ロックス海賊団
大海賊時代のはじまりより20年を遡った時代に確かに存在した「悪の寄り合い」
そこに明確な理念など感じられず、神出鬼没で手段を問わず、海軍も手を焼いた「凶悪犯の吹き溜まり」。
彼らがその時代を象徴するほどの“災厄”だったとの記憶から、「ロックスの時代」と云われたりもしたようだ。
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今から42年前、そんな全盛の「ロックス海賊団」擁する海賊島ハチノスに、珍客がやって来た。
シャクヤクである。
九蛇海賊団船長として「女帝」の呼び声高く、その類まれなる美貌とともに無敵の人気を誇りながら、わずか2年でその地位を捨て、ただ野に下るだけに留まらず、こともあろうかハチノスにやってきた。
ロックス海賊団に先帝:グロリオーサが身を寄せていることを当然知っていただろうが、コネを頼るほど困ってはいないはずだ。
グロリオーサの前例があるから、入り込む余地・土壌がすでにあるとの打算的な行動と思われる。
てっきり「恋煩い」を発症して、レイリーを追いかけて足抜けするものと思っていたが、どうやらシャクヤクは相当に強かだったようだ。
グロリオーサが、想い人:ロジャーと程遠いロックスに身を寄せ、平然と暮らしていることにある種の確信を得、将来レイリーを射止めるための着実な一歩として、大胆不敵にもその時代の寵児たる海賊たちの中枢に乗り込んだのである。
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元祖「シャッキー’s ぼったくりBAR」の誕生だ。
建物の意匠は、後世のシャボンディのものとほぼ同じ。入口のドアが西部劇みたいな「スウィングドア」なのと、屋根のデザインが違うくらいか。
突然押し入ったシャクヤクとこの酒場は
ハチノスに群がる有象無象の海賊や海賊くずれのみならず、ロックス海賊団の面々をもゾッコン魅了した。
ロックスや白ひげニューゲートまでも・・・。
彼女はやがてこの島の海賊たちにとって、失うことのできない「宝」となる… とある。
単に彼女個人の理由でアマゾン・リリーの帝位を退いただけでなく、今や隠されたこの時代の中心の物語に、シャクヤクが関わってきそうなことは、かなりの驚きである。
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さて、その「ロックス海賊団」
「ロックス海賊団」とは、海賊島ハチノスにて一つの儲け話のためにかき集められ生まれた個性の集団。
と云われていたんだが、どうやら活動期間が短いためにそう伝えられているだけで、現実がそうだったかは少し疑問だ。
ロックスの目下の最大の目的は「聖地の陥落」。世界貴族を打ち倒せば「世界の頂点」に立てる、と考えていたらしく、結果「ロックスの時代」と称されるほどに暴れまわったのは、すべてその準備段階においての話。最終的にはそこへ向かうと計画し、“かき集めた”のではなく、“自ずと集まってきた”というのが実状であるようだが、残念ながら世界政府を打倒するほどの行動をするまでには至らなかった。
ただその野望は、単に「天竜人憎し」ではなくて、失われた100年を含む現世の歪められた現実に対する不満や憤懣に起因するのかもと考えれば、ロックスをもおよそ「人間的」と捉えることができるかもしれない。
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ちなみに
船内でも“仲間殺し”も絶えない凶暴な一味。と伝わっていたが、おそらくはこれも正確ではないな。
僕は「船内で“仲間殺し”が絶えない」と聞いたときは、ロックス海賊団を「無秩序な大所帯」だと考えていたんだが、
「無秩序」という表現には間違いないが、どうやら一騎当千の猛者が集った、トップの者たち
ロックス・シキ・バッキン・マーロン・白ひげ・王直・ガンズイ・キャプテンジョン・リンリン・バーベル・カイドウ・シュトロイゼン・グロリオーサ
ここ数話の作中に出た限りでは、この13人だけが「ロックス海賊団」であると、僕は認識した。(ひぐらし婆ァは?)
今回の作中にもあった通り(普通なら死ぬレベルの)仲間内での裏切り行為なども常態化していたようだが、それで仲間の誰かが死ぬようなことはほぼなかったんじゃないか?
個人個人が相当な実力者で、直接殺し合ったりすることはなかった、とはいえ信頼関係とかチームワークは皆無で、まるで奇跡のようなバランスでなんとか成り立っていたんじゃないだろうか。
やがて彼らは、政府・海軍が「手に負えない」レベルを超え、存在しなかったことにしなければならない程の“楔”を歴史に刻み込むことに・・・いや刻み込まなかったことになるのだ(笑)。
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その間も、ハラルドはずっとロックスからの勧誘を受け続けていたようだが、それはそれ。
種族が違えど「人としての在り方」に目覚めたハラルドは、巨人族(エルバフ)の世界政府加盟を目指しながらも、選民思想に囚われた政府の行いには逆らい続け、理想と現実の板挟みに苦しんでいた。
かつて論理無用の悪童だったハラルドは、改心した自分の「性善説」に心酔し切っているようだ。原理主義とも云うべきこの偏狭ぶりは逆に危険。「外交」とはもっとWin-Winの関係を目指して駆け引きするもので、ときには脅威性をもって相手に強く出る必要もあるのだ。
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それはそうと
「どんな相手でも差別をするべからず」とハラルドに教えたイーダが、
「ロックスと友達付き合いを続けるのはいかがなものか… 」と、冗談でも発言することに、僕は少し安堵した。無条件に“博愛主義”を訴えるエセ聖人ではないことが分かったからだ。
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そこで・・・
盲目的に「世界政府への加盟」へ邁進するハラルドを利用する気満々の五老星が一計を案じる。
ロックスを殺せ
かなり無防備なロックスに個人的に会う機会があるハラルドには可能なミッションではある。
ロックスはハラルドを気に入り一方的に「友達」だと思っているが、ハラルドはその関係性を否定しているからな。
「ロックスを始末できるなら、そなたの望み叶えてやろう」
とは、ロックスの存在を苦々しく思う政府の出すカードとして、自然な流れといえるかもしれない。
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だが実際問題、現代においてエルバフは世界政府に加盟していないし、ロックスはガープとロジャーに敗れたとされている。(そこで死んだとは云われていない)
ハラルドが断ったか、受け入れて確かにロックスを殺したが世界政府加盟の約束を反故にされたか、後者ならば記録されたロックスの顛末は捏造されたものということになるが、いずれにせよこの契約は果たされなかったのだ。
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さぁ、いよいよ「ゴッドバレー事件」の真相が明かされる日が近づいてきた。
どう考えても不自然な「ガープ ✕ ロジャー」共同戦線が、実際はどのように組まれたのか気になって夜も眠れない(嘘)・・・というところで、次週は休載だ・・・。残念