マーズ聖が見上げるもの
それはあまりに巨大化したため本体から切り離し保存されたベガパンクの頭脳。
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前回喩えに出した「ルパンVS複製人間」マモーの本体のように脳みそそのものではなく、頭皮も毛髪も残ったままの状態がかなりグロい。まぁ脳みそ丸出しもグロいっちゃあグロいんだが。
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ここで云いたいことはいろいろある。
どれくらいの大きさの段階で切り離されたのか分からないが、今も肥大化し続けると云っていた脳みそに合わせて頭皮も拡張し続けていた衝撃もさることながら、ベガパンクの死後も頭脳のみが生き続けることにマーズ聖やヨークが何の疑問をいだいていないことに驚かされる。
これはいくつかの可能性が示唆されるだろう。
1)本体のベガパンクの肉体が死亡しても「ノミノミの実」は「脳」に依存し効果を発揮し続ける。
2)生存中に拡張された「ノミノミの実」の効果は、能力者が死亡しても消滅しない。
いずれにせよ、この現状は五老星やヨークにとって予測できたことだった。
1)は、悪魔の実が能力者の“どこ”にその特殊性を紐付けられているかという問題。悪魔の実が人間の“脳”に依存するのであれば、切り離された“脳”こそが「ノミノミの実」にとってはベガパンク本体であるとする説だ。
2)は、能力者の死亡によって「ノミノミの実」は世界のどこかで新たな実をつけていることだろうが、能力によって陸上で作り出されたものが海に入れても消滅しないことと同様に、「ノミノミの実」の能力が失われた今でもこれまでに蓄積したナレッジバンクは失われないということ。
これ以上大きくなることはなくなったが、ベガパンクが生きた証=知識と経験は、本体の死を超越して半永久的に保存・運用され続けることになる。
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それをもってマーズ聖は「死」を経てなお世界に存在感(存在そのものの価値)を示し続けるベガパンクの“意思”に、「思想なき“生”」の意義を問いかける。
ともあれ、これまでに蓄積された膨大な知識は、この装置が破壊されない限り閲覧できるらしく、五老星も安易に破壊することはできない。
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ベガパンクの告発まであとわずか。
マーズ聖はパンクレコーズに隠された配信電伝虫を破壊して終わりと考えていたが、映像は止まらない。
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少しずつ坦々と語られるベガパンクの独白。
それを止める手段を見失い焦りを見せる五老星。
配信に向き合う世界中の人々は、あるものは感慨に耽り、あるものは襟を正して耳を傾けた。
その短い間にもエッグヘッドでは激闘が続き、世界中の反応を描写するため、今回の話中で語られた言葉はまだわずかに過ぎない。
語られた内容はこうだ。
私はふたつの罪を犯した。
そのため捕まるなり、殺害されるなりするだろう。
この映像は私の「心肺停止」と共に発信される。
ただし、これをしっかり理解して聞いてほしい。
私を裁く者が誰であれ、それを「悪」と説くつもりはない。
私は善悪を論じない。
そうできる程・・・“彼”について、わかっていないのだ。
皆には知っておく権利がある
結論から云うに
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まず、ベガパンクが犯したふたつの罪について。
確定的なことは「空白の100年」について調べたことだが、ここでいうふたつの罪にそれが含まれるかは少々疑問だ。
もっと根本的かつ大規模な、たとえば世界全体に対する背信や、過去の歴史や未来に対する裏切りのような大きな「罪」を犯したと考えているのではないだろうか。
またはまったく逆にごくごく小規模な身近な罪、たとえばバーソロミュー・くまとボニーの親子を救えなかったことだとか。
ベガパンクを捕まえ殺す勢力は、どうやら謎の存在たる“彼”に与する者たちであるように受け取れる。普通に考えればこれはイム様のことであり、謎の存在イム様が人なのか人ならざる存在なのかすら分からないため、イム様がこれまでしてきたこと、やろうとしていることの善悪を判断するに至っていない。・・・というな。
だが逆に捉えることもできるんじゃないか。
ベガパンクを裁く者たちが“悪”とは限らない。だって彼らがその存在を歴史から抹消しようとしている者だって“正義”だとはまだ分からないのだから。・・・と。
この場合、善悪を論じれるほどよく分かっていない“彼”とはジョイボーイもしくはニカのことになるのかもしれない。
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それらはこれからの未来において各々が判断してほしい。
だが、これから起こりうる事を知らなければそれもままならぬこと。荒唐無稽に思えるかもしれないが、皆知っておくべきだ。いや、知ってその上でこれから起きることに対してどうすべきか考えろ。
このあとにどんな言葉が続くのかによって意味は大きく変わるかもしれないが、今回の範囲で云えることはこんなところだろう。
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「世界が海に沈む」とは具体的に何を意味するのか。自然現象かはたまた人為的なことなのか。
ウォーターセブンが水没しかけていること、マリージョアが赤い土の大陸(レッドライン)にある理由、テキーラウルフが建造される理由、ワノ国が壁で国土を包んだのは何への備えだったのか・・・将来地盤が沈下するまたは水位が上がることを示唆する話がいくつもある。
歴史を明らかにするのか、それとも誰かを断罪するつもりなのか。
オハラの無念を晴らそう・・・なんて単純な理由じゃないと思うなぁ。
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ベガパンクの配信を止める手立てが見つからない五老星は、この期に及んでベガパンクの告発を止めることよりも、マザーフレイムを作る手段を残すことを選択したぜ。
これは、彼らにとってマザーフレイムがそれだけ重要であることを意味している。
その効果にイム様が満足していたから、何としても手に入れたい。でないとイム様に叱られちゃう・・・なんてレベルの話ではなく、これまで通りの世界の支配を継続するのに飽き足らず、さらなる飛躍的効果を求めている。それも死にものぐるいで。
それこそ彼らは彼らなりに、沈む世界を救うためにマザーフレイムが最後の望みかとでもいうような重要度で話してる。
ベガパンクが云うように、情報が少なすぎて物事のまた勢力の善悪は安易に測れない。二元論で語るのもある意味危険だ。
敵側が実は“悪”ではなかった、なんてよくある話だ。
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さて、このあとのベガパンクの話は、果たして最後まで聞くことができるのか。