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ONEPIECE 943「SMILE」

「トの康」こと康イエが、オロチの手によって殺された。


厳密には死の断定はまだできないし、死んだと思っていたキャラが実は生きていた、なんてことはざらにあるが、そんなことは今問題ではない。

自らの死と引き換えに決死の言葉を残した康イエの意思は、同士はもちろん、多くの民の心に届いただろう。
錦えもんたちの討ち入りの計画は、どこからかオロチの手勢に洩れていた。だから、康イエはその計画を「イタズラ」だったと偽り、更には集合場所を刷新した新しい計画として、参戦の意思あるすべての者に計画の続行を示唆した。オロチの不忠を、これまでの愚かな国勢を厳しく非難して民草が潜在的に持つであろう問題意識を啓蒙した。

そこには、オロチの謀略に敗北した過去の自分の責任、現状への懺悔と贖罪が込められ、モモの助たちが帰還し、事実それをオロチが恐れている「今」という、この状況を打壊する絶好の機会を決して逃してはいけないという絶対的な意志が汲み取れる。


康イエの行動の真意を悟った赤鞘の侍たちは苦悶の表情。

この場でオロチを斬り殺してしまいたいが、敵はオロチひとりではなく、むしろオロチなど真の脅威ではない。康イエが命を賭して灯した新たな討ち入りの火をここで消してしまっては康イエの死がムダになる。赤鞘の侍たちは、今のワノ国では最悪級の国家反逆者なので、姿を晒すことすらままならず、皆ただひたすら耐えているのだ。さすがのアシュラ童子も、この状況には複雑な表情だ。

ところで余談だが:


頭山に火を放ったホールデムをブッ潰すために九里の「博羅町」へ向かっていたはずのアシュラ童子と、それを追っていた錦えもんとイヌアラシは、いつの間に花の都の「羅刹町」へ目的地を変更したんだろうか。
そりゃもちろん、ホールデムからケジメを取るよりも、康イエの処刑の方が彼らにとって重大な事件だとは思うが、いつそれに気づいたというのか。


まぁ、頭山から博羅町はそんなに遠くないようなので、すでに速攻でホールデムをブッ飛ばした後なのかもしれないし、もしくは博羅町に到着してすぐ花の都の騒動を知り、ホールデムを無視して羅刹町に向かったということかもしれない。

だが、それにしても(ワノ国がどれほどの広さなのかは知らないが)、チョッパーたちが「九里」から「兎丼」へ要している時間を考えても、康イエの公開処刑の中継が開始されてから羅刹町へ向かったにしては、いくら馬や牛を飛ばしたとて、どう考えても到着が早すぎる。
いや、それを言うなら「鈴後」の北の墓場からトコの子供の足でいくら駆け通したとて、数十分や数時間で羅刹町に到着するとは思えないのだが・・・。

※アシュラたちが今いるのは博羅町、勘違いしてました。ご指摘ありがとうございます。

〜閑話休題〜


冒頭の回想では、主君おでんのために、領地を隔てて「白舞」から大金を盗もうとした赤鞘九人男が。河松と傳ジローは相変わらずシルエットだが、皆若い・・・というか幼いな。
アシュラ童子が手下になっているので、九里をまとめ上げ、おでんが父将軍スキヤキから九里の大名として認められたばかりの頃と考えると、30年ほど前(錦えもんたち未来へとんだ面々にとっては10年ほど前)だろうか。
お菊が(いろいろと)非常に気になるな・・・。


その昔から、康イエはおでんの才覚を認めていた。いや、もはや信奉していたと言ってもいいレベルだ。
海外に興味を持つことすら憚られた当時のワノ国で、常識や人目に縛られずに開国に目を向けた、まさに坂本龍馬か島津斉彬かというおでんの奇行や破天荒ぶりを、将来ワノ国の将軍として新しい世を導く巨大な器と、康イエは疑うことなく信じていたのだ。

そうしてまだ精神的に未熟だった赤鞘の侍たちの面倒をも見てくれた、恩人:康イエの死。


そして、それを爆笑で見守るえびす町の民の異様な姿が、歪な今のワノ国を象徴していた。

その主犯「SMILE」とは・・・
「SMILE」は、オロチとカイドウが数年前にワノ国に持ち込んだ動物系の人造悪魔の実。


だが、能力が発現する確率はわずかに10%程度で、能力を手に入れられなかった者は不完全な人造悪魔の実がもたらす副作用のみをその身に受けることになるという。


その副作用とは、天然の悪魔の実と同じく泳げなくなることに加え、「悲しみ」や「怒り」の表情を失い、ただ笑うしかできなくなるのだった。


これまでカイドウの部下たちは、SMILEで能力を与えられた「ギフターズ」と、能力を持たない「プレジャーズ」に分けられていると思っていたが、もう一つ区分があり、まだSMILEを口にしていないただの兵隊「ウェイターズ」が存在した。「ギフターズ」はSMILEを食してめでたく能力を得た者、「喜び組」の名に違和感を覚えた「プレジャーズ」は、SMILEを口にしながら能力を得られなかった者たちだという。


不運な者を嘲るように、奴らはその人工の果実に「SMILE」と名付けた。実にエゲツない。
だが、ここまではあくまで百獣海賊団内部の悲喜こもごも。本当の悲劇はここからである。


オロチは一口かじっただけの失敗作のSMILEに目をつけ、むろん特殊な動物系能力を発現することはできないが、副作用だけを伝搬させる効力を用い、自分の城下町で貧しさに人々が死んでいく辛気臭さを、偽りの笑顔と明るさで覆い尽くしたのだった。
おこぼれ町の人々もそのうちその副作用に気付いたが、空腹に耐えきれず、結果「えびす町」は誕生した。


トの康たちはその状況をポジティブに受け入れていたが、それはそうするしかなかったからだ。


きっかけは、愚かなバカ将軍の思いつきだった。天国と見紛う夢の国を、自らの手腕で創り上げることなど当然出来ず、飢えや病気に苦しむばかりの民を見ることが、自らの無能を見せつけられている様で耐えられなかったのかもしれない。
自らの地位と理想の国家を維持するため、自分マンセーな少数の幹部のみを優遇し、大多数の国民を飢えさせながらも海外に虚勢を振りまく半島国家や、緑化政策にグリーンのペンキを使うかの大国を見ているようだ。


そしてとうとうオロチが、倒れた康イエの骸にしがみつくトコを発見してしまった。
怒りが収まらないオロチはトコに向かって銃を撃ったが・・・


割って入った男たちがいた。
後ろにはドレークとホーキンスが様子を見ているが、さて!どうなる!?

なんと、驚いたことに「SMILE」の特性が、前回僕が予想したものでほぼ正解だった。
「プレジャーズ」がハズレを引いた者たちであることや、「ウェイターズ」の存在は、さすがに分からなかったが、天然と違い当たり外れがあること、感情を失うのは副作用であること、食べかすからでも副作用は伝搬することは、予想したとおりだった。いやぁ驚いたなぁ。

さて、しかしここで気になることがある。

確かにこれまでに登場していた「プレジャーズ」と思しき一本角たちは、笑っているやつが多かった気がするが、いわゆる「ヒャッハー系」の悪役なのでまったく不自然に感じなかった。


しかし、ルフィの攻撃を食らったりして普通に苦痛や腹立ちを表してたがなぁ・・・。

次にくだんの副作用の話。
確率約10%で当たりを引いた「ギフターズ」は、感情を失っていないようだ。


だが、しのぶが言うように、副作用が不完全な薬品(SAD)に由来するのであれば、同じ薬品を使用したSMILEには「能力を得られる確率」がいかに運命的であろうと、全てに同じ副作用があって当然。
「当たり」には副作用がなく、「ハズレ」のみに副作用があるとは考えにくいのだ。
材料の精度やSADのプラントによって個体差ができるのであれば、製造工程を厳しくチェックすることで当たり外れの発生を少なくすることも出来たはずだ。

となると、副作用はすべてのSMILEが持っているが、例えば、当たりを食せば、能力発現の肉体変化により副作用が中和される…と考えれば、辻褄が合う。


オロチは「ハズレの実の使いみちに着目した」とあるので、副作用はハズレのみが持つ特性のように思えなくもないが、これは「ハズレたSMILEをただ廃棄するのがもったいない」ので使いみちを考えた、という意味だと捉えればよいだろう。

なんとまぁ、器の小さい、みみっちい、ケツの穴の小さな男か・・・
ホントにこいつは大した脅威ではなさそうなのに・・・、オロチを殺すわけにはいかない理由でもあるのかなぁ

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