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我思う故に・・・新館

ONEPIECE 953「一度狐」

 




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主君おでんの非業の処刑を見送り、自らの“生”の終焉を望んだ奥方トキの最期に遺された日和をすら、護り切ることができなかった河松は絶望し、死地を求めて北の大地「鈴後」へやってきた。


そこで出会ったのは、不届きな悪漢を追い払う狛狐だった。


鈴後では、人々は生まれると同時に刀を贈られ、「刀」とともに生き、死ねばその刀を墓標とする風習があった。しかし、その刀の中には名だたる名刀も紛れており、それを狙う墓荒らしが後をたたないのだとか。


不埒者を追い払ったその狛狐こそ、鈴後の大名:霜月牛マルの相棒だった「オニ丸」。すでに亡き相棒であり主君:牛マルに代わり、この地に眠る英霊たちの魂を、たった一匹で守護し続けてきたのだ。

余談だが:


鈴後ではその寒冷な気候のせいで、土葬した遺体が数百年腐らないと言われているそうだが、刀を墓標とすることと遺体が腐らないことは因果はあれど直接事象の関係がないので、これはアレだな。
モリアがゾンビ化したリューマの肉体が、何百年も経過しているにも関わらず原形を保っていたことや、23年前に墓を暴かれてから、モリアがホグバックに出会う10年前までの間、リューマの遺体をどうやって保管していたのかという疑問へのエクスキューズだろう。

500年前のオーズの氷漬け死体の例もあるが、氷の国で凍死しての氷漬けと、人が暮らせる土地で寒さで腐らないとでは、あまりにもニュアンスが異なる。これはおそらく「屍蝋」もしくはそれに似たような特殊な環境による肉体組成の変化だろう。
ま、「屍蝋」になった肉体が原形とどのように変化するのか詳しくは僕は知らないのだが、蝋化とか鹸化という字面を見る限りでは、なんだか柔らかそうな印象で、とても屈強なゾンビの素体になりそうな感じはしないよなぁ…。


〜閑話休題〜


ちなみに、「腹を切るならこの地」というのは、河松が鈴後の出身なら問題はないが、もしそうではないのだとしたら、主君に託された姫を護れなかった落とし前をつける場所はおでん城跡が相応しい。
だが、鈴後に死地を求めた理由は、武士が生きた証がそこかしこに在るからだと思われる。必死で生きて死んだ侍たちが雪の下にたくさん眠っている。その仲間入りをしたいと願うのは河松の「弱気」に他ならない。
河松は心身ともに弱っていたのだ。今その感情を「つまらぬ用事だった」と笑って下せるのは、日和と無事生きて再会できたからでもあるし、日和に責任を感じさせない思いやりと少しの強がりでもあるだろう。

当時の河松はそれだけ憔悴していたのだ。


ひとりの仲間も、頼る主人も相棒もおらず、5年以上もただひとり(一匹)で、愚直にも命がけで武士の魂を護り続けたオニ丸を見て、河松は、この地へ死にに来た自分を恥じたかもしれない。


トキの言うとおりになれば、そして、モモの助や錦えもんが使命を果たせば、13年後に大きな戦が起こる。


そのときに備えることが、今の自分にできることであり、するべきことでもあり、また、何かしていないと死にたくなる自分を誤魔化す策でもあった。


最初は当然怒って邪魔をしたオニ丸も、河松の言葉を理解したのか、ある時から協力するようになった。
ところが、都に食料調達に出た際に、河松は(窃盗で)捕らえられてしまい、そのまま鈴後に戻ること叶わず13年投獄されていたのだという。


河松が今ここへやって来た理由は、オニ丸とふたりで隠した武器を確認しに来たのだった。
その武器は


健在…どころか、当時より確実に増えていた。
こんなことをするのはオニ丸しかいないが、収集も整頓も、おそらくは整備も、およそ獣にできる作業ではない。


そう・・・、ゾロたちをこの武器庫へ導いた謎の僧兵「牛鬼丸」こそ、オニ丸が化けた姿だった。だから牛鬼丸は河松を知っていたし、生きていたことに涙し、逆に河松は牛鬼丸を知らなかったのだ。

ただし…


「牛鬼丸」という名前は、かつて、墓荒らしを懲らしめ、逆に武器を奪うことでこの地を守ろうとした河松が、適当に名乗った名前。それを知るのもオニ丸だけであることは、河松はわかっているはずだ。
※墓荒らしの三人が、小紫に騙されて破産したびん豪・凡ゴウ・ブン業だな。…どうでもいいけど。

だが、河松はオニ丸が化けられることを知らない。


オニ丸は河松に再び相まみえることもなく、傷ついた身体で、しかし満足気に立ち去っていった。

寓話や民間伝承では、狐や狸は人を化かすと言われている。図鑑や論文に書かれているのではないということは、人の社会では、それはありえないおとぎ話か、仮説・空論なのだが、証明されていないので「まさか」と思うのが普通のところ、実は狐は変身できる。…ということなのか、でなければ、オニ丸は「ヒトヒトの実」を食った狛狐か、のどちらかだ。


いずれにせよ、なぜオニ丸は河松と会わずに姿を消したのか。
それは役目を終えたことを自覚したからだと思う。
一般に、キツネの寿命は10年ほど、種類によってはもっと短く、飼育下で管理しても15年生きれば長い方だという。

オニ丸は20年以上生きている。すでに身体は限界なのだろう。
はぐれてから13年かけて集め続けた武器を、無事、河松に託す事ができた。ゾロという有望な剣士に会うこともできた。今また傷を負い身体はもうボロボロ、自分の役目は終わった。河松ももう自分のことなど忘れているだろうから、何の憂いもなくこの武器を使ってもらうには名乗らない方がいい。

「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」だ。…死にそうだけど。

ただ… 牛鬼丸はちょっと人間らしすぎる。「ヒトヒトの実」を食った狛狐なんじゃないのかなぁ。

さて、ひと騒動終えて落ち着いたゾロに、日和から衝撃的な願い。


「秋水」はワノ国に返してほしい。ただし・・・


唯一カイドウに傷をつけた、光月おでんの伝説の名刀「閻魔」を代わりに・・・。


937話のカラー扉でゾロが持っている宝の地図に刀の絵と「閻魔」の文字が書かれているんだが、果たしてこれが何かの伏線だったのか、どうなのか。

「秋水」はリューマ本人(の肉体を持つゾンビ)に勝利し、腕を認められて譲られたもの。ゾロにとっては「自分の刀」以外の価値観はないだろう。リューマの素性やワノ国の都合を聞かされても、また仮に「閻魔」が「秋水」に劣らない名刀であったとしても、ハイそうですかと返せるものではないと思う。
だが、ゾロは牛鬼丸から気になることを聞いた。


秋水はリューマの歴戦で成った「黒刀」。
黒刀ができる経緯はまだ作中で語られていないが、武装色の覇気を纏わせて何千何万と修羅場をくぐり抜けることで、刀が覇気を帯びたままになるかのような物言いだ。

だとすれば、ゾロが秋水を手放す十分な理由となるだろう。しかし、「閻魔」は・・・筋からいうと、モモの助が持つべき刀だと、僕は思うんだ。
だから、今後の流れとしては、
・ゾロ、日和から「閻魔」のことを聞く。
・ゾロ、河松か誰かから「黒刀」にまつわる話を聞く。
・「秋水」を返すことを承諾し、「閻魔」を入手する。
(「閻魔」は日和の手にあるわけではなく入手するイベントがあるかも)
・ゾロ、「閻魔」を携え、討ち入りに参戦。カイドウに致命傷を負わせる。
・鬼ヶ島編終了後、「閻魔」をモモの助に譲渡(返納)。
・ゾロの3本目の刀に「二代鬼徹」を飛徹から贈られる。
こんな感じ・・・?

こうなるといつかは、五老星のハゲが持つと言われてる「初代鬼徹」との対決がありそうだが、和道一文字を手放すことはないと思うので、鬼徹ばかりの三刀流はない・・・かな。

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Comment

  1. 匿名 より:

    河松は、日和が居なくなったと知った時は大変だっただろうな。自分も大変だというのに。゚(゚´ω`゚)゚。オニ丸は、この後どこに行くのかな?あの牛鬼丸が、彼だと分かって改めてすごいと思いました。戦闘力もそこそこだと分かって。河松とも最初は警戒していたものの徐々に懐いて行き、可愛いコンビとなりました。^_^ それはそうと、今回の話にて武器の心配はとりあえず解決したので次回はいよいよローサイドの方が描かれるのかな?それとも、まだ別サイド?

    • BIE(管理人) より:

      ローとホーキンスの因縁は気になりますね。
      あと、康イエの処刑でウヤムヤになったけど、小紫の葬儀ってあれでもう終わりなんでしょうか。
      小紫=日和ってのは、まだ確定ではないので、作中世界での小紫の扱いが気になります。

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