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ジョジョの奇妙な冒険 第四部 #17「岸辺露伴の冒険」

2017/06/17
 




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コミックス 35巻09~10章、36巻01〜03章に相当。

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街中で岸辺露伴に再会し、驚きとともに、昭和のマンガチックなポーズで身構える康一ww。

露伴は「もう君に危害を加えるわけないだろ?」とサラリと言うが、そう信じてもらえる自信はどこから来るんだ。
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原作では、仗助に酷い目にあわされたのでもう懲りごりだ、と付け加えられているが、アニメではそのセリフがカットされているため、ヘブンズドアーを使いたい衝動はあるが我慢しているのだ、とも考えられず、変人:露伴を信じられる要素がどこにもない。

となると「もう危害を加えるわけがない」=「常識的考え」と、創作者としての興味や好奇心だけで、他人に危害を加えてはならないのように、露伴が考えを改めたことになる。それこそ信じられない。

その後に
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康一には尊敬の念を持ち「気が合いそうだ」と感じていることを告白。

人嫌いの露伴が、気を許せそうな貴重な人物に、危害を加える(嫌われる)ようなことを、自重することにしたのは理解できるが、それを前置きしなければ、同意を得られるはずもない。
しかも、この告白は「それに」から始まっていることからも分かるように、康一に危害を加えない話とは文脈が別だ。

むしろ、こっちが露伴の言いたい本文だろう。
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地図にない道

康一が考えたような「地図の間違い」として切り捨てるのではなくこのちょっとした奇妙な体験に「踏み込みたい」「解明したい」と、露伴の好奇心が、またぞろ鎌首を持ち上げた。
結果として、ただの地図の間違いだったのなら、それはそれでスッキリして良いと考えたのだろう。

一見普通の路地は、地図に載っていない家ばかりが並び、人の気配がまるでない。
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路地を進むと、一度通った場所へ辿り着いてしまったふたり。

ここで、原作では「はてな」と思いながらももう一度ループし、
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怖くなった康一が来た道を駈け戻っても、また同じ場所に来てしまう。
そこではじめて、露伴が「何者かによるスタンド攻撃」を疑いはじめるのだが、随分と省略したなwww

ちなみに
踏みつけられた犬の糞からは、それがつい今しがたひり出されたかのように湯気が立ち上っているが、これは余計だった。
時が止まったかのようなこの路地において、犬の糞だけが時間の経過を感じさせるのであれば、その仕掛けには理由が必要だ。糞は特定の場所をわかりやすくするためのアイコンでしかないのだ。

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不思議な路地で出会った少女:杉本鈴美
スタンド使いではない。

露伴のヘブンズドアーは、肉筆原稿でなくても、指の軌跡でキャラクターを空中に浮かび上がらせることができるようになった。
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原作では顔だけだったが、全身が見えるのはキャラクターの存在感がそう見せていると考えよう。
だから「マンガの表現の凄さ」が理解できない仗助にはおそらく通じない。

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15年前に起きた一家惨殺事件
鈴美はそのとき殺された被害少女の幽霊だった。

この路地は「あの世」と「この世」の境目で、ふたりはスタンド能力を呼び水に、鈴美と波長が合ったために導かれたのだという。

鈴美の話はこうだ。
鈴美とその家族を惨殺した犯人は、15年経った今も、この杜王町で密かに殺人を犯し続けている。同じ被害にあった「魂」があの世へと飛んでいくさまを見続けてきたが、幽霊である自分には何もできない。大好きな杜王町の「誇り」と「平和」を、今生きている人間が取り戻してほしい。

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鈴美のおかげで、ふたりはなんとか元の通りに戻ってこられた。

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死者である鈴美の案内なしに出ることができなかったこの迷宮は「あの世」と「この世」の境目。

振り返ると魂をあの世へ引っぱられるというのは、イザナミの黄泉平坂や、旧約聖書のロトの妻のエピソードなどに類するものだろう。
ジョジョではじめて描かれる「死後の世界」「死者の世界」。その詳細な「仕組み」が結局解き明かされないのも、「人にはどうにも抗えないこと」らしくていいと、僕は思っている。

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後日、鈴美の証言の裏を取るべく杉本家の墓を訪れた露伴は、寺の和尚から衝撃の事実を告げられた。

事件当夜、当時4歳の露伴は、家族で縁のあった杉本家に泊まっており、くだんの一家惨殺事件を逃れた唯一の生き残りだった。しかも、犯人から露伴をかばい、逃がしてくれたのが鈴美だった、という。

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そして、仗助たちとニアミスした謎の男こそ・・・

次回「重ちー」の収穫(ハーヴェスト) その1

余談だが:
鈴美がふたりに勧めたポッキー
アニメと原作ではパッケージが異なっている。
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アニメに登場のものは1998年にリニューアルされたもので、原作のデザインは、1974年から幾度かのマイナーチェンジをしながら長らく使われたパッケージだ。

本作の舞台は1999年なので、当時販売されていたのはアニメのデザインのもの。しかし、原作は1993年に執筆されたので古いデザインで描かれていたのだ。おそらく、アニメではそこら辺を考慮して描かれている。

しかし待て。
そうなると鈴美は現行の商品を、どこかから持ってきたことになる。

鈴美はこの路地から移動することはできないが、
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表通りのオーソンで新聞を読んでいるらしい(アニメではカットされている)ので、なるほど、商品を持ち出すことは可能かもしれない。だが、鈴美がそんなことをするだろうか。

そりゃあ彼女の身の上に起きた凄惨な事件に比べたら、実にちっぽけな犯罪とはいえ、大好きな杜王町の「誇り」と「平和」を取り戻したいと15年間願い続ける鈴美が、平然と万引きをするとは、少なくとも僕は考えたくない。

ポッキーには露伴も触れることができたが、幽霊である鈴美にも触れているので、それが実体か幽体かは気にしなくてもいい。然るに、このポッキーは事件当時から鈴美が持っていたものと考えるべきだろう。

だとすれば、パッケージは原作のままでよい。アニメスタッフは、ちょっと考えすぎたんじゃないかと思うね。
折れるんだから、食べればきっと無くなるだろう。しかし鈴美は幽霊だから腹が空かない。このポッキーは、食べないままずっとその状態で鈴美の手元にあったのだ。
そして、もともと事件当夜に一緒に食べるつもりだった露伴にだからこそ振る舞ったと考えた方が、ロマンがあってよい。

僕の方こそ、穿って考えすぎかねぇ・・・?

おことわり)
アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」 のレビューは
「原作準拠」の検証の目的で、コミックとの比較をするスタンスで書いていましたが
第四部は、三部までほど「原作準拠」に拘っていないようなので、比較はもちろんしつつ、
筆者の勝手な推察や持論を、多めに盛り込んで書いてゆきます。
基本的に、揚げ足取り中心の文章となることはこれまでと変わりないので
ファンの方には、しばしば不愉快な思いをさせることがあると思いますが、
筆者は決して悪意を持ってはいないことをご理解の上読み進めていただけると幸いです。
また、検証・認識の甘さから、的はずれなことを書くかもしれません。
その場合は、遠慮なくご指摘ください。
ご指摘・お叱り・応援、あらゆるご意見を歓迎します。

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