ジョジョの奇妙な冒険 第四部 #16「狩り(ハンティング)に行こう!」
コミックス 35巻04章~08章に相当。
一週間遅れで申し訳ない。
承太郎の衣装が変わった。
「星」ではなく「太陽」と、海洋生物の研究者らしい「イルカ」をあしらったデザインは、ほぼ原作通りだ。
今回は「ネズミ狩り」に出かける承太郎と仗助。
それは試し撃ちだったのか、戯れだったのか、チリ・ペッパー:音石明は「弓と矢」でネズミを射ったという。
理性のない獣だけに、何かが起こる前に、なんとしても捕獲、もしくは退治しなければならない。
相手は野生の獣、すばしっこいネズミだ。捕獲するにも、倒すにも、スタープラチナやクレイジー・Dの攻撃が届く前に逃げられる。
そこで考えられた戦法が
超速で「ベアリング」を飛ばし、遠距離から狙撃するというもの。
精密な動きを得意とするスタープラチナならではの発想だが、仗助のクレイジー・Dも、負けないくらいの精密さを持ってはいる。ただし邪念やプレッシャーに影響されなければ…だ。
ネズミ本来の生態や、個体の特性、痕跡から敵を的確に分析、追跡する承太郎。
本職は海洋生物の専門家らしいが、動物全般に詳しいのか、この「狩り」のために、つぶさに調べてきたか、とにかく穴のない頼もしさだ。
ネズミが根城にしていると思しき家屋で、ネズミに遭遇した仗助。
仗助が第一射でネズミの脇腹を傷つけたから、スタンドも側面を欠損している。
少し余談だが:
例えば、第三部に登場した「皇帝(エンペラー)」のデザインはリボルバーだった。
スタンドは精神で生み出す力なのだから、拳銃の場合オートマチックや、あるいはメカニズムなどよく分からない「空想銃」である方が、装弾数や威力の点で有利となるべきところ、あえてリボルバーだったのは、ホル・ホースが持つ「拳銃」のイメージがリボルバー以外なかったからだ。(細部のデザインはデタラメだったが・・・
「趣味」というか「美学」というか、そこにはホル・ホースの人間性が現れていたはず。
では、このネズミのスタンドはどうか。
ネズミに美学や哲学などあろうはずもないが、高い知性は持っていたらしい。
闘争心と人間への恨み・畏れが具現化したものとして、砲台というのは、極めて攻撃性が高いながら、相手を近付けさせない慎重さと臆病さをも感じさせる。
ネズミという生物の特性をよく表していると、やや強引に考えることもできる…か?
しかし、形状としては、本来もっと生物的なものであるべきで、「撃鉄」らしきパーツまで精密に機能しており、これだけギミックを凝らした「機械」が、獣の精神から作られるというのは、これはもう違和感どころの話ではないのだが
そこのところに唯一突っ込んだ、仗助の
「ネズミにしてはメカっぽい「スタンド」だがよーっ」というセリフがカットされているのは、アニメスタッフは、ここに違和感を覚えなかったということなんだろうか。
音石が射抜いてからの時間的に考えて、すでに繁殖したということはあり得ないそうだが、しかし同じ能力を持ったネズミが、なんと二匹いた。
同じ能力のスタンド使いが二個体存在するのは極めて異例。
これはネズミが人よりも、言うまでもなく文化的に極めて劣っていることや、本能に沿った行動のみを二個体で常に一緒に行ってきたことによる、下等生物であるがゆえの、個性の連動・伝染、群体化が原因と考えられなくもない。
いやぁ、相手が人間じゃない分、余計に色々と妄想できて楽しい・・・
一匹は仗助が倒したが、もう一匹が外へ逃亡。警戒したネズ公は、もはやベアリングが届く距離までふたりを近付けさせはしない。
そこで登場するのは、新兵器
ライフルの実弾。ガチに殺しにきたね、これは珍しい。
これまで人間同士のスタンドバトルでは、例外もあるが基本的には、スタンド能力による真っ向ガチンコバトルだった。それは「正々堂々」とかいう類のものではなく、異能の力を身に付けた者が、その能力が如何にすばらしいか、如何に他人よりも優れているか試して証明したいという衝動、欲求あるいはプライドに起因するだろう。
しかし今回の相手は、拳を交わしても通じる魂など持たず、スタンド使いの矜持”のようなもの”など持つはずもない獣、「力(ストレングス)」のエテ公よりもはるかに下等・・・
承太郎が言うように、この地球上にもはや生きてていい生物ではないのだ。
潜んでいる場所を特定するには、ひとりが囮となり、一発撃たせるしかない。
もしも毒針を食らってしまった場合の治療を考えると仗助を囮にする訳にはいかない。囮になるのは承太郎。
仗助が撃つのだ。
何時如何なる時でも冷静で的確、頼りになる承太郎と比べ、まだまだ半人前で、今回はあたふたとカッコワルイ所ばかりだった仗助が、クールな戦略で魅せた。
必ず見ると思ったよ!体をこっちへ向けて…
冒頭の勘違いデレデレからはじまり、プレッシャーにビビりまくり、お気に入りの靴をうっかり水溜まりに落とし、あげく、ネズミの罠にはまり手を挟まれる。
自分でも「今回マヌケなのは俺だけですかァ?」と認めているが、これらはすべて承太郎が仗助を、信頼に足る戦力と認めるに至る前振りだった。
いざ、肝が据われば頼りになる男、仗助。
「人間が自ら招いた自然からの反乱・自然破壊のツケ」というのは、70年代のSFやアニメによく見られたテーマだ。「進化しすぎたコンピュータの反乱」とか、もう見飽きた気がするので、たまにはこういうのもいい。そういや「異常進化したゴキブリの反乱」ってのがあったな、つい最近・・・
じょうじの奇妙な・・・いや、なんでもない・・・
次回「岸辺露伴の冒険」
上で述べたように、今回の仗助のマヌケっぷりはすべて結末への「ネタ振り」だったわけだが、冒頭「狩り(ハンティング)に行くから一緒に来てくれ」という承太郎の突拍子もないセリフに、「ハント」という言葉から、ナンパをしに行く相棒に誘われたと勘違いした仗助。
これはボケではない。精一杯頭を回転させた結果、「ガールハント」しか連想できなかったのだ。
仗助にとって承太郎は、血縁上は「甥」だが、現実は「頼れるアニキ」。いまいち素性が知れないアニキの私生活を垣間見て仲良くなるチャンスと思ったか、それとも、思春期の異性への淡いあこがれの相談をしようと思ったか、あわよくば、おいしい思いができるとでも思ったか。
ともかく、仗助は承太郎の言葉を一瞬で「そう」理解した。
・・・ちょっと待ってほしい。
仗助が、純愛タイプなのは、ある意味当然だ。
婚外子で苦労した母親や祖父を見て育ち、家族の絆を大切に思っているからだ。
しかし、一方の承太郎は、四部の作中では語られていないが、このときアメリカに妻がいて、すでに除倫が生まれている。単身日本へ来ている承太郎が、ナンパをしに行くとあれば、仗助ならば軽蔑するに違いないのだ。
こんなヌルい反応が返ってくるとは・・・
まぁ、単純に既婚者だと知らないんだろうなぁ・・・読者も知らなかったもんなぁ・・・
おことわり)
アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」 のレビューは
「原作準拠」の検証の目的で、コミックとの比較をするスタンスで書いていましたが
第四部は、三部までほど「原作準拠」に拘っていないようなので、比較はもちろんしつつ、
筆者の勝手な推察や持論を、多めに盛り込んで書いてゆきます。
基本的に、揚げ足取り中心の文章となることはこれまでと変わりないので
ファンの方には、しばしば不愉快な思いをさせることがあると思いますが、
筆者は決して悪意を持ってはいないことをご理解の上読み進めていただけると幸いです。
また、検証・認識の甘さから、的はずれなことを書くかもしれません。
その場合は、遠慮なくご指摘ください。
ご指摘・お叱り・応援、あらゆるご意見を歓迎します。