戦略などほぼお構い無しで、しかしここまで奇跡的に何も事を荒立てることなく、宴の広間までやって来たルフィ。
錦えもんの能力による変装のおかげで、周囲のザコどもにもまるで気づかれていなかったのだが、
「甘いものなんか酒の肴にならねェ」とザコ兵がひっくり返したお汁粉を見て、お玉の健気さを思い出したルフィが怒り出す。
無計画に暴れはじめたルフィに呆れたゾロもまた、ワケを聞いて同意した。
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なにぶん規模の大きい宴なので、隅っこでマジ喧嘩がはじまったとて、たいした注目を浴びることもなかったのだが、ルフィに気づいた者が居た。
アプーは侵入者の存在をただ告発するのではなく、クイーンを煽ってルフィの捕縛に報酬を出させた。
ルフィを捕まえれば、気に入らない「飛び六胞」の”誰か”をクイーンが自ら倒して、「飛び六胞」の席を一つ空けてやるそうだ。(その席をやるとは言ってない)
腕に自信のSMILE能力者たちが、やおら活気づく。
アプーもまた、やる気満々で「戦う音楽」でルフィ・ゾロを襲う。
アプーの攻撃は、予備動作こそゆっくりなものの、離れたところから物理的な軌道を見せず直接弾着する打撃や斬撃、爆発を避けることができない。
どうやら周波数帯によって異なる攻撃を音波に乗せているような感じだが、これって攻撃に覇気を纏わせることできるんだろうか。
それができなければ、自然系ロギアには効かないだろうから、2年前からあまり成長してるように感じない。黃猿には通じなかったもんな…
シャボンディでの黄猿は「斬シャーン」で腕を斬り飛ばされ「爆ドーン」で爆散してたから、現在のルフィやゾロの身体的なポテンシャルは、2年前の黄猿よりも上と言えるのかもしれない。
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その頃、キャラに似合わずひっそり潜入ミッションを進めていたキッドは… アプーをどうしても許せなかった模様。
同盟に応じると偽って、キッドとホーキンスをカイドウに売ったアプー。
保身のためにカイドウに頭を垂れたホーキンスのことは、キッド的には今さらどうでもいいだろうが、アプーの謀さえなければ、カイドウに半殺しにされて屈辱的な虜囚生活をすることもなかったし、相棒キラーがSMILEの犠牲になることもなかったからだ。(そういや宴でホーキンス見てないな…)
ついでにルフィとの潜在的な「差」を実感することもなかった…のかも。
もはや、潜入も、より奥への侵攻もどうでもいい。とにかくアプーは許さん!
因縁の対決の決着や如何に!?
ってか、そんなに簡単に片付くアプーではないわな。
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今回は、キャラ各々のスタンスが様々で面白い。
言わずもがな、ルフィの行動原理は、都度目につくものの面白さや不愉快さに脊髄反射し、係る人物の事情などに深く入り込まないため、単純明快に真理を言い当てている事が多い。ま、「世の中そう単純ではない」のが実状だが、ルフィの問題解決の突破力が高いのは余計な事情に振りまわされることが少ないからだろう。
今回のルフィは、「独断専行したキッドたちを止める」と言っていたが、その目的はお汁粉ぶちまけ野郎に腹を立てた時点でどこかへすっ飛んでいるはず。
しかし、にわかに「ワノ国をまともに戻してやらないと」と考えた原点に立ち返ったので、ひとまず本来の目的(カイドウ討伐とワノ国の奪還)に邁進できるだろう。
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ゾロは、単独行動させるとチームの作戦を台無しにしかねないルフィを止めようとしたが、「騒々しい方」に向かってきたため道に迷わなかったことは幸いだ。(それでも迷うのがゾロという男なのにな)
ルフィの勝手な行動に苛立ちながら、それを諌める自身の行動が結局騒ぎを大きくしていることに気づいているのか、気づかないのか、おそらくどっちでも気にしないんだろう。まぁ、ゾロがひそひそ話をする姿は想像できないが、いい相棒だよなぁ。
ただ,ゾロはルフィとは違い、ある程度戦局を見極める目を持っているようで、ルフィならまず考えない「一時撤退する」ことも、先の戦いに不安を覚えることもあるようだ。
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キッドは、倫理観や自制心のネジが外れたイカレたパンク野郎のイメージが強かったが、今回ワノ国に来て、カイドウの埒外の強さにも、自分を遥かに超えたルフィのイカレ具合にも打ちのめされた感がある。古くからの相棒を思ってクールになりきれない「甘さ」も見せたし、ぶっちゃけ好感度上げたよな。なんか身近になった気がする。
カイドウを倒すという最終目的のために、状況を最大限利用してひっそり潜入するという、キャラに似合わない行動をしているのも、自分の弱さを自覚したからなんじゃねェの?
だが、その重要な(ハズの)最終目的を遂げるための隠密行動を投げ捨ててでも、今ここでアプーをぶっ飛ばさずにいられなかったのは、その自身のプライドをズタズタにされた諸々のすべてがアプーの裏切りから始まったと考えたからだ。
「自分はもっと強いと思っていた」「自分は誰よりもイカレていると思っていた」自分はまだまだだ、と省みることができれば成長も早いはずだが、今はまだその現実から目を背け、ルート分岐のファクターとなったアプーに責任をなすりつけることでしか憤懣を晴らすことができなかったのだろう。
で、ローはというと、ルフィやキッドの行動を予測しても制しても意味がないことを知っていて、ふたりが騒動を起こした結果、作戦の先行きが不透明になることも想定済みでふたりを利用(というか“活用”)している。
いいチーム(?)になってきたなぁ・・・。
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さて、アプーについてだが
前回も書いたように、百獣海賊団においてのアプーの地位がまだ定かでない。
クイーンが提示した「飛び六胞」の空席に食いつくということは、今はまだ、飛び六胞よりも立場が低いということだろうか。
経緯が分からんので、アプーが自身を売り込んだのか、敗北して傘下に入ったのか、それとももともとカイドウの部下だったのかは不明だが、カイドウの人間離れした強さに勝利を完全に諦め軍門に降ったホーキンス(=真打ち)。カイドウの部下を倒して実力を示し、自らを売り込んできたドレーク(=飛び六胞)。このふたりの中間くらいの立ち位置になるんだろうか。(ドレークが重用されたのは「古代種」だからってだけの気もする)
まぁ、「何くれる?」とクイーンを煽ったのはアプーだが、「飛び六胞」に食指が動いた明確な描写もないので、これはただ、せっかくのパーティを盛り上げるために、景気のいい賞品を出してくれよ!という意味合いで、自分でそれを獲得するつもりはないのかもしれない。
というのも、アプーには組織の中で上に登りつめようとする気概を感じないからだ。
2年前にも、自分の能力では黄猿を倒すことができないことを理解しながら、歯痒い思いをするでもなく、あがいて立ち向かうでもなく、
怒らせて逃げることが最良と判断したアプー。イライラするのは相手にさせておけ、ってか。こいつは、その場が楽しければ、他のことはどうでもいいんじゃないかと思うね。
信念がないくせに、他人の足を引っ張り事態を引っ掻き回すだけの実に迷惑極まりない男。
それがアプーなのかもしれない。