油断しきっていたとまではいえないが、状況にとまどいを見せたルッチはステューシーに完全に不覚を取った。
リップスティックに忍ばせていた海楼石で動きを止め、首筋に噛みつかれたことでルッチは意識を失った。カクも恐らく同様と思われるが、何がどう作用して意識を失うに至るのかその仕組みは極めて不明瞭だ。
首筋に噛みつくといえば「ヴァンパイア」の印象が強いが、対象を眠りに誘うなどはむしろ「夢魔」とか「淫魔」のイメージ。美しく妖艶なステューシーにはお似合いとはいえ、その力はどうやって得たものなのだろうか。
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ステューシーはミス・バッキンの複製人間クローンで、MADSのクローン実験成功第一号。
第一号がいるならそれ以後も研究には続きがあるはずで、その中にウィーブルも含まれるのではないか…とは前回書いたが、とりあえず後のことは置いておいて、ステューシー誕生までには多大なる苦労や失敗があったことは想像に難くない。
前回冒頭のベガパンクによる回顧録がステューシーのことを指しているならば、およその人の感覚に逆らおうともいずれ平和をもたらすことに繋がる「人間を生み出す科学」がようやく実を結んだことになる。その最初の実験体に「人間」ではない特性を持たそうと考えるものだろうか。まずは純粋な「人間」を造り出すことに注力したはずなのだ。
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そこで気になるのは正シャカの言葉。
潜伏20年以上彼女はずっと我々の味方だった。
意図していなかったが結果としてCP0にスパイを送り込んでいたことになった。
これは、創造主の立場からしてもステューシーが今もなお味方かどうか確証はなかった事を意味しているだろう。
ステューシーは、ベガパンクが「平和な世界への橋頭堡」として政府に送り込んだ「私欲を持たない人間」ではないだろうか。血統因子を操作して常人より強く頑丈に造ることでサイファーポールに潜り込み実績を積ませたのだろう。そしてベガパンクは彼女を自由にした。
おそらくは曇りなき眼で政府の行く末を観察させるために。
ステューシーは自らの意思でCPであり続け、歓楽街の女王としての裏の顔を作ったことも、異形の能力を手に入れたのも、彼女が自ら決断し行ってきたことなのではないだろうか。
オリジナルのミス・バッキンはロックスでは自称“科学者”で、MADSでは“居候”だったという。
そうなってくると、扉絵シリーズVol.27の向かって右端の後ろ姿はクローンのステューシーではなくオリジナルのミス・バッキンだった可能性がある。
MADSのオーナーだったル・フェルドはクローンのステューシーの誕生を知らず、歓楽街の女王ステューシーをミス・バッキン本人だと思っていたなら
このやり取りに少し説得力が生まれる。
たいした科学的実績を残さないMADSの居候としてしか認識していなかったから、ミス・バッキンのこともそう詳しくは知らなかったのだろう。
もしここまでが正しいと仮定するなら、ステューシーの異形の能力は「悪魔の実」である疑いが濃厚だ。幻獣種の夢魔の悪魔の実を食べたとでも考えておこう。物でも食えるんだから複製人間なら問題なく悪魔の実食えるよな。
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ともかくステューシーの離反で状況は覆った。
ゾロとサンジが食い止めている間に想エジソンが命令を更新してセラフィムたちもおとなしくなったしな。
ちなみに、自分と互角以上の剣士と斬り結ぶのは初めてだったか、ミホーク天使が汗かいて戸惑っている表情が面白い。確かにオリジナルの鷹の目よりも人間らしいかも。「夜」に似た十字形の大剣を振るっているが、黒刀となっていないのも芸が細かいね。
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さて眼前の敵は片付いた。となれば即刻逃げるが吉… なんだが…
ベガパンク本体が居なくなってしまった。
ルフィはボニーのことも探しているし、ふたりは一緒に居たはずなんだが… 失踪したのはベガパンクだけなのだろうか。
ボニーがくまの記憶をどうしたかも気になるところだが、ベガパンクを誰かが隠したもしくは攫ったのだとしたら、それはフロンティアドームを勝手に解除した“誰か”だろう。
もしブルーノがルッチたちに同行していた場合、「ドアドアの実」ならどちらも容易だと思うね。ブルーノも今CP0に所属していることは映画REDで明らかになってるしね。
さて、ベガパンク本体を残して逃げるわけにもいかないし、ボニー的にもくまの記憶を置いて去ることはできないだろう。ってことは、われわれ読者としては黄猿待ちだな。
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黄猿は麦わらの一味がいることが発覚する前からエッグヘッドに別の任務で向かっていたそうなので、軍艦目一杯引き連れていったい何をするつもりなのか、気になるねェ・・・。
そして黄猿に随行するこの御方
五老星の名前が明かされたのははじめてだ。
かなり前の段階から、五老星には太陽系の惑星の名前が冠されているとあちこちで予想されていた事自体、僕は知らなかった。その根拠は、世界に多大な影響を与える頂点の存在として、古代兵器に「天王星」「海王星」「冥王星」の名前がついているため、地球を除く5つの惑星の名前が五老星のコードネームとして使われるんじゃないか?というものらしい。へー
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まぁね、はじめて作中に「プルトン」の名前が登場した192話は2001年の掲載で、当時はまだ冥王星も「準惑星」に格下げされていなかったし、セーラームーンを例に挙げなくても「水金地火木土天海冥」は確かにアリかもね。あ、サターンってのが土星のことね。
でもさ、これってファーストネームだよな。
ジェイガルシア家のサターン君なわけだよ。この人の血筋が代々サターンならいいんだけど、800年以上語り継がれる古代兵器の名前と肩を並べて本当に良いものかどうか・・・
五老星は年齢不詳。一説によると不死の術をかけられ800年生きているとも云うので、それならいいんだけど、天竜人同士で話し合って「お前んちに今度生まれる子ども、マーズくんね」とか決め合ってるところを想像するとめっさイタくてキモい。
さて爺ィなのに「ヴィーナス聖」なんて名前なのは、どの人なのかなぁ・・・。
ってか、五老星がわざわざ出向いてくるのって、セラフィムに命令するため以外に考えられないんだが・・・?
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で、その頃白ひげの故郷「スフィンクス」では、マルコが留守にしていた間のことが語られた。
海軍が「白ひげの財宝」を没収するためにやってきたが、突如現れたウィーブルが撃退した。しかしその後、緑牛がやってきてウィーブルを連れ去ったということだ。ミス・バッキンもマルコにウィーブルを助けに行けとまでは云ってないし、マルコもウィーブルの行動に感謝はしているものの、助けに行くまでの義理がないと思ってる様子。
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バッキンは云う。│
白ひげとウィーブルの血縁を、ベガパンクなら証明できる!
マルコは重い腰を上げることになるのだろうか・・・。
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余談だが:
「白ひげの財宝」を奪いに来たラーテル大佐。
どうにも既視感があると思ったら・・・
こいつか。
他人の金を掠め取って私腹を肥やす小悪党、ネズミ大佐。
ラーテルってのはサバンナで最も恐ろしい陸生生物といわれる、小柄なのに恐れ知らずの肉食哺乳類だそうだよ。
完全に名前負け。
もっといいキャラにつけてもいいくらいの名前だよなぁ・・・