殉職したことで二階級特進したのかとも思ったが、その前にすでに少将になっていたという未確認情報もあってよく分からない。
この二年の間にたくわえた口ひげが「真っ直ぐ」なのがいかにも彼らしいのだが、口ひげのおかげで顔が「T」の形ではなくなってしまったのは残念だ。
Tボーンの死は、クロスギルドがかけた懸賞金に目が眩んだ市民の手によるものらしい。
年間千人を超える餓死者が出るぺぺ王国のとある貧民が、飢える家族を救うための行動だったという。
僕はクロスギルドのことを、その名の通り「海賊組合」だと考えていた。
世界中にいる有象無象の海賊たちから加盟料を取り、「互助会」のような取り決めと「共済」的な懸賞金支払いで成り立つ組織ではないかと思っていたんだ。
多くの「闇の組織」が出資しているとの情報もあったので、広くブラックマーケットにクロスギルドに与する利点などが喧伝されているであろうことは予想できたが、まさかその窓口が市井にまで開放されているとは考えが至らなかった。
今回のことは、Tボーンの性格があまりに「真っ直ぐ」過ぎたために、守るべき市民を警戒することなど微塵も考えなかったことが引き起こした事件であることは容易に想像がつく。
とはいえ、似たことが度々起きてしまえば、センゴクとおつるさんが危惧するように、海兵たちの士気を低下させ、ひいては海軍の権威も失墜させることになる。
ふたりはバギーを甘く見ていたことを少なからず後悔しているようだが、無理もない。だってバギーだからwww。
むしろ反省すべきポイントは、クロスギルドがバギーを首魁に頂く組織と思い込んだ点だろうな。ミホークはともかく、クロコダイルがこれまでにやって来たことを考えれば、たとえそれが参謀役だったとしてももっと警戒すべきだったのだ。
このあたりから海軍におけるバギーの評価が透けて見える。
バギー単体の驚異はそれほど危険視されていないが、実態以上に捨て置けない存在だと思われているらしい。
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で、くだんのTボーン殺害事件の下手人が、流れ流れてバギーの元へやってきた。
懸賞金はすでに家族に送金されたそうで、この男は家族を飢えから救うためにひとり家族の元を離れ犯罪者となったのだった。云っちゃあ悪いが実に「浅はか」だ。
人間、極限まで追い詰められれば思い切った考えに至ることもあるだろう。しかし実際にそれを行動に起こすかどうかは彼の人物の精神に拠る。
懸賞金はいくらだったんだろう。コビーが五つ星で5億ベリーだそうだが、通常大佐は一つ星だというから、コビーの場合名声が加味されているのだろう。Tボーンが特に名声などなくごく普通の少将または中将だったとしても三ツ星や四ツ星、すなわち3億〜4億が支払われたのだろうか。
世界最低レベルの最貧国の貧民が、ある日突然「億」単位のあぶく銭を手にして、はたしてその後まともに人生を送れるものか。最貧国が国ぐるみで清貧ということはまずありえないので、カネを手にしたこの家族はこの最貧国で「搾取する側」にジョブチェンジして、上辺だけ裕福な心の貧しい人生を送ることになるだろう。
うまくすれば国外脱出して第二の人生、しかし我が身を犠牲にした男に一生負い目を感じて生きてゆく。最悪のパターンは、一家を妬んだ貧民仲間(?)に金品を奪われ殺害される。
センゴクたちが危険視しているのはこういった負の連鎖だ。
この男はあぶく銭を手にした家族のその後の幸せまで考える余裕はなかったのである。
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では次に、バギーたちに大歓迎されたこの男のその後も考えてみよう。
この男がクロスギルドに於いて、海賊として新たな人生を立派に歩めると思うだろうか・・・否である。
今はいい。家族に大金を送って自分も食うに困らない生活を手にしたのだ。しかし元々の性分や生き方がまるで異なる「奪って殺す」海賊稼業で存在感を示せるとは、僕には思えない。
この男はクロスギルドの「お荷物」となることが目に見えている。それでも家族を救えたのだからと割り切れるならいいが、もしそれができなければここでも身を持ち崩し、心を病んで、「家族の元へ戻りたい」などと世迷い言を吐いて刃傷沙汰を起こすだろう。逆恨みしてバギーを殺す可能性もなくはない。
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こういうところ、バギーも思慮が足りない。
当然である。クロスギルドの絵を描いたのはクロコダイルなのだから。
クロコダイルはクロスギルドがもたらす世界の混沌を想定している。最終的な目的はわからないが、綿密な計画には手順とタイミングが重要だ。それなのに調子乗りのバギーはその計画に賛同して一緒にいるわけではないうえに、致命的なほどにその場の状況に流されやすい。
これはクロコダイルとミホークにも落ち度がある。
バギーの利用価値を見誤り、いつまでも組織のトップ(らしき地位)に担ぎ続けたことだ。計画にイレギュラーな出来事は付きものとはいえ、イレギュラーを起こし続ける災厄の根源を抱き続けた結果はすべて自分たちに返ってくるのだ。
バギーには分不相応な夢がある。
その夢はシャンクスが叶えるもの、シャンクスこそその資格があると思っていた。認めていた。しかしシャンクスはなぜか遠回りの道を選んだため、バギーは共に進むことを拒絶して実に24年。
今になって動き出したシャンクスに心が逸る。
運というべきか事故というべきか、今やなんの因果かバギーも同じ「四皇」。
自分をまるで客観視できないバギーに呆れるばかりの二人を余所に、クロスギルド全体に声高にそれはぶち挙げられた。
うん・・・。これは仕方ないわ。
自ら矢面に立つことから逃げて、バギーの性格も実力も知りながら手綱を締め損なったクロコダイルとミホークが悪い。
バギーを放逐するなり殺すなりして、不名誉を訂正することはいつだってできたのだ。それを手下たちに見えないところでお仕置きするだけに留めていたあんたらのツメが甘いよ。
どうすンの、これ? 今から訂正するの? それってめちゃめちゃダッセェわ。
もう遅いよ。一蓮托生、ハラ括れや。
しかしねぇ・・・クロコダイルはこういうヤツだと知ってたけど、ミホークのことを買いかぶってたわ。少なくとも「社会悪」ではないと思っていた。
社会を混乱の渦に巻き込んで、貧しい底辺の市民をさらに苦しめることに、興味がないならまだしも、その行いに率先して加担する男だったとは・・・。
そして今ミホークは、自分の名前がついた組織が無謀な事してみっともなく失敗することを恐れている。見損なったよミホーク、さっさとゾロに負けちまえ。
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その頃、カマバッカ王国に辿り着いた船は、
先日天からの謎の攻撃によって消去されたルルシア王国を逃れてきた船。
サボが乗っていた。
1060話でのサボは間接通信をしていたというので、電伝虫を一台ないし二台ハブに噛ませてルルシアから少し離れた場所から話していたらしい。
確かに島の真上の光を見上げる島民と、サボは斜め上を見上げるように描写されていた。
セキ王やコマネ王女をはじめ善良な国民も多数犠牲になったはずだが、モーダを含む数十人のルルシアの民はこのまま革命軍に参加することになった。
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そして「本当の事」がサボの口からすべて語られる・・・
その話は聞くだけで命を危険に晒されることになるかもしれない衝撃の事実。
以前の通信では
パンゲア城の“虚の玉座”でとんでもないものを見た
と云って通信が途切れていた。サボはイム様の姿を見たのか、それはいったい何者だったのか、が最も気になる点だが、聖地マリージョアで起きた「本当の事」なので、コブラ王の死についても語られるだろう。
はたしてその話はいつ聞けるんだろうか。次回じゃない気がするなぁ・・・。
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余談だが:
24年前、ロジャー公開処刑の日のシャンクスには、左目の三本傷がない。
コレまで数度に亘って巧妙に隠されていたのに、ついに描かれた。
シャンクスがティーチに傷をつけられたのはこれより後だ。まぁ冷静に考えたらワノ国編の回想でロジャーと分かれるまではすでに描かれていたし、それから処刑までの間にティーチと会う機会はなかっただろうから、過去編を描いたことで解禁になったということだろうな。
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あと・・・
サボがモーダと会って、何かエースの話を聞いたか気になる。