宇宙戦艦ヤマト2199
西崎義展の没前後から、たたみかけるように
新作&リメイクのラッシュが続くヤマト
ややこしかった権利の問題がひとまずの落とし処に落ち着き
新作を作りやすくなった時期だったのだろうか
そんな新作ラッシュを目にすることなく
鬼籍に入った西崎氏の無念は如何ばかりか。
1970年代
世は勧善懲悪のロボットヒーローが全盛
そんな折に、人類愛や犠牲の美徳、男のロマン─
太平洋戦争の記憶もまだ薄れ得ぬ時代にあって
地球を救う最後の望みが日本の艦
僕たちはリアルタイムにその作品をその時代に観てきたので
今観てもおもしろいが、
描写のいたるところには時代錯誤な表現が散見され
はっきりいって古臭い作品であることは否定できないヤマト。
それが、今風の世界情勢を背景に
今風の若者たちが旅立つストーリーに改変されている
にもかかわらず
なんと、紛うことなき「ヤマト」の世界がここにあった。
第1作から数十年、
数多く作られた続編・リメイク・メディアミックスのどれよりも
第1作へのリスペクトを非常に感じる会心の出来になっている。
僕は、監督が出渕裕と聞いた時点で
実はあまり期待していなかったのだが
ここまでしっかり、ちゃんとヤマトに仕上げられると
もう脱帽するしかない。
ていうか、謝罪する。ごめんよブッちゃん。
まず感心するのは旧作で疎かにされていたと思しき設定や描写が
新たに設定し直され、説得力を増している点。
第1作から40年近くの時を経て実際に明らかになった事柄として
14万8000光年のかなたの大マゼラン青雲は
16万8000光年のかなたの大マゼラン銀河 に改められ
現実には大きくふたつに裂壊して沈んでいる戦艦大和を改修したのではなく
戦艦大和の残骸に偽装して建造されたことに変更された。
地球防衛軍は国連宇宙軍とされ
ヤマト発進の危機に電力供給するのが精一杯である世界各国の
ヤマトに依存するよりない困窮事情が語られた。
また、設計図入手からヤマト完成が早すぎるという指摘を
スターシャの使いを二人にし、サーシャの1年前に
末の妹ユリーシャをすでに使わしていたことに変更。
さらにそこに絡めて、ヤマトに積み込まれた謎のカプセルと
かつて松本零士が可能性だけほのめかしていた
森雪=イスカンダル人の伏線を、ここにきて活かしてきた。
冒頭、沖田のキリシマ率いる第一艦隊が全滅した海戦は
戦力差を顧みない無意味な犬死作戦に見えたのを
イスカンダルからの使いを確実に迎えるための陽動作戦だったことに改変
物語序盤で登場するガミラス冥王星前線基地の
シュルツとガンツの肌が青くないことの説明にセリフを追加
植民地からの下級移民で立場が低いという設定は確か元々あったんだよね。
(デスラーも初めは肌色だったことは、まあ触れるな
などなど、説得力を持たせるために追加されたゴタクが
わかりやすく、わざとらしくなく、実に丁度良い。
上下の概念が本来無いはずの宇宙において
轟沈した艦艇が下に落ちていくなど、
もともとヤマトには不自然な描写はあれど
そういうことも含めて、
艦艇の動きは旧大戦時を彷彿とさせるような
重々しいアナログな動きをしてこそヤマトだと思うので
新たにCGで描かれた戦艦の動きが軽すぎるのが残念なことと
冒頭の冥王星陽動作戦において
通用しないことがわかっているレーザー砲撃をやめて、実体弾を何故使わないのか
など、締めきれていない描写もあるにはあるが
概ね満足だ(えらそうだな。
原盤が劣化して使えず、スコアも失われ
作曲した宮川泰もすでに故人となってしまった劇伴は
宮川の実子:宮川彬良が担当し
超絶なる耳コピ能力で当時のサントラを再現している。
ここまで第1作を意識した作りになっていると
イメージの差違として如何ともしがたいのはCVだが
オリジナルキャストにはすでに鬼籍に入られた方も居るし
こればかりは20歳そこそこの若い活力を演じるためには
今の声優でないとダメだろうから、一新されるのはかまわない。
当てられたキャストにも概ね不満はないが
なんとなく、なんとなくだが、アナライザーだけは
オリジナルの緒方賢一に演じてもらいたかった気がしないでもない。
キャスト発表で、
島大介のCVが鈴村健一となっているのには違和感を感じたが
実際に見てみると、島は旧作のような生真面目で融通の利かない男ではなく
沖縄出身のちょっとチャラいノリの男だったので
じゃあ鈴村でいいやと、妙に納得した。
この島の大きなキャラ改変になぜだか不満はない。
旧作の「さらば〜」や「〜永遠に」でヤマト艦長を務めた土方と山南が
沖田の戦友・部下として登場することで、
沖田まわりの、ひいては古代や島をも巡る人間関係を重厚にしているが
顧みるとこれは
「さらば〜」以降の続編を作るつもりは毛頭無いことを意味しており
その潔さと、本作に全てを詰め込み、
掛ける意気込みが伝わってくるのはすばらしい。
そして
設定云々の改変に、24時間常に厳戒態勢のヤマトにおいて
勤務シフトは綿密に管理されて然るべきでありながら
森雪が複数の役職を兼任するのは不自然かつ、非合理的ではないか
というのがあり、
旧作で森雪が担当していた職務をカバーする女性乗務員が
数名設定された。
ま、そうでなくとも、今風に作り直すなら
女性クルーが雪ひとりなんてことになるハズはないので
ここは上手く整合性がとれているとも言える。
そんな中
森雪の役職とは関係なく新たに設定された謎のキャラクターがいる。
主計課に配属されながらも兄の遺志を継ぎパイロットにコンバートする
山本玲である。
航空隊の山本といえば、旧作では加藤三郎と並ぶエース。
ちなみに安永航一郎は
こんな風に茶化しており、これはこれで爆笑させてもらった。
キムタク主演の実写版では、相原や佐渡先生が女性だったり
森雪がエースパイロットだったりという改変があったが
第1作を異常にリスペクトする本作において
単に山本を女性化しただけのキャラが登場するとは考えにくい。
玲の死んだ兄:明生と旧作の山本との関係性もわからないし
深いエピソードがあるのかどうかは今のところ不明である。
ここだけは、今のところブチ監督の意図を計り知ることができないので
今後の展開に期待する。
第1作を今の考証、今の技術でリメイクする「宇宙戦艦ヤマト2199」
旧作で不自然だった展開や物語の繋がりを紡ぎ直し
時間の都合や技術的な問題で
描写しきれなかったエピソードを追加することに期待するならば
森雪が隠している謎もさることながら
「果たして真田さんは反乱を起こすか」
「守はハーロックになるのか」
この2点がもっとも気になるところなのである。
全26話。今後に期待大だ。
松本零士の関わり方(度合いを考えても
まぁ、ハーロックはないよな・・・なくていいよ。
ありませんように・・・
Comment
細かいセリフなんかの再現性は決して高くありません。
ましてやマッドテープ的展開は期待しちゃダメです。
逃げよう…
はあるのか?
印象的な「もう一度点検せよ」のシーンが無くなってましたね。
その代わりに、起動のために諸外国がなけなしの電力を提供してくれ、名実共に地球の命運をかけた艦として産まれた、というシーンになったんでしょうね。
旧作をオンタイムで見てました。
2199の予告からゾクゾクしてました。
第一話みて感動してDVD発売日に速攻で買いに走りました。
ただ、第二話を見て思ったのは、旧作のような大型ミサイルが接近している最中の、あのなかなかうまくいかないエンジン始動のドキドキ感がなかったのが、ちょっと気になりました。
あまりにもすんなり浮かびあがったんで。
でもこの後にある、ワープ、波動法、反射衛星砲、7色星団の戦いとか、とにかくどういう風に再現されるか超期待してます。
もちろんDVDは買いますよ。