混沌極まりない「ゴッドバレー事件」の結末とは・・・
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“魔”の眷属と化したロックスに対し、ロジャーとガープふたりの捨て身の覇気をぶつけることで、どうやらロックスに取り憑いた“魔”を祓うことができたらしい。
全精力を使い果たしたふたりは意識を失っており、なんとか正気を取り戻したロックスも言葉を発するどころか指一本動かすこともままならない。
事態の収束にやってきたガーリング聖たち“神の騎士団”が迫り、しかしながらロックスは、“魔”を祓い人として死ぬことができたことをロジャーとガープに感謝しながら
息の根を止められた。
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ロジャーとガープは、駆けつけたレイリーとギャバンに助けられたが、あの状況である…
おそらくロックスがとどめを刺されたのとほぼ同時にレイリー・ギャバンは現地に到着、ガーリング聖がロックスに関わっているほんの一瞬の間にソマーズ聖とマッフィー宮をそれぞれぶちのめし、ふたりを救出したものと考える。この際、ソマーズに相対したのがギャバンだったのではないかな。
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ロックスとロジャー・ガープのとんでもない覇気の余波を受けたか、ゴッドバレーという島は物理的に崩壊、海へ沈む。
救い出したガープをどうやって海軍に引き渡したのか知る由もないが、ロジャー海賊団の船はダッシュで逃亡。この場に居合わせた者たちもそれぞれ逃げのび、新たな人生を歩んでいく。
こうしてたくさんの禍根を残しながらも、「ゴッドバレー事件」は深く掘り下げて語られることもなく忘れ去られた。
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世間的には「ガープ中将がロックス海賊団を壊滅させた」かのように報じられ、これよりガープは海軍の英雄と呼ばれるようになってゆくのだが、この報道にもっとも憤慨したのは他ならぬガープその人であった。
後に海軍元帥に就任するセンゴクは若いながらに達観しており、ガープには「昇進バカ」と呼ばれている。気に入らないことを思い通りに執り行うには偉くならなければならない、と「踊る大捜査線」の室井管理官みたいなことを考えているらしい。
一方でガープは、現場でなければできないことがあると考えているようで、昇進をことごとく断り続けているのも、天竜人の直属になってしまうことがイヤだという個人的な理由もあれど、それ以上に、低い場所で弱きもの(それが海兵であれ市民であれ)を守るという自らに課した死命に血道をあげているのである。
957話で海兵たちにセンゴクが語った「ゴッドバレー事件の真相」とは、まるで「真相」などではなく、現役の海兵に聞かせられる部分のみの要約ということになる。
まったく、現役を退き権力を手放してなお「見て見ぬフリ」を通すとはセンゴクもいい面の皮だわ。いや、元帥経験者というだけで重大な守秘義務が課せられるのだろうけど、天竜人の非道の現実を知らない海兵を、今も現場で守ろうとしているガープの前で、あんた同じこと云えんの?
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ところでこの提灯記事を書いたのはモルガンズだという。
モルガンズの経営する「世界経済新聞」は、ゴッドバレー事件の発端となる“人狩り”がはじまろうかという時、まだ「ガキが作った地方紙」の扱いだった。ところが事件が収束してロジャーやガープがある程度回復した頃には、この事件を世界中に知らせる役目を担っている。このわずか数日にいったい何があったのか。
きっとこのときの交渉がきっかけとなり、ジャーナリズムを名乗りながら金で転び、公正でも公平でもないモルガンズの野心と胆力が「利用価値あり」と世界政府に判断されたのだろうな。
ひょっとすると、海軍プロパガンダの一策として「海の戦士ソラ」を連載しようと持ちかけたのもモルガンズで、その企画力も高く評価され、より政府御用達として重用されるようになってゆく… とかなのかもしれない。
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さて、ゴッドバレー事件の後、ガープ以上に荒れていたのがハラルドである。
いまだに人間に略奪を働き、恐怖を与える不届きな巨人族に対し怒りが収まらなかったのだ。
エルバフを、ひいては全巨人族を平和的に世界秩序の輪に入れてもらえるよう、ハラルドがどれだけ必死で務めようとも、巨人族の負のイメージをばら撒く輩が後を絶たない。
一族の未来のために、助けを乞うた親友ロックスを見捨てたことに後悔はなくとも、その結果ロックスの死が世界中で喜ばれるように報道されると、その小さくない一因が自らにあることを責めずにはいられない。もう、戻って別のルートを進むことは許されないと感じていた。
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どうにも進退窮まったハラルドはマリンフォードに乗り込み、
角を自ら折って、その覚悟を示した。
罪を償うチャンスを貰えるなら、私は奴隷にでもなる!!!
だがそれは悪手ではないのだろうか・・・ イム様の目が怪しく光る・・・(光ってないけど
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余談だが:
上官の命令を無視して行動しただけに収まらず、一般人をゴッドバレーから救出するために海軍艦をジャックしたドラゴンは勾留されていたが、父:ガープに悪態をつくだけついて除隊した。それをガープは良しとして多くを語ることはなかった。
しかし天竜人が嬉々として“人狩り”に興じ、それを海軍がバックアップしていた事実を知ってしまったドラゴンを、政府や海軍がただ放免するなど普通では考えられない。
それが許されるのが、海軍におけるガープの力といえるのかもしれない。もしかすると、提灯記事どおりの「海軍の英雄」を演じてやるからと、上部に交換条件を出したのかもしれないね。
感情が高ぶっているドラゴンはそんなことにも気づかず、ただ政府や海軍への不信をつのらせ、革命家への道を歩んでいくわけだが、ガープとの関係がここで絶たれたかというと、必ずしもそうではない。
ルフィをローグタウンで見送った話をガープにしていることから、世間話をするくらいの関係性は保たれていたはずだし、そもそも、ここで完全に袂を分かっていたらドラゴンの息子:ルフィをガープが育てる(鍛える?)こともなかったんだろうしな。
更にいうなら、昔の革命軍には動物の被り物してる人が大勢いたので、革命軍ではそれがスタンダードファッションで、ガープ初登場時の犬の被り物はドラゴンがプレゼントしたものじゃないか? とか考えてたこともあったんだよなぁ。
