ルフィと赤鞘の侍たちの活躍によって解放された兎丼の囚人たち。
ルフィの決して曲がらない強い信念と、その圧倒的な強さに、これから進む道の道標を見出し、本来持つべき心を取り戻した侍たちだったが・・・
ルフィが「海賊」と知るや否や不信感を露わにした。
彼らにとって「海賊」とは、それほど忌むべき存在なのか。
・・・当然だ。
外界と関係を断ち、鎖国を続けてきたワノ国の民のほとんどは、海を自由に行き来する「海賊」を知らなかった。
そこに、果たして誰かに唆されたのか、それともオロチが自ら招き入れたのか、ある日やって来た海賊カイドウに、それまでの国体も文化もめちゃくちゃにされ、蹂躙され続けること20年。
彼らにとって「海賊」=カイドウ=「悪」。海賊というだけで信用できないのは無理もない。
だが待ってほしい。
彼らみんなが愛してやまなかった九里の大名:光月おでん様は、早くから海外に目を向けた開国派で、海賊ロジャーとともに世界の海を制覇した男ではなかったか。
おでん様が海外で何をしてきたかは、広く一般には知らされていないのかもしれないが、九里以外の侍にも今なお絶大な支持を得ているとなると、おでん様が開国論者だったことが知れ渡っていないはずはないし、その思想に賛同者も居ただろう。
ロジャーが世界最悪の海賊として処刑されたことなど当然知るはずもないし、それを根拠にロジャーを悪と考える者はここには居ないし、もとより世界政府のルールに縛られるワノ国でもない。
おでん様が海賊とともに海に出た、という現実さえ知っていれば、彼らにとってルフィは、海賊だからと言ってカイドウと同列に危険視するのではなく、今こそロジャーと並べて希望の星とするのが自然じゃないだろうか。
彼らにとって、カイドウがどれほど「脅威」でどれほどの絶望を与えられたのかは、軽々に想像できるものではない。負け犬根性は筋金入りなので慎重になるのも分かる。しかしだからこそ、赤鞘の侍が満を持して連れてきた助っ人ルフィに希望が持てるんじゃないのか。
あと一歩なにかが足りない。
足りないのは・・・ヒョウ爺曰く「夢」
巨悪に復讐し、奪われた国・人・そして誇りを取り戻すことは、かつて試みて果たせなかったこと。そればかりかその気概も失うほどに心折られ、今や底辺以下の奴隷生活に安定を求めるまでになっていた男たちが、それをふたたび今度こそ成し遂げるためには、外から来た男を頼りにするだけではモチベーションを保てないのは道理。
戦いを勝ち抜いて後、ふたたび平穏な暮らしを築ける明確なビジョン。喩えるなら、極楽浄土に逝けることが保証されているから一向宗の民兵は強かった。どれだけ傷を負おうとも生命の絞りカスになろうとも、後のワノ国が元通り平和になると信じられる保証が彼らには必要なのだ。
その先のワノ国を牽引する希望のカリスマ、それこそが・・・
父おでんの影を通して、皆から寄せられる絶大な期待とその重圧を自覚し、今また少し成長したモモの助を錦の御旗に、反乱軍の結束はここに極まった。
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ところで、
河松が単独行動をとるようだが、行きたい場所とはどこだろうか。
13年前にはぐれた(?)日和のことをまず心配するのが普通だと思うが、雷ぞうたちに日和の安否を尋ねた描写はないし、それならば行き先をぼかす意味もない。
やはり日和のことは、13年前に信頼できる者に託したと考えていいだろう。おそらくはそれが狂死郎であり、その正体は傅ジローである可能性が高い。狂死郎に会いに行くにしても、それが傅ジローなのであれば雷ぞうに秘密にする理由はないので、河松の行き先はまた別にある。
相撲を取りたくてしょうがない、という可能性もあるがここは・・・
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アシュラ童子の想い
もともと光月家の家臣ではなく、おでんの強さと漢ぶりに惚れて従っていたアシュラでさえ、おでん亡き後のよすがとなるべき世継ぎ:モモの助の不在と、反オロチの叛旗を最前線で翻すはずの筆頭家臣がいない状態で、命の危険や飢えと渇きに常に晒されながら20年を耐え忍べと叫び続けるしかなかった。
しかし20年経った今、条件は揃いつつある。ひとときは世を儚んだアシュラ童子も、ふたたび戦列に加わった。
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余談だが:
モモの助がゾロに教わったと言っていた勇気が出るおまじない「スナッチ」は
名前を捨てろ、知恵を捨てろ、頭空っぽの方が夢詰め込める〜じゃなくて、自分が何者であるか、すなわち戻る場所や家族を捨て、質めんどくさい理屈やたいそうな御託も無視して、守るものの無い捨て身で挑めば怖いものはない。…という意味だったらしい。
ゾロが知っていたのはコウシロウから聞いたのだろうな。コウシロウの着物には白舞の兵と同じ紋章が刻まれていたので、ルーツはワノ国に間違いない。
幼い頃にゾロがコウシロウが話しているのを聞いたのだろう。コウシロウが「外国の風習」とかなんとか言っていたので、その言葉通りに「海外のまじない」とザックリ覚えたのだろう。勇気が出るまじないなど、自分には不要と思っていただろうしな。
菊が「モモの助が使うに相応しくない」と言ったのは、命を捨てる覚悟の宣言が軽々しく発する言葉ではないことと、「名」を捨てていい立場の人間ではないことを意味していたのだな。
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アシュラの言葉から察するに、この復讐の機会を20年後に設定したきっかけはおでん様。
カイドウを倒すために、おでん様がモモの助たちを20年後に送り込むようにトキに指示したか、おでん様の何らかの言葉を頼りにトキの判断で20年後の世界に賭けたのか。
いずれにせよ、おでん様が20年後の世界に「何か」を予感していたことは間違いない。
トキの能力が20年単位でしか時を跳躍できないという可能性もあるが、ジャスト20年後の世界に、カイドウを倒す存在を予見したか、それとも海軍の編成が大きく改変され、七武海や四皇のパワーバランスも大きく変化した「時代のうねり」に賭けたのか。
答えは回想で語られるか、それとも全てが終わったあとに自ずと解ることになるのか・・・。
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その頃ゾロは、日和を護り、御庭番衆の追手を次々と倒しながら、秋水を奪った牛鬼丸が出没するという「おいはぎ橋」を目指していた。
次の決戦に際し、手に馴染んだ刀がなければ勝ち抜けないことを察していると同時に、黒刀にまつわる話を聞きたいと思っているはず。
単に力ずくで奪い返すのではなく、黒刀を所持するに相応しい実力を見せつけて、取り戻すことになりそう。
ルフィがもってた「二代鬼徹」の行方も気になるけど。
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そしてキッドとキラーは
捨てゼリフを残して別行動。
仲間を取り戻しに行くそうだが、これもまたキッドの誇りのためだろう。
キラーの現状を見たら、カイドウにはおいそれと手を出せない。同盟ももうウンザリ(そりゃそうだ)なので、キッドがキッドとしてカイドウにひと泡吹かせるには、自分と自分の仲間の手できっちりかたをつける必要があるのだ。それには時間も準備も人員も必要だ。今ルフィたちの尻馬に乗っているときではない。
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最後に、仲間を人質に取られ捕まったローは、なにやら不敵な笑みを浮かべる。
悪っるい顔したホーキンスの表情からは、やはりローに対しての私怨か何かを抱えていることが伺え、しかし、なにか隠し事がありそうなドレークと、ローの不敵な笑みからは、起死回生の一手が隠されていることを予感させる。
ドレークは簡単に籠絡できる相手ではない。ローは手錠をはめられているのでドレークの仲間の心臓をすでに奪っているということもないと思うが、いったいローは何を企み、ドレークは何を隠しているんだろうな。