扉絵シリーズ第23弾「押し掛け麦わら大船団物語」
え〜と、ちょっと過ぎた話題で申し訳ないんだが、扉絵シリーズ第23弾「押し掛け麦わら大船団物語」が終了した。
特集ページでは最終話までの扉絵と、90巻掲載分の入れ替えが終了したのでお知らせする。ちょっと内容をまとめておこうか。
│
【キャベンディッシュ編】
キャベンディッシュは、ルフィよりも1年早く新世界デビューした海賊「美しき海賊団」の船長。
詳しくは以前書いた記事を参照のこと。
もともとブルジョア王国の王子だったキャベンディッシュだが、その類まれな美貌のせいで大人気。国内女性の結婚率が壊滅的に低下したため、「人気ありすぎの罪」に問われて国外追放となった。その境遇を哀れんでか、忠誠心の高い74名の部下を引き連れて海へ出たものの、キャベンディッシュの第二人格である「ハクバ」がロンメル王国で人斬り事件を起こしてしまったため賞金首となった。
「ディアス海戦」のA級戦犯と言われている「首はねスレイマン」が食客として同行している。
│
【バルトロメオ編】
以前書いた記事
たぶんこれまでもこんな風に考えなしに暴れて悪名を轟かせてきたのだろうな…という無鉄砲ぶりを見せたバルトロメオ。
とある町で、四皇シャンクスの旗をいきがって燃やしてしまった。いったいどう落とし前をつけるつもりか…と読者の間で騒然としたようだが、ルフィはバルトロメオを「部下」として意識しているわけではないので、バルトロメオがなにかやらかしたとしても咎めだてするような気はしない。どうせルフィはいずれシャンクスと戦うつもりなのだから、そのきっかけのひとつとなるくらいの認識でいいと、僕は考えている。
│
【サイ編】
華ノ国のギャングなのか、王室公認の水軍なのか、いまいち分からない「八宝水軍」。
自分の跡取りとして13代棟梁になったばかりのサイの素養に物足りなさを感じていたチンジャオが、軍を強化し国内での地位を盤石とするために「ニ宝水軍」との合併を目論んでいたが、サイが棟梁としての才覚を現し、奥義を極めた今となってはもはやその必要もなくなり、サイは許嫁との婚約を破棄して、めでたくベビー5と結婚をした。「八宝水軍」の将来も安泰だ。
許嫁と望まぬ政略結婚をしていたならサイの奥義覚醒はなかっただろうし、吐いた言葉に責任を持つサイと共にいればベビー5も幸せになれるはず。
世界会議への王の随伴任務を最後に「八宝水軍」は華ノ国とは縁を切るらしく、それ以後は晴れて海賊の仲間入り。しかし彼らに海賊として成し遂げたい事や夢があるわけでもなく、いつか戦闘部隊として麦わらの一味の役に立つべく、煩わしい任務から離れて腕を磨こうという考えなのだと思う。武闘家らしくていいね。
│
【イデオ編】
借り物の(貰った)船で、まだ名もなき愚連隊のイデオたちが遭遇したのは、手長族と足長族の諍い。手長族のイデオと足長族のブルーギリーは「千年抗争」とも云われるその種族間の因縁深い争いに信念を揺さぶられることもなく、破損した両族の船から新たな船を組み直し、仲間との絆を胸に、正式に「イデオ海賊団」を発足した。
元格闘家と賞金稼ぎの四人組が、これからは志も新たに海賊として何を目指すのか。僕的には彼らが一番面白かった。
│
【レオ編】
かつてはその存在や「借りぐらし」行動を、国民に愛をもって「見ないふり」されていたトンタッタ族。
ドフラミンゴ騒乱で国民にすっかり周知された彼らは、その怪力と物量で国の再建にも大きく貢献し、ドレスローザの救い主であるウソップやルーシーとの縁もあり、その地位を大きく向上させた。
レオ率いる「トンタ兵団」は組織をそのまま海賊へシフトしたが、リク王を始めとする王家はもちろん全国民が彼らを「海賊」と認めながらこれまで以上に懇意にし、世界会議へ赴く王の護衛まで仰せつかった。
つい先日までドレスローザは海賊が支配する国だった。とはいえ、王下七武海の名のもとにドフラミンゴ傘下の犯罪は罪を問われなかったため、世界会議に参加しようというリク王家が海賊であるトンタ兵団を擁護するのは、国の立場を危うくする危険性をはらんでいる気がしてならない。
ただし、今回リク王がトンタ兵団を護衛に連れ出したことには、もちろん彼らの怪力と勇敢さ、さらには隠密性が役に立つ一面もあるだろうが、外海を知らず人に騙されやすい彼らに経験と知識を与え、少しでもルフィたちの役に立つよう後押しをする意味合いが大きいように感じる。
│
【ハイルディン編】
予想していた通り、バギーの下で傭兵をしていたハイルディンの仲間の中に、ゲルズちゃんがいた。
ビッグ・マムの回想シーンに登場した、幼き日のハイルディンの後ろでお菓子を食べていたスタンセンは、シャボンディ諸島の奴隷オークション会場で解放された男。ロードとゴールドバーグは名前だけが登場していた。あと同時に名前が出てきたエルバフの王子:ロキの人となり次第ではエルバフすべてを味方につけることも夢ではない。ドリーとブロギー、オイモやカーシーとは懇意だし、ロキが改めてローラを見初める可能性もあるしな。
人物紹介だけで物語がなかったことは少し不満だが、今回はバギーが歯噛みしたことだけで十分としておこう。
│
【オオロンブス編】
スタンディング王国直属の冒険家だったオオロンブスは、大船団をそのまま率いて冒険家の職を辞した。
「偽りの冒険野郎」「殺戮支配者」の異名は、史実のクリストファー・コロンブスの実態から引用されているようだが、彼が冒険の道中で先住民を虐殺したとか非道な人体実験をしたような例は、(まだ)作中で明らかにされていない。
そればかりか、時間や規律に厳しい几帳面な性格は、船室の装飾にまでシンメトリーを求める突き抜けぶりからは非道な行いを想像できない。
海賊行為の計画表を作成しその通りに実行しようとするところからも、オオロンブスの海賊適性は極めて疑わしく、その初陣は襲撃した相手に逆に施しをしてしまい失敗に終わった。
4300人の部下たちは、おそらくその大多数がドレスローザの騒乱に参戦すらしておらず、ある日突然提督の気まぐれで「王家直属」という美味しい職を失ったことになるのだが、よく誰一人出奔することなく海賊に身を落としたものである。
そこまでして一生ついていくほど、オオロンブスが魅力的な人物には、今のところ見えない。
│
【番外編】
海賊を廃業して染物職人に弟子入りしたベラミー。
ベラミーには、この町にあるという「破れない布」で手ずから作りたいものがあるのだが・・・、どう見ても麦わらの一味の海賊旗だ。
本来の麦わらの一味の旗印はウソップが鼻歌交じりに描いたものなんだが、三角定規できっちり平行線を引いて下絵を描いているあたり、意外と手先が器用でマメな性格なのかもしれない。
いや、違うな… かつてのベラミーは刹那的な快楽至上主義で「几帳面」とはほど遠い性格だった。かつては人を見下し、その尊厳を踏みにじってきたベラミーが、海賊の信念の象徴である海賊旗を「破れない布」で作ろうとしている。
感謝を込めて恩人に贈るものだからと、作品に魂を込められる男に、ベラミーは生まれ変わったのだ。
ゴムとバネ。似て非なるものとして対比されるキャラクターになると、僕が密かに期待していたキャラだけに、この変化は嬉しくもあり、寂しくもある。