Cogito, Ergo Sum

我思う故に・・・新館

ONEPIECE 1154「死ねもしねェ」

 




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エルバフの不幸と、ロキの不幸。


ロキが生まれた今より63年前、エルバフはわずか5才の人間:リンリンの手によって村をひとつ落とされ、当時の世界最高齢だったエルバフ伝説の英雄の片割れ“滝ひげのヨルル”を殺された。


そればかりか、その年のエルバフには度重なる自然災害がこれでもかと起こり、農作物や漁が壊滅的な影響を受け、人々は極限の飢饉に見舞われた。

余裕のなくなった人々の心は荒み、国内の村同士の諍いが次々と激化。


心を病んだ人々は、その悲惨な状況の原因を巡って、遣りどころのない感情の矛先を「呪われている」という噂があるロキに向けた。

そもそも、そんな噂が流布されたのは、王妃エストリッダが自分が産んだ王子ロキを“怪物”と忌み嫌ったからである。


しかし、純血にこだわった結果古代巨人族の血を濃く受け継いだことは、王家にとってむしろ僥倖といえるはず。赤子がどんなに巨大であっても、角が生えていようとも、異常に剛力であったとしても。

まぁ、確かに悪魔的な目つきに恐怖を感じるのは理解できなくもないが、子どもが親の理想通りに生まれてくるわけはない。どんな奇形や難病を抱えていようとも、親だけは愛してあげるべき・・・いや、あまり軽率なことは云えないが、せめて愛する努力ぐらいはするべきだったと思うかな。
一瞥して100%の嫌悪感を抱き、まじない好きな自分の価値観のみで「怪物」だの「呪い」だの、エストリッダは人の親になるべき人物ではなかった。いわんや王妃・国母をや。


側近たちだって、エストリッダを慰める手前否定してこそいるが、生まれてまもなく冥界に投げ落とされて死ななかっただけでなく、自力でアダムをよじ登って戻ってきた異常事態を見ているから、心から否定できなかったに違いない。そこから噂が漏れたんだろう。人の口に戸は立てられないからな。

結果、エストリッダは精神をすり減らし苦しみ抜いて、ハラルドの帰国を待たず数ヶ月で死んだという。
すなわち、ロキの存在を「呪い」であると決めつけた自縄自縛で、自身が自身を呪い殺したようなものだ・・・ザマァ


帰国したハラルドはロキの誕生をたいそう喜んだが、そのときにはもうロキは、親の手に抱かれても何も感じない赤子となっていた。「愛を諦めた」とは云いえて妙だ。


近衛の兵たちはロキの眼に巻かれた包帯について「生まれながらに目を患っていた」と説明し、ハラルドもそれを納得した。
てっきりエストリッダが「ロキの目を潰せ」と命じたから潰されたのかと思ったが「見えてはいる」というし、どうやらそうではないらしい。

エストリッダ同様ハラルドもまたロキを嫌って大暴れすることを恐れたか、ほとんど意味のない“その場しのぎ”で、ロキの凶悪な眼を他人から見えなくしただけのようだ。
こいつら、ロキが生まれてからのエストリッダの異常な様子について、ハラルドに何ひとつ伝えないつもりだな。いったい死因を何だと伝えたんだろう・・・。

この時点でロキの不幸は、ロキの立場に寄り添う者が誰ひとりいなかったことだろう。
「よそ者」とか「妾腹」とかいくら云われても(云われてません)母親だけは自分を溺愛してくれたハイルディンとの育ちの差がここに出る。

ロキに寄り添う者がいないという点では、ハラルドも実に罪深い。
妻の死の真相を確かめることもせず、息子が眼に病を持っていることも、母を亡くしたことも、不憫に思っているくせに何も策を講じなかったのだろう。

そして此度の飢饉を救うこととなった人間の国との外交の成功から、国の内外でエルバフの在り方を精力的に改革してゆくハラルドはそれ以降も多忙を極め、ロキの件はほぼ放置されることとなる。


ロキはハラルドが遠征に出かけるたびにエルバフの村々で暴虐の限りを尽くした。
「ここはエルバフ、強者の国! 弱ぇやつらは死ね!」

まぁ、ハラルドの留守ばかりを狙うってのは、自分がハラルドよりも弱者だと分かっているから… ということにもなるんだが、そのハラルドが外国と共存するために単に「強さ」だけを求めることをやめ、文化や知識に多様性をもたせようとする考えがエルバフ全土に受け入れられ、エルバフが次第に「強者の国」ではなくなってゆくことが、ロキは気に入らなかったのだろう。

なぜならロキのアドバンテージは先天的な「強さ」だったから。


だからこそ同じ父親の血を受けながら、多民族との融和を臆面もなく訴えるハイルディンは特に気に入らない。


母から拒絶され、父にもそのフォローをしてもらえなかったロキには、互いを慈しむ関係を築くことができない。それを羨ましく思っても、自分の生き方の方が崇高で正しいのだと虚勢を張ることしかできなかった。

自暴自棄になり冥界へ身を投げても、簡単に死ねるほど彼の肉体は脆弱ではなかった。
ま、そりゃそうさ 0歳のときでも死ななかったんだから

若かりし父ハラルドもまた、他人の痛みなどお構いなしの男だった。だがそれは単に彼の精神がガキだっただけで、ロキほどの境遇の不幸はなかったし、イーダとの出会いが彼の頑なな心を溶かし、宗旨を改めたハラルドの熱意もまた国民の意識を変革した。

それが肯定される今のエルバフで、ロキが自身の長所を活かそう(すなわち強く生きよう)とすれば、もう腕力で押し通る以外の選択肢はなかったのである。

さて、そんなやけっぱちのロキ15歳(人間換算で5歳)の前に突然現れた人間の海賊たち。
その筆頭の男が・・・


ロックス
なんと黒ひげティーチの父なんだと。
この男、なんでファミリーネームで呼ばれてるんだろうなぁ・・・

たしかに顔がティーチとよく似てるな。
シルエットのときは、なんというか…サンゴのような変な髪型に見えたが、歯が揃ってる分こいつの方がカッコいい・・・かな。

後ろにいるのは、金獅子のシキと白ひげニューゲートと、これはオリジナルのステューシー(ミス・バッキン)かねぇ・・・。

この出会いによって、ロキはロックスに憧れるようになるらしい。
血も涙もない傲岸不遜な「悪の権化」という感じだろうか。その生き方にこの頃のロキが憧れるというのもわからない話ではないな。


このロックス

8年前(56年前)の世界会議レヴェリーで海軍大将をひとり殺害し、賞金首として政府に追われているそうで、この世界会議に身分を偽り潜入していたハラルドは、おそらく政府か参加国首脳たちに外交の直談判をするためだったと思われるが、願いも虚しく事件のドサクサに脱出したという。

どうやらハラルドに用があって、ロックスはエルバフまでやって来たのだ。
ハラルドの噂を聞きつけてやって来たのか、それとも8年前に面識があるのか。もしかすると世界会議の場からハラルドが脱出する手助けをしたのかもしれない。だとすると、ハラルドはロックスに恩がある? やばいやばい・・・
ってか、今ハラルドいないよね。

56年前の世界会議でハラルドの交渉がうまくいかなかった件。
ヤルル様曰く


太古の昔、エルバフの屈強な船大工集団がまるっと捕まったという話から、ハラルドの誠意や熱意が伝わらない理由がハラルド個人にあるとは限らない、と喩えて話した。
エルバフが(ひいては巨人族全体が)世界にどう思われているのか、エルバフが世界から孤立するような文化形態であり続けたことにも、なにか古代から今も続く根深い理由があるのかもしれない。

ところで、


その話に出てきた巨人の船大工集団「大槌船団ガレイラ」というそうな。
ガレーラカンパニーの名前の由来なのはまず間違いなさそうだが、この神話レベルの大昔の船大工たちが全員捕まって何かを造らされたとしたら・・・

それってプルトンか、ウラヌスだよなぁ・・・

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Comment

  1. 匿名 より:

    ロックスと黒ひげの関係驚いたけど、違和感があるんだよな。
    こんなビッグネームの息子が白ひげの船にいるのに、自身の海賊活動開始するまで
    海軍や他の海賊がノーマーク(知らない)とかあり得るのかね。
    海賊活動開始後、作中に”ロックス”の名前が出てからも不自然なくらい言及や関連無し。
    特にロックス海賊団を説明した海軍の会議とか。
    これが単にシャンクスの話どおり、白ひげの影で目立たないようにしてたからだったら残念。

    • BIE(管理人) より:

      僕はロックス本人じゃないかと思ってたんですけどねぇ
      少なくとも白ひげが気づかないはずありませんよね。
      白ひげは何を考えて、仲間殺しまでしたティーチを放置したんでしょうね

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