ONEPIECE 1057「終幕」
今だに光月おでんになりたいヤマトは、おでんの人生をなぞるため、まずはワノ国への見聞を広めることから始めることにした。だが、それを決意したのはつい今しがた。
一緒に行かないことはすでに決め、その意向はルフィたちにも伝えてあるというので、何から始めるかを「今」決めたということなのだろう。
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ヤマトとはそこまで込み入った話をしておきながら、自分たちに別れの挨拶すらないことが尚のこと許せなくなったモモの助は、怒り心頭ながらも、これまでの旅路で深めたルフィとの絆を思い出す。
ちなみにモモの助が飛ばないのは、おそらくまだ飛ぶのが怖いから。
カイドウ戦のときはルフィに焚き付けられたし、国家滅亡の危機を回避するのに必死で高所の怖さを気にする余裕すらなかったものの、いざ冷静になってみるとやっぱり怖いということだろう。緑牛戦でも飛んでなかったくらいだからな。
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遠慮のない言葉でケンカもした。道を示してくれた。対等に扱ってくれた。ピンチを勇気づけてくれた。信頼してくれた。そして、約束通りカイドウを倒しワノ国を救ってくれた。
平和が戻り、自分が今“将軍”でいられるのは、ルフィたちのおかげ。ワノ国復興と開国に向けた重責に今にも押しつぶされそうな8歳児は、突然訪れた別れがただただ寂しかったのだ。
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ロジャーと別れたときのおでんと同じく涙もろいワノ国男児。
「男の別れだ。誰も涙など流さなかった」と、おでんはその実際を文章で偽ることができたが、8歳児の感情の揺れの現実を隠すことはできない。
ルフィもまた、モモの助が心情として寂しいことや心細いことは分かっている。
カイドウがいないことを聞きつけた有象無象が、キリがなく集まってくるかもしれない。やるべきことが山積のワノ国に少しでも安寧を与えたい。
そんなルフィからの餞がこれ。
四皇となった自分の“権威”を利用することをルフィが言い出すとは思えないので、ナミかウソップあたりの提案ではないかと思うが、出来の悪い弟が心配になるエースやサボの気持ちが少しは理解できたかもしれない。
政府も手出しを躊躇する天然の要害とはいえ、再生未熟なワノ国の当面の行く末が、ルフィも心配なのだ。
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魚人島のときは「おれのナワバリにする」と表現したが、ワノ国は「おれの仲間」。思い入れの深さが違う。
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海賊やりたくなったらいつでも迎えに来る。弱虫は乗せねェぞ。
とは、離れていても自分たちがいつでもそばにいることを忘れるな。だが人も国も強くなることを怠るな。というルフィなりの激励の言葉。
もし国家運営がうまく行かなくても最悪の場合の進む道は用意しといてやる、という意味も含んでいるかもしれない。
ヤマトは、ルフィに名前もちゃんと覚えてもらえたし、ワノ国漫遊の次に望めば海に出る手段も確保できた。当面のワノ国のことを託されてもいるようだ。
モモの助は、ルフィたちの友情とこれまでの恩義に報いるためにも、男として将軍として父おでんを超えることを心に誓うだけでなく、それを錦えもんの前で言葉にした。よい侍になるのだな。
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ところで、
平和になったワノ国では庶民の暮らしも徐々に充実し、寄席などの娯楽も楽しめるようになった。
1052話で、これまで悪意をもって捻じ曲げられてきた歴史教育を、子どもたちに正しく教え直す教師として登場した講談師が、舞台からあらためて熱く語る「光月家のお家再興血風録」。
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モモの助が連れてきた賊党たちの手によって「龍王カイドウ」「“妖怪”大花魁」が撃退された様子もそこそこに、物語のクライマックスはオロチの最期へ。
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斬り落とされた最後ひとつの首が伝える恨み節
しかし、われらが日和姫は一歩も退かずに引導の見得を切る。
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さて、実はこの表現が一部で問題視されているという。
オロチが復讐に取り憑かれて凶行に至ったのは、ただ“黒炭”姓だったというだけで幼少期に差別的迫害を受けたからであり、死にゆくオロチに“黒炭”であることをあらためて差別する結末と、それに熱狂する庶民、そしてそれを語る講談師が教育者であることが、ワノ国の差別体質がなんら変化・進歩していないことを表しており、コンプラ的に問題がある(意訳… というのである。
う〜ん、言いたいことは分からないでもない。
まず、差別に至る原因は、オロチの祖父が将軍の跡取り候補をことごとく暗殺した咎である。
前にも書いたことがあるが、
社会の法整備が未発達であれば、犯罪行為と罰則を体系づけることは難しい。
現代であれば、倫理や道徳に鑑みて関係個人の尊厳が守られもしようが、公に「決闘」や「仇討ち」が認められているような社会において、絶対権力者に仇なす不届き者は、禍根を断つためと、同様の考えを再発させない見せしめの意味も込めて、一族郎党が数代先まで処罰されるのはある意味仕方のないことだ。
ワノ国は800年近く鎖国をしてきたため、先進国の合理的で理性的なものの考え方を知らない。ある意味、未開で野蛮なガラパゴス進化を遂げてきた特殊な国だ。
現代のモラルやコンプライアンス意識に照らし合わせてはいけない。これはそういう文化形態の社会において起きた事案だということだ。
教育として娯楽として、またはあらゆる場面で、光月家の正当性と英雄性を強調することは、今のワノ国にとって重要なことのひとつなのだ。そう、プロパガンダと云っても差し支えない。
また、日和が父おでんの決め台詞に韻を踏んで、こんな大見得を本当に切ったかどうかも疑わしい。鼻水垂らしてるところが描かれているから、こういうやり取りがあったことは事実なのだと思う(美談なら鼻水は描写しないでしょ)が、過分に脚色されているはずである。
とはいえ、こんな差別的表現を“良し”として長かったシリーズを締めくくるのは、今どきのマンガ作品としてどうなの?という問題はあるかもしれない。
マンガに没頭しているときにそういう事言われると現実に引き戻されるから嫌だし、そんな外野の意見にビクビクしながら作品を作ってると想像するのも醒める話だ。とりわけコンプラに煩い(らしい)海外の読者から指摘が多いと聞いた。
僕的には クソくらえ である。
まぁ・・・集英社が“良し”と判断したんだから問題ないでしょうよ。
単行本でどうなるのか、ちょっと様子を見ましょうかね。
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なにはともあれ
Comment
BIE(管理人)さんへ
投稿日時が2022年8月31日 7:26 PMのコメントがあまりにも過激ですが、削除はされないのでしょうか?
あの手のコメントを放っておくとブログの信用に関わり、多少なりBIEさんの広告収入にも影響が出るのでは
気になったのでコメント書いてみました。
追伸 『人造人間16号』の記事がとてもおもしろかったです。個人的には無茶苦茶強かった17より16号好きだったから死んだとき心底ショック受けたの思い出した。
ご意見ありがとうございます。
頂いたコメントは、否定的なものも過激なものも、基本的にすべて受け入れることにしています。
自分が「言いたいことはすべて書く」ことをモットーとしているので、それに対するご意見を承認しなかったり削除したりはするべきではないと考えているからです。
今後とも温かい目で見守っていただけると幸いです。
「人造人間16号」については、ドラゴンボール初見の頃からずっと考えてきたことですが、よそで同じような考察を見たことがありません。結果、他にないいい考察になったと自分でも思ってます。気に入っていただけて嬉しいです。
自分は何もしていないのに国民から迫害を受けたオロチと同じように、モモの助や日和、お玉やおトコといった若い世代も特に黒炭迫害はしてないのにオロチの復讐の対象にされてしまったんですよね。
そりゃ恨まれるでしょうよ…。
犯罪者の子孫に人権なんか要らないと思うし、緑牛の言うように差別は安堵であり必要なことだと思うので、私は黒炭差別や迫害、尾田先生には大賛成ですね!
むしろこれを問題視しているようなクソくらえな連中からも人権は取り上げるべきだと私も思いますね!素晴らしい記事をありがとうございます!
個人的には差別発言云々よりも、
おトコやえびす町の住人達が抱えていたスマイルの問題が解決される描写なく終わってしまった事の方がモヤモヤ感が残るかな…
まぁミンク族にはミヤギやトリスタンのような医療班も居ますから、
最終的には彼らが何とかするのかも知れませんね…
黒炭家の顛末についてはおだっちなりの皮肉というか、社会風刺なのではないかなぁと思っています。現代では個人は守られるかもしれませんが、ここはワノ国、そう簡単に歴史は修正されないというか、繰り返す可能性があるんだぞ、少年漫画であってもそれを伝えるというメッセージなのかなと。
ただ黒炭家の子孫がほのめかされない(幼少オロチのような存在が描かれない)のでこのまま上手くいくかもしれないという選択肢も用意されているという。
黒炭の子孫が生き残ってる可能性は示唆されてますね。
そんくらいで海外の読者がキレてる…まあどこの層のどこの切り取り読者か分かりそうだけどしょうもねえ怒りだな、飲み込んどけ。って思いますね。そもそもコンプラだのなんだの、文句言ってる奴らが守ってねえのにどの口が言ってんだって話ですね。コンプラ云々言う前にてめえらがコンプラ守れってな。
コンプラだの、ポリコレだの、めんどくさい世の中ですね。
ワノ国の差別体質は…どうなんでしょうねぇ。
まぁ20年以上の支配から解放されたばかりで民衆は調子に乗ることもあるだろうし、オロチが将軍をやったことでもし昔に黒炭家が将軍になっていたらどうなっていたか、そして黒炭家の危険性を遠回しに証明してしまったともとれるし…。
でも、カイドウの血を引くヤマトは受け入れられてるし…。
そういえばヤマトは船に乗りませんでしたね。理由は納得出来るものでしたけど、緑牛との一件で世間知らずを思い知らされで少し考えたんですかね?
スキヤキが生まれずに仮に黒炭家の跡取り(オロチの父親か叔父?)が将軍になった世界線では、本当に闇落ちしなかったのでしょうか。
ライバルを暗殺しようという発想がそもそも異常ですよねぇ
ドレークやカイドウの幹部のその後は、扉絵シリーズで描かれるのかな?
何にしても「終幕」して良かった(^_^)
あと、来週もお休みなしで読めるのも
結局、カイドウの幹部たちは海軍に捕らえられたんでしょうか。
彼らはもう出てこない気がしますが、ドレークは気になりますね
とうとうワノ国編が終幕…次からがいよいよ最終章の始まりって感じがしますね。
これから麦わらの一味がどういう形でイムの存在を知っていくのかも楽しみです。
個人的に回収してほしいのはエネル絡みの伏線ですかね。
「宇宙海賊」なんてのもいましたが、案外こいつらがかなり重要なファクターになっていくのかも…
エネルのこともオダッチ答えてくれませんでしたねェ