がひとつ。

まずは注目を集めるために「丑三つ小僧」の名を騙ったことを謝罪。
そしてこっちがメインになる次なる謝罪。討ち入りの判じ絵は康イエのイタズラだったのだが、想像以上にオロチが臆病だったために大騒動になってしまったと、これは虚偽の証言。


足首の逆さ三日月もただの流行りのファッションで、すなわち、投獄された多数の反乱者予備軍たちは、康イエのイタズラ心とオロチの臆病風の単なる被害者にすぎないと、そのことを詫びたのだ。

だが、いくらイタズラだったとはいえ、判じ絵に込められたメッセージは明らかに光月家を支持するもので、それに反応した「容疑者」たちへの疑念が晴れるわけではない。
僕がオロチの立場であったなら、とりあえず判じ絵が示していた日時までは拘束したままにするけど、さてオロチはどうするかな。
日頃から(とりわけ最近)光月家復活の伝説を必要以上に警戒するオロチにいささか辟易ぎみの部下たちへの信憑性は十分だし、あとひと押し、狂死郎あたりが諌めれば、部下たちはさほどの疑いもなく容疑者たちを解放しそうだ。


オロチは、ワノ国が自給自足できていた肥沃な自然も、活気ある民の暮らしも、己の汚れた欲望で汚染したただの害虫。


器量も才覚も何一つ叶わなかった光月おでんというすでに亡き存在の呪縛に、今なお怯えて暮らすオロチを腐し、怒り心頭のオロチに自ら銃爪を引かせた。


康イエは、すべて計算ずくだった。

ただ出頭して捕まるのではなく「丑三つ小僧」を名乗ることで、大勢の国民が興味を持つこと。
「トの康」でも「丑三つ小僧」でもなく、その素性を明かせば、オロチが必ず公開処刑にしようとすること。
そこで、光月家の失脚からこれまでのオロチの行いに正義がないことを公言し、さらに判じ絵のクーデターは自分が作った狂言と偽りながら、オロチの愚かさゆえに大勢があらぬ疑いをかけられた。と、オロチの部下でさえ納得してしまう筋立てを考えた。


と同時に、いつどうやったのかは不明だが、捕まえられた同士たちに新たな集合地を提示し、討ち入りそのものを密かに仕切り直した。

そして最後に、真っ向からオロチを煽り、激昂したオロチの手によって最期を迎えた。


これらの出来事は、頓挫した錦えもんたちの計画を再起動しただけではなく、そこに参加する意志を持つ同士たちの心を一つにし、またオロチの治世に不満を持つ民の心を大きく揺さぶったはずだ。

我々は一人の英雄を失った。しかし、これは敗北を意味するのか?否!始まりなのだ!
国民よ立て!悲しみを怒りに変えて!立てよ国民!…以下略いや、すまn


正確には、康イエの死亡はまだ確認できていない。
ワンピでは回想シーン以外ではめったなことで人が死なないが、物語の大きな基点を動かすキャラならば、そういうこともあるだろう。
少なくとも死刑は執行され、ゾロや錦えもんたち見ていた人々にとって、康イエは「殺された」のだ。


ところが…


トコをはじめ、康イエの死を目の当たりにした聴衆が一斉に笑いだした。



これは皆、可笑しいのではなく、悲しんでいるのだそうだ。
日和によると、えびす町の人々は「笑顔」以外のすべての表情を奪われ、苦しくとも悲しくとも笑うことしかできない。そしてそれは、



SMILEのせいだという・・・


「SMILE」とは、ドフラミンゴが作りカイドウに流していた人造悪魔の実。これまでで知るところでは、動物系のものしか登場していない。
というか、ここでは詳しく書かないが、動物系しか存在しない、と僕は考えている。

確かに「SMILE」と天然の動物系ゾォン悪魔の実の特性は似て異なる。しかし、特定の動物の能力を身に宿すという点は共通だ。普通に果実を食べたとて、不特定多数の人物から表情を奪うことなどできるとは思えない。

この意味するところは、おそらくSMILEの副作用である。
SMILEには、実を食べたにもかかわらず特殊能力を得るに至らなかった者から「笑顔」以外の表情を奪う、おそろしいリスクがあるのではないだろうか。
また、ドフラミンゴが陥落する以前より、貴重品のSMILEの使い方は研究され尽くしているだろう。

たとえば、SMILEの能力は、悪魔の実と同じように、最初に食べたひとりにしか発現しないが、副作用は食べ残した実のかけらからでも発生するとしたら、その副作用だけを被支配階層の民に食べさせれば、それはもう実に合理的に非道な人体実験ができるだろう。

笑うしかねェ…「SMILE」とはエゲツないほど皮肉な名前だ。



えびす町にほど近い白舞は、ワノ国唯一正規の港を有していた。
それがおそらく刃武港のことだと思うが、なんといっても「正規の港」なんだから、鎖国中とはいえ、当時は出島でもあったんじゃないかな。
海外から持ち込まれるご禁制の品を改めるのは、当然その水際防衛隊だった康イエ率いる白舞の軍。怪しい果実が流通したとすればここからだ。


冒頭回想シーンでは、精悍な顔つきの康イエと、シルエットのおでんが見られるが、この頃おでんは父将軍スキヤキに半ば勘当され城を追い出された身分だった。康イエにある種の資質を認められているようなので、才能は秘めていてもまだ磨かれていない時代、おそらくアシュラ童子を従えて久里を平定し、将軍スキヤキから久里大名を任ぜられるより以前だろう。
この頃は、まだ白舞の海上防衛が正常に機能していた。

ひょっとすると、23年前の海賊騒ぎというのが、「SMILE」の初上陸で、「SMILE」を使ったテロだったのかもしれないなぁ・・・

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