20年前に始末したと思っていた、忌まわしい光月家恩顧の有力大名:康イエを今度こそ仕留めたと思ったら、その骸にすがりついてきたのは、先の宴を台無しにした禿:トコだった。
康イエの娘なら道理で生意気…って、いやいや違う。
オロチひとりが盛り上がる宴の異常な緊張感の中、トコが場の空気を読まずに吹き出したのは、おこぼれ町で口にした、他ならぬ「ハズレSMILE」のせい。
すなわち、悪政と飢えの恐怖に苦しむ民から目を反らすために、笑うことしかできない毒をばらまいたオロチの愚策が要因だ。
オロチは単に無垢な子供に笑われた「裸の王さま」などではなく、自ら笑わせておいて「笑われた!」と憤っている実にたちの悪い「ヤカラ」に過ぎない。
とにかく目障りな者は消す。オロチの凶弾がトコを襲ったが、
闘志も顕にトコを庇い、飛び出した男がふたり。
見るに見かねて、というか、あまりの怒りに身体が勝手に動いたという感じか。今回ここから。
ゾロもサンジも康イエの本来の人となりを知らないが、広く周囲の人々に「仏」と慕われるトの康としての代え難い存在感に加え、ゾロは日和から光月家滅亡の瞬間とその後の話を、サンジは錦えもんからおでんの魅力的な人物像と謀殺された無念の経緯を聞いている。
そこに加えて、人を人たらしめる「感情」を奪う、オロチによる利己的で傲慢で愚か極まりないSMILEの使い方に、堪忍袋の緒が切れたのだろう。
サンジが言う通り、ここで騒動を大きくすれば、トの康の死が無駄になりかねない。
しかし、カイドウはともかくオロチには、麦わらの一味が光月家に加勢している事実がどれ程伝わっているかは、限りなく怪しい。
実際、奉行所を逃走したゾロ十郎、蕎麦屋のサン五郎、銃が効かない謎の巨漢大工フラの助としか認識されていないのが現状だ。
今後、人相書きなどが出回れば活動に制限がでるが、逆に錦えもんたちから目を逸らさせる効果があるかもしれない。
なにせオロチは愚かだから。
しかしながら、反逆者の始末を部下に言いつけ、オロチは無事逃走してしまった。
邪魔をしたのは
居眠り狂死郎。この男、強い。
僕は、こいつは絶対「反オロチ勢力」だと思っているので、なにか、今オロチを斬らせるわけにはいかない事情があるのだと思う。
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さて、康イエのおかげで、敵方に筒抜けだった討ち入りの計画は設定し直されたし、捕らえられた者たちも、じき解放されるだろう。
面が割れたので身を隠さなければならないが、狂死郎親分は「反オロチ」(たぶん)なので、ゾロのこともうまく見逃してくれるだろう。
ホーキンスも然りなのだが、問題はドレークだ。
心からカイドウに身を寄せているわけではないと思うが、ドレークってなんか不器用で変に生真面目そうなので、話の筋や事の善悪関係なく「任務は任務」と割りきりそうな気がしないでもない。
ただ、ドレークが麦わらの一味をよく知らない可能性もあるし、サンジのことも「蕎麦屋のサン五郎」としか認識していないような気がするので、逃げようはあるかな。ステルススーツもあるし、ホーキンスもさりげなくフォローしてくれそうだしな。
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その頃、兎丼の囚人採掘所には、ふた組の来訪者があった。
ひと組目は新入りの罪人として連れてこられた「人斬り鎌ぞう」と脱走したはずのユースタス・キッド。
鎌ぞうは、オロチに命じられた任務に失敗したためにここへ送られたそうだが、キッドは無防備にも連行中の鎌ぞうに近寄り、ほぼ無抵抗で一緒に連れてこられたという。
脱走したキッドは、まずは仲間を探すはず、とは僕も予想していたんだが…
「人斬り鎌ぞう」が仲間…、それもキッドの無二の相棒:キラーのなれの果てだったのである。
仲間と合流し救い出すのは当然だが、
自分の笑い方が嫌いで笑うことを自重し、いつしかマスクで顔すら隠すようになったキラーが、出すはずもない笑い声を高らかに発している異常事態を、キッドは見過ごせなかった。
キッドと鎌ぞう(キラー)は水攻めの拷問を受け、クイーンはその拷問をルフィとヒョウ爺が生きている限り続ける、と言い出した。
つまり、ルフィたちとキッドたち、全員が生き残る術はないということだ。
だったらクイーンをぶっ倒し、このくだらないゲスなゲームをすぐにでも終わらせると息巻くルフィだったが、
クイーンはルフィの攻撃を軽くいなした。その上で、ルフィたちが最後まで勝ち上がろうが、命を捨ててキッドたちを救おうが、残った者も新たな趣向で殺されることを示唆した。
真っ向から反抗するルフィだったが、ヒョウ爺のレクチャーによる本来の「武装色の覇気」はまだマスターできておらず、今のルフィの攻撃はクイーンに通じない。八方塞がりに思えたその時、
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さて、キッドの相棒だったキラーが、変わり果てた姿でオロチの走狗となって現れたわけだが、たとえハズレSMILEを食わされ感情を奪われたとて、洗脳を受けたわけではないのだから、本来であれば、キラーの自我はオロチの言いなりになどなるはずはない。
それがおとなしく命令に従っていた理由は、仲間が人質に取られている以外に考えられない。
自分の笑い方を、顔を隠すほどに嫌っていたキラーなので、笑うしかできなくなったことで精神が崩壊してしまった可能性もなくはないと思うが、
流す涙は、その境遇を呪い、苦しみ、悲しんでいる事を語っている。
ここで素朴な疑問なのだが、
「SMILE」の副作用は、泳げなくなること以外に、「悲しみ」や「怒り」の表情を失い、ただ笑う事しかできなる…、とのこと。
だが、たとえ「悲しみ」や「怒り」を表現できなくなったとしても、無表情でいられないのか?というのが僕の疑問だ。
おそらくそうではないのだ。
悲しいときも怒っているときも、苦しいときも、ただそれを表現できないだけではなく、笑ってしまうのだろう。
辛い日常を笑って過ごせるのなら、それをポジティブに捉えることはできる。トの康たちえびす町の住民はそうして生きてきた。しかし怒りや悲しみ・苦しみが湧き出して止まらないときに、笑いしか出てこない、それも乾いた笑いではなく、怒りが強ければ強いほど、苦しければ苦しいほど、大爆笑がこみ上げて止まらなければ、それは辛い・・・これほど残酷なことはない。
でもね・・・
今回キラーという我々が知っているキャラが被害にあったことは、キッドがルフィと共闘するフラグが立ったと同時に、えびす町をはじめ、SMILEの副作用に苦しむ人々を、最終的に「笑顔の呪縛」から解放することができる布石ではないかと、僕は思うんだ。
・・・方法はわからないけどな。
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余談だが…:
あと…、2年前と新世界編とで、あごヒゲと身体の傷や火傷はともかくとして、体格が一回り大きくなってることと、ファッションセンスが別人のように変わってしまったことへの説明はないのか…。
以前、キラーの中身が別人に入れ替わってたりしたら面白い、とか書いたことがある気がするんだが、そんなアタル兄さんみたいなことはないか・・・。