イム様にとって「デービー」は忌まわしき一族。それを根絶させるために、イム様は黒転支配ドミ・リバーシでロックスを狂気の従僕にし、ロックス自らの手によって一族を最後のひとりまで殺させるつもりだ。
黒転支配を受けるとどのような効果があるのか具体的に明言されてはいないが、もともと傲慢で邪悪なロックスにどれほどの効果をもたらすのか興味はあった。
ウソップにペローナのネガティブ攻撃が効かなかったように、生来邪悪なロックスに悪魔化の変化などあるものか… というささやかな期待もあったが、それは地が邪悪だから…とかではなく、イム様の狙いを悟ったロックスは「何が何でも操られてなるものか」という精神力の強さで、黒転支配に抵抗をしてみせた。
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が、抵抗も虚しくその精神は悪魔の力に乗っ取られてしまう。
とまどうカイドウとリンリンをぶっ飛ばし、悪魔化して身体がひと回り大きくなり膂力も開放されたロックスに、互角の立ち回りを見せたのはニューゲート。
この時点で、後の“四皇”では頭ひとつ抜けた強さだったようだ。
だが、変様したとて縁あるロックスを倒すつもりはおそらくなく、ロックスが何を目的にどこへ向かうのかも分からないニューゲートには、身体を張って止めるほどの義理もなかった。
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かくしてエリスとティーチに追いついたロックスがふたりを襲う。
ロックスの変わり果てた姿を見たエリスは即座に状況を把握。
本来デービー一族ではないエリスだが、おそらくロックスから聞いていたのであろう、デービー一族と“その敵”の因縁について、またロックスがこの先何をするつもりだったかを知っていたようだ。
「まだ早かった」とは、たとえばデービーの復権、またはイム様への復讐や政権の奪取… それが何だったかはもう分からなくなりつつあるが、ロックスが目指したものがまだ道半ばだったことを指しているのだろう。
それにはふたつの「悪魔の実」とエルバフの協力、そして「大槌船団ガレイラ」の発見が必須であり、それらはいずれも未だ得ることができていなかった。
エリスは2年間ゴッドバレーに身を寄せ、ロックスの肉親をはじめとするデービー一族に世話になり共に暮らした。彼らが身分を隠してひっそりと暮らさねばならない理由などは聞かされただろうが、その古き因縁に決着をつけるためにロックスが目論んでいることは、おそらくロックス本人の口以外から聞くことはなかっただろう。
すなわちロックスとエリスは真に信頼しあい、愛しあっていたのだ。
ま、こうなってくるとティーチにその話を聞かせられる人間がエリスしかいないので、エリスはすべて知っている人物として設定されたという制作上の事情もあるのかもしれない。
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生きるために海へ逃げようとしたエリスの向かう先には、軍艦が脱走者を逃がすまいと網を張り、エリスたちに向かって大砲を撃ってきた。それを“あわや”というところで救ったのが…
くま
「この能力で一人でも多くの人を救いたい」
能力を手に入れるなり他人を助けまくっていたくまがバックレるまさに直前の、この島での最後の仕事だった。
いったいどこへ飛ばしたのか、この頃のくまは世界中を旅する前なので、かつて知ったるソルベ王国以外に座標の分かる島などなかったはず。適当に飛ばしたのであれば、逃がした奴隷や現地民が海に落ちる可能性もあるので、くまがこのとき救ったとされる500人以上の人々は、全員ソルベ王国に飛ばされたと考えるべきだろう。
ということは、エリスとティーチもソルベ王国に居たことがあるということだ。
ゴッドバレー事件の顛末は公にならなかったので、かすかな望みを頼りにルルシア王国へすぐ渡ったかもしれないけどな。
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だが…
軍艦の砲撃とともに「デービーの血」の気配が消失したことを、イム様が「死んだ」と誤認してくれたなら幸いだ。
イム様の「……」ってのは、逃げたことに気づいたけど瞬時に頭を切り替えて、現状での最優先事項を命令しなおしたって可能性も捨てきれないけどな。
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事件の隠蔽を図るため、島に残存する(海軍艦に避難していない)人間をすべて殺すよう命じられたロックス。
イム様に命じられるまま、仲間(手下?)たちにも何の躊躇もなく剣を振るうロックスだったが、とんでもない覇気を込めた呼びかけにまんまとおびき寄せられた。
呼びかけたのはガープとロジャー。
ふたりは決して共謀したのではなく、ガープは逃げ遅れた一般人(現地民も)を殺させないため、ロジャーは仲間を安全に船まで逃がすため。
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そのときふたりの眉間にニュータイプフラッシュが「ティキィィン!」または「ティロリロリン!」と閃き、脳裏にアムロの声が・・・(嘘
完全にイム様の傀儡となり下がっていたロックスの精神が、先程のガープ・ロジャー両名による強烈な覇気で、わずかばかり目を覚ましたのだろう。
話すこともままならないが、その魂の叫びがふたりに届いた。
「頼む… おれを殺してくれ…!!」
その声を、万物の声を聞けるロジャーは確かに聞いた。ガープに同じように聞こえていたかは分からない。
イム様のことをよく知っているロックスがそう願うということは、この黒転支配から元に戻る術はないと思っていいだろう。(ドリブロもそうなのか…
「約束」などの詳細は明らかではないが、イム様を滅することを目的(たぶん)とする自分の肉体がイム様にいいように操られ、あまつさえ愛する妻と息子を危険に晒すことはできない。
それを止めるには死ぬしかないが、自殺もできないとなれば、以前よりも強くなっている今の自分を殺せるかもしれない強者がふたり揃ったこの機会を逃がせない。
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展開は海軍の一部に伝承されている通りになりつつある・・・
さぁロックス、一族の未来をかけた最後の戦いは「負けること」で最悪を回避できる。
ガープは、そしてロジャーはどうするのか!!
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さて、今回のサブタイトルは「デービーの血」。
黒転支配に渾身で抗うロックスと、サターン聖の姿を借りたイム様が、わずかばかりの問答をする。イム様は珍しく目を釣り上げて感情的になっているが、その内容は相変わらず重要な部分がボヤかされたままだ。
ロックスは云う
「デービー・D・ジョーンズ」こそが、かつての“世界の王”の名だ!
“デービー”の意志が受け継がれ、いつか「約束」を果たしに来ることを恐れているのだろう?
“デービー・D・ジョーンズ”と“ジョイボーイ”どっちが恐い!?
「デービーの血」だといっても、実際ジョーンズ以来の猛者だと思われるロックスがこのザマである。
ロックスさえ死ねば、それに比肩する脅威など二度と現れることはないと、イム様は思いたかったのだろうな。数十年後にジョイボーイの再来が顕現するなんて、このときには思いもしなかったのだろう。
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また、イム様は云わなくていいことまで云ったね。
巨人族を手なづけるかつてない好機が訪れていると。
ハラルドを「操り易い王」と云ったのは、黒転支配などの直接的な方法を取らずとも、彼の迷いに条件と選択肢を与えれば簡単に誘導できるという意味だろう。
ハラルドの死の真相と、ロキの真意も近々明らかになりそうだ。

