くまの拳はサターン聖の顔面を捉え、サターン聖をはるか後方へぶっ飛ばした。
サターン聖は、革命軍がマリージョアからくまを連れ去ったのち、くまに装備されている(はずの)「自爆スイッチ」を押したのだから、くまが今ここにいることが“あり得ない”と考えていたらしいのだが、そのせいで油断しただけ…とは僕には思えない。
・・・これについては後ほど少し語ろうか。
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しかし、実際はくまに「自爆スイッチ」はつけられていなかった。
「特攻兵器」として利用するなど、くまの「死」すら穢されかねない悪魔の命令に反発したベガパンクは、「完全停止スイッチ」をもってサターン聖の要求を受け流したのである。
「完全停止」すれば心臓も止まるのかと思いきや、ベガパンクによると“植物状態”になるとのことなので、生命は維持されたまま、機械化された部分について動力や情報伝達の一切が遮断されるということなのだろう。ま、心臓が止まるスイッチなら周囲に与える影響は違っても「自爆」するのと大差ないからな。
ところが、その「完全停止スイッチ」を押されたくまが今ここにいる。
ボニーを守るために駆けつけ、彼らにとってすべての悪因であるサターン聖を怒涛の勢いで殴りつけた。
このことについて「バッカニア族」の特性とやらを云々しているベガパンクだが、マリージョアであれだけ刺されたり殴られたりされていたのだし、革命軍では修理も試みられたのだから、「完全停止スイッチ」が解除されたとか故障したとか云う可能性には思い至らないんだろうか。自分が施した改造手術によほどの自信を持っているということなのかな…。
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ようやく叶った、くまとボニーの再会。
しかしボニーがどれだけ父への感謝と愛情を言葉にしても、くまは静止して動かない。
くまはサターン聖をぶっ飛ばしたあと、ボニーを優しく抱きしめて静止した。「完全停止」が“今”機能したとでも云うように・・・。
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そうこうしているうちにサターン聖が復活。
くまに殴られビルに叩きつけられ、さらに倒壊したビルの下敷きになったサターン聖はそれなりのダメージ、右腕と角を片方失っていたが、それもほどなく再生した。
右顔面から出血していたが、血で汚れた顎ひげの血痕も気づけば消えている。
傷が塞がることや欠損部位が再生するのは異常なまでの「超回復」能力などで説明できなくもない。しかしボニーが刺したときもそうだったが、血痕まで消えるのは「回復」ではない。時間を巻き戻すか、もしくは事象を「無かったことにする」ぐらいできないと無理だ。
ただ、このコマを見た限りでは
欠損部分の再生が、時間を巻き戻しているとか「無かったことにした」ようには見えない。例えるなら「錬金術」で構築しなおしたみたいだ。
魔法陣をくぐって現れたことからも、異次元や亜空間を行き来したり物質の取り出しができるように思えなくもない。
そう考えると、この巨大な蜘蛛のような姿自体、サターン聖の本体なのかどうかさえ怪しくなってくる。 ま、妄想もきりが無いのでこの辺にしておくか。
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サターン聖がぶっ飛ばされた瞬間から、サンジたちは動けるようになっている。ボニーとくまを確保し逃げることが第一目的だが、黄猿もピヨり状態を脱しふたたび襲いかかる。
ルフィはいつの間にか行方不明。
黄猿は“心”に大きな揺らぎが見えるものの、自分の立ち位置を組織や任務に委ねるタチなので、シゴトに忠実なのは変わらないだろう。
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ところで、くまへの攻撃を邪魔し脱出を図る麦わらの一味とベガパンクを、サターン聖はふたたび拘束しようとはしない。
登場時は何やら禍々しい力を発していたが、消耗が激しいため多用できないのかもしれないし、殴られたショックで他者を拘束する機能を失った可能性もゼロではないが、おそらくそうではない。
五老星が地上に降臨(wするのは通常ありえないことだが、直接姿を現したのは敵対するパシフィスタを黙らせるため。それ以外ありえない。
サターン聖の恐ろしい姿や気配は十分に相手を威圧する効果があるし、相手を拘束できるし、ダメージを負っても再生できる。おそらく戦っても強いはずだ。しかし、それらを戦場で発揮するために最前戦に出てきたわけではない。
ボニーやベガパンクに、サターン聖の側から問いただしたいことがあったわけでもないだろう。
逆にボニーやベガパンクからの質問に答えさせることで、読者がこれまで謎だったことに解を与える役目は(オダッチ的な都合として)あるかもしれないが、サターン聖としてこの場にこれ以上居続けるメリットは何もないのだ。
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では、どうするか・・・ってことで
満を持しての「バスターコール」だ。
武力制圧はあとはもうお前らでやれや。パシフィスタもこちらに付いたし、全員でかかればできるやろ・・・とな。
だがちょっと待て。
マザーフレイムを造り出すための「融合炉パワープラント」「パンクレコード」「欲ヨーク」は無傷で回収するはずなのでは・・・?
バスターコールが発動された以上、ここから先は全海軍艦艇による砲撃が始まる。ヨークの救出のみなら実力者数人が砲弾をかいくぐりながらできるかもしれない。
しかしバスターコールの主標的であるベガパンク、くま、そしてルフィも、この島から脱出するためにはサニー号があるラボフェーズに登ってくるわけで、「パンクレコード」も「融合炉」も研究層にあるはずだ。
エッグヘッドの大地にそびえる未来都市を破壊し尽くしたところで、研究層へ向かう経路が断たれてしまうだけかもしれないし、支えを失った研究層がまるごと落ちてくるなら「融合炉」「パンクレコード」の保全が担保できない。じゃあ、いったいどこを砲撃すればいいのか。
ってことは、まさか全てを諦めた・・・?
「融合炉」「パンクレコード」「ヨーク」は、この際どれも不要、それより不穏分子の抹殺が重要と判断したということなのかもしれない。
さて、どうする海軍。どうするサターン聖。
そしてルフィは今どこに・・・?
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では上で書いた余談と妄想を少し:
前回、サターン聖は「くま登場」の一報を信じず、いざ目の前に現れ殴りかかろうとするくまに冷や汗を垂らすという珍しい姿を見せた。
ベガパンクにつけさせたくまの「自爆スイッチ」をその手で作動させたのだから、くまがもうこの世にいるはずがないと思い込んでいたらしい。そう思い込むのは別にいい。
でも、あんたくまに直接会ったことあるじゃん。38年ぶりだけど、政府にとって忌まわしい特殊な種族の気配を忘れるものかね。
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身体を機械化し自我を失ったとはいえ、生体部分も幾分かは残っているだろうし、これがプログラムによる行動ではない以上、何らかの感情なり衝動なり動物的本能なりに突き動かされているであろうくまの接近に気づかず、あろうことか屈辱的な顔面パンチを食らうとは、やはりサターン聖は「見聞色の覇気」が使えないと考えるべきではないだろうか。
覇気には人それぞれ得手不得手があるが、天性の才能が必要な「覇王色」とは異なり「武装色」「見聞色」は鍛えることができる。
「人」を超越した強さを持つサターン聖が「見聞色」を実戦レベルで使えないということは普通に考えてあり得ないが、一方で、五老星が身体を鍛えたり修行する様も想像できない。
なので、サターン聖をはじめとする五老星たちは「特権階級」という意味での「人以上の存在」ではなく、実際に生物学的にも物理的にも、そして歴史的にも「人」以上すなわち「人」ではない生命体である可能性が高くなってきた、と僕は考えている。
どこから来たどういう生き物なのかはまだ想像もつかないが、彼らはもともと次元が違う強さを持っていたため、人間ごときを相手取るうえでそもそも覇気を身につける必要がなかったのだろう。(覇気を修得できない生き物である可能性もあるな)
覇気とはおそらく、とんでもなく強い敵を相手とするために、人が己を研鑽し研ぎ澄ませた成果であって、それをもってしても五老星たちを脅かすほどの戦力とはなり得なかったのだろう。 …なんか五老星が何百年も生きてる前提で書いちゃってるな…
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そこに登場するのが「悪魔の実」だ。
「悪魔の実」の誕生についてはいまだ何も明らかにされてはいないが、光月おでんの妻:トキのエピソードから、800年前にすでに存在していたことはあきらかである。
五老星の変身を模倣したのか、それに対する能力として生み出されたのか、はたまた五老星側から別の意図でもたらされたか、ともあれ人間は「悪魔の実」の能力を手に入れた。
僕は「悪魔の実」を仮面ライダーWの「ガイアメモリ」のような「星の記憶」と考えていて、しかしこの星の森羅万象どんな力をもってしても五老星にはとても敵わなかった。
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ところが「悪魔の実」に“イレギュラー”が登場する。「動物系ゾオン 幻獣種」だ。
「幻獣種」はこの世のどこにも、いつの時代にも存在しない想像上の生物の能力を再現する「悪魔の実」だ。
おとぎ話として、伝説として、畏怖や信仰の対象として語り継がれる、人々の頭の中にある空想の生き物。それらはだいたい見た目のモチーフとなった生物のせいぜい延長上の能力を持つのだが、それが人間以上の超生物を産み出すこととなった。
思ったままに自由に何でもできる「神」を夢想してしまったからだ。
何でもできる神には論理は無用。「だって神だから」「何でもできるんだから」で空想が現実となる。人々に語り継がれてその名を知る者が多くなり、伝説に尾ヒレが付けばつくほどその神は強くなる。
だから世界政府は「ニカ」の伝説と信仰を、その能力を持つ「悪魔の実」を封印したのだ。
Dの一族が「神の天敵」と呼ばれるのは、その辺に関わってくるんだろうね。そのままの意味なのか、それとも逆説的に…なのかは、明かされるときまで分からないけどね。
あぁ… 話が大きく流れちゃったけど、サターン聖は「見聞色の覇気」を使えない。というか使う必要がないくらい桁違いに強いんだろうね・・・という話でした。
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あと、もう一個余談:
ビッグマムの万国トットランドにいない種族が3種ある。
これまでは、キングが生き残りである「ルナーリア族」、過去のやらかしから絶縁状態の「巨人族」、そしてカイドウ・ヤマトの「鬼」だと思っていたんだが、ここに来て「バッカニア族」が出てきた。
マザー・カルメルの理想のために、自分があらゆる種族の中心になりたくて作ったのがトットランドなのだから、未知の種族はすべて招聘し、それが男性なら身をもって子作りするのがビッグ・マムの「ママ」たる所以。
3種以外の種族はすべて自分の子供達の中にいると考えていいだろう。
希少種族の生き残りが仮に女性だった場合は、おそらくペロスやカタクリ辺りに孫を作らせるだろうから、やはり3種を除く全種族がシャーロット家にいると考えられる。
その3種のうちのひとつは「ルナーリア族」で間違いない。
まぁ「巨人族」は家族の契りこそ拒絶したものの国民としては存在する…という可能性もあるし、カイドウの「鬼」がひとつの種族として数えられていない可能性もある。(そもそもカイドウが「鬼」であると言及されたわけではない)
でも、「バッカニア族」はどうかな・・・
政府が警戒する希少種族なんだからママ垂涎の人材のはずだ。
当然、くまが「バッカニア族」である情報をママが知らないはずはない。過去にスカウトしたけど無視されたとか、気になってたけどアプローチする機会がなかったとか、そういう描写・・・どこかで描かれませんかねぇ。