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ONEPIECE 1029「塔」

常識の範疇を遥かに超える埒外の強敵、四皇ビッグ・マムを相手取る上で、手を組むことにしたローとキッドだったが、キッドの様子が少しかなりおかしい。


それなりに疲弊はしているものの、身体は動くし頭も回る。しかし、なんの予兆もなく突然頭を襲う激痛。
怪我でもないし持病でもない。酸欠でも超音波を食らったわけでもない。違和感しかない謎の激頭痛にひたすら面食らうキッドなのだが・・・

その頭痛の原因はホーキンスであった。


キラーに対峙するホーキンスは、事前に仕込んであったキッドの藁人形で、自身へのダメージがすべてそっくりキッドを傷つける仕組みを盾に取り、攻撃できないキラーに言いたい放題していた。

一度は四皇を倒すための同盟を結びながら、いざカイドウを前に、ろくに戦いもせずに降伏した裏切り者ホーキンス。何か考えがあって裏切ったのか、でなくとも、今からでも一緒に戦えるならまだ許せたかもしれない。しかし裏切りを後悔することも、ましてや謝罪などするわけがないホーキンスとは、もはや同じ方向を向くことはない。
そのホーキンスが、卑怯(という言葉が該当するかは微妙だが)にもキッドの命を盾に取った。

今さら「正々堂々戦いやがれ」などと、言ってもムダであることは分かりきっている。


キラーは懇願するしかない。
「キッドを解放してくれ」代わりに自分の命をやるから。

さて、キラーはいったいどれほどの譲歩をしただろうか。
ホーキンスを斬ればキッドの致命傷となる。キッドを解放してくれれば、その代わりに自分の命をくれてやる。これは断じて泣き落としなどではない。
これは、自分と相棒、どちらか一人を失っても残った者は前へ進むという宣言なのだ。
ここでキラーは大きな賭けに出た。


ホーキンスの左腕を斬りつけたのである。
そのダメージは、左腕がないキッドを身代わりとすることができず、そのままホーキンスの左腕を切断した。

次いで切断した左腕からキッドの藁人形を引きずり出し、もう他に藁人形のストックが無いことを確認した。
そうなれば、あとは素の海賊同士、真っ向からの一騎打ちなのだが、


一刀両断! 軍配はキラーに上がった。

まぁ… この結果は当然といえば当然だ。

ホーキンスの主な能力は「ワラワラの実」による身代わり藁人形と、ストローマンズカード。
普段の占いに使っているのもストローマンズカードのようなので、行動の結果を確率で知ることができるのも「ワラワラの実」の能力なのかもしれない。

かように、ホーキンスは「占い」で行動の結果をある程度先読みできるので、成功率の低い行動を回避し、より成功率や生存確率の高い選択肢を取ることができる。非常に便利な能力だし、使いようによっては負け知らずを貫くこともできるだろう。

これまでホーキンスは、到底かなわない強さの黄猿に対して「今日自分は死なない」ことを頼りに立ち向かうことができた。反面、戦っても逃げても生き残れないと占いに出たカイドウに対してはあっさり軍門に降った。生きるため、死なないための選択。
その柔軟な選択ができる技能は確かに役に立つ。一味にひとり是非とも欲しいところだが、船長がそれでは少しいただけない。言い換えればそれは、ぶち当たった壁に果敢に挑むことをしないで、安全にクリアできる低ランクのクエストのみをチマチマこなす、有り体に云うと「易きに流れる」男ということ。

傷を負うリスクや恐怖から目を背け、生死の狭間をくぐり抜けてきた経験も、その険しい道に挑む強い心根や情熱も持たないホーキンスが、向こう見ずなキッドを長年補佐してきたキラーに勝てる道理はなかった。


そして、戦いの決着の直前にホーキンスが引いたカードは「塔タワー」。
占いを信じ、頼りすぎてしまったがために、カードが示した運命に抗うことができなかったホーキンス敗北・・・・ってか


これ死んだやろ・・・。

ストローマンズカード「塔タワー」が示す意味は「古きものの崩壊」。さらに隠された意味は「新しい道」だそうである。
「四皇の牙城が崩れ、これまでとは違うルールが生まれる」かのような暗示。
自分が身の安全のために諦めた未来を、苦しみながらも楽しそうに進むルフィやキッドたちが妬ましかったホーキンスにしてみれば、そりゃあ愕然とする占い結果だったろうよ。


キラーかっこいいぜ!キッドの憂いは無くなった。ビッグ・マム戦は仕切り直しだ。

さて、前回身体の異常が明らかになったサンジは、戸惑っていた。


バッキバキの全身の骨は力ずくで矯正すれば元に戻り、サンジの首を捉えたクイーンの刀は斬ること敵わず破損した。肉体の急激な変化。・・・急すぎる。このまま兄弟たちのように感情を失ってしまうのか・・・そりゃ怖いわ。

身体が強化されたことには、おそらく折り合いをつけることができるだろう。ジェルマによる人の道を外れた「外道の科学」に侵されることを心の底から汚らわしく思うだろうが、それでこれまで救えなかった命を救えるならば、サンジは受け入れることができるはずだ。
だが感情を失うことは、すべての女性を愛し、料理を振る舞うことにこの上ない歓びを感じるサンジにとって絶対に受容できないだろう。

とはいえ、サンジは愛と自己犠牲の人。「せめて、おれの心が失くならないうちにこの勝負だけはケリをつける」と考えるきっかけの言葉なりエピソードが、クイーンの口から漏れそうな予感。


考える時間はないぞ。
そしておそらく、考えても答えなど出ないのだ。がんばれサンジ! 運命に負けるな!

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