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我思う故に・・・新館

宇宙戦艦ヤマト 2199 #03 木星圏脱出

 




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旧作においての第04・05話に該当
僕はDVD版を観ながらレビューしていたので気付かなかった。
今回のTV放映が本作初見となる友人が漏らしていた不満
それは
主題歌がささきいさおじゃない。
EDを、DVD版と違い中島美嘉が歌っていることは知っていた。
まぁEDはDVD版でも当初「真っ赤なスカーフ」ではなかったし
ガンダムSEEDみたいな、極めてどーっでもいいEDは確かに不快だが
問題はむしろOPにあるだろう。
楽曲はもちろん「宇宙戦艦ヤマト」なのだが、アレンジが異なり
唄っているのはJAM Project +その他大勢だ。
“JAM Project”
食い詰めアニメシンガーの生活をすくい
アニメファン心理の足下をすくう
なんとも節操のないプロ歌手集団だ。(あくまで個人の印象です。
僕は”JAM Project”そのものを否定はしないが
“JAM Project”を起用すればファンは喜ぶだろう、という
安易な考え方には大いに疑問を感じる。
もちろん個々の歌唱スキルは非常に高い。
だからこそ、ろくなパート分けもされないまま、ただ合唱すれば
強すぎる個性は互いを邪魔しあい、結果楽曲の雰囲気を台無しにすることがある。
今回がそのいい例だ。
もともとこの曲は
「おらーっ!いくぜお前ェらー!!」とノリノリで歌う曲ではない。
名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」を、忠実以上にリメイクしたい出渕監督の
意向に沿っているとも到底思えない。
DVDとの差別化も結構だが
このTV放映しか観ない人にとっては、
拒絶感を感じさせるとても大きな要因になっていると理解するべきだ。
こういうことはライブでやれば盛り上がるのは鉄板だ。
是非そういう場所でやってくれ。こっち来んな。
TV版しか知らない人のために掻い摘んで説明すると
DVD版ではささきいさおがソロで唄っている。
かつて和製プレスリーと呼ばれた重厚でセクシーな歌声も
声質の経年劣化は避けられなかったようだが
旧作に忠実に再現された(若干軽いが)伴奏とともに
「これがヤマトだ!」と本物を感じさせる。
しかも03〜09話は(01・02話はOP無し)
旧作01〜03話までと同じく、
イントロが無く、ヤマト起動のSEのあとアカペラで始まるバージョンだ。
10話からおなじみの軍艦マーチのようなイントロで始まる
バージョンに変わるのも、作品そのものの再現性を高めたい意識と
高いサービス性に他ならない。
もう少し先の話だが
EDが「真っ赤なスカーフ」に変わるタイミングも
監督が考え抜いた演出であり、今回これが無視されるようであれば
TV放映版そのもののクオリティを自ら下げることになると
ぜひ覚えておいてほしい。
さて、地球圏を離脱したわれらがヤマトは
33万6000光年という途方もない長旅を成功させる鍵を握る
ワープ航法のテストへ。
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ワープとは、このように
ワームホールを人為的に発生させ、実質的に光速を越える航法です。

え?それだけかーい!
旧作では、
アインシュタインの「閉じた宇宙論」などのそれっぽい薀蓄に加え
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時間の波を跳躍するという、目で見て分かりやすい解説が為されていた。
まぁ「閉じた宇宙」は
仮説として不十分だったことをアインシュタイン自身が認めたし、
今思うと、他にもいろいろツッコミどころはあるけれど
リアル指向のこの作品で、
アホの子に説明するような解説は不要との判断なのだろうか。
まぁ細かい理屈はどうでも、
これから起こることはみんな基本的に知ってるしな。
今回、旧作の04・05話分、すなわち、
ワープテストと波動砲を一話にまとめているためストーリーはサクサク進むが
旧作ではこのワープ直前にガミラス空母の攻撃があり
ワープに備えてヤマトの武器は使えないから、と
ブラックタイガーチームのお披露目となる。
本来なら航空隊の必要性を説く大事なシーンだったりする。
そして航空隊の山本が被弾し、ヤマトに帰還困難になる。
同胞を見捨てないヒューマニストと
あくまで作戦遂行のリアリストの二律背反にドキドキした少年時代。
また、ミサイルの命中寸前に
初めてヤマトのワープを目撃したガミラス兵の驚きも
僕たちがヤマトに抱く未知の可能性への期待を高めてくれたものだが・・・。
たった一隻の戦艦での戦争だが、
こういう描写があることで「生きた人間が闘っている」ことを感じさせ、
戦争を知らない子どもたちにも
戦いの高揚感や、その恐ろしさを伝える役割を担っていたように思う。
本作では、枝葉のリアリティに拘るあまり
幹や根が描き切れていない印象をしばしば受ける。とはいえ
何に重点を置くか、これは監督におまかせするよりない。
で、だ。
まぁワープといえばお約束のこのシーン
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当然、美麗な絵で再現されています。
オーディオコメンタリではブッちゃんがもっともらしい理屈をつけて
本作においても再現しなければならない正当性を解いていましたが
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TV版では下着どまりだったようですね。
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DVD版では下着も透けて乳頭らしきものもちらりと確認できます。
で、どうでもいいんだが・・・いや良くないな
現代の考証でリメイクする主旨の作品にしては、この下着適当すぎないか?
白無地に飾りはリボンだけって
なんでここだけ旧作時代の万丈パンツなんだ!
官給品なのか! お役所仕事だからセンス悪いのか!
いくら物資不足時代の官給品だとしても、
専用の艦内服を新たにデザインして配給する余裕があるなら
日用品にも気を遣ってやれよ。
旧作の時代なら、男尊女卑の名残があったとしても理解できるが
今作られる作品でこれはあんまりだろう。
下着のデザインだって2世紀進化なしかよ。
さてこのワープテスト
旧作では月軌道から火星宙域までのテストが無事成功。
本作では天王星軌道までの予定が
予定した航路上に未知の障害物を感知し、自動で回避したため
木星圏にワープアウトした。と
意味はよく分からないが、空想科学をここで究明しても意味はない。
ヤマトの航路はユリーシャを安置している自動航法室に依存しているらしく
ブラックボックス的存在であるそのナビの気まぐれに左右されることがある
という、不思議かつ御都合設定。
次なるイベントをサクッと消化するべく
実に都合よく木星に辿り着いた。
そこで遭遇したのは、そうご存じ「浮遊大陸」
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旧作では
オーストラリアに匹敵する大陸が、
木星のメタンの海をある軌道に沿って回遊しているのだ

と、もっともらしいナレーション(なぜか伊武雅刀)があり
ヤマト以前の艦では木星に降りることができなかったせいなのか
船乗りたちの間で伝説級の存在として
まことしやかに語られていたものとされている。
つまりは自然現象だ。
反して本作における浮遊大陸はというと
まずこれを見てほしい。
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ガミラス本星って地表は穴だらけだよね。
この穴の部分の陸地が実は浮遊大陸。
ガミラスは、
移民のためなのか、植民地としての生態系を本星に近づけるためなのか
ガミラスホーミングという、本星の環境を移植する侵略行為を行っている。
遊星爆弾による毒性植物の散布はその第一歩であり
本格的なガミラスホーミングを地球に行使するための準備を
ここでしているという設定になっている。
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シュルツの愛娘:ヒルデたん
大人気らしいな。・・・じゃなくて!
注目すべきはそこじゃない
このメッセージデバイスと良く似たものを
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雪が持っていたな。ということだ。
本作における雪は、なにかと謎が多い。
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主砲こと“ショックカノン” かっこいい!
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三口の砲門からのエネルギー弾がなぜだかキリモミ状に束になり
一本のねじねじエネルギー弾となる原理は不明。
ショックカノン、三式実体弾、パルスレーザー、
そしてロケットアンカーに、この後登場する波動砲。
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駆逐艦、巡洋艦クラスを圧倒する勇姿
ヤマトの武装紹介を兼ねた回だね、第03話は。
そして大陸を出たヤマトは
旧作のように、浮遊大陸と同じ軌道を一周して大陸に追いつくような
まどろっこしいことをすることなく
すぐさま振り向き、波動砲の試射を兼ねて大陸基地を撃つ。
かつてヤマトを観たすべての男子が真似をしたことがあるであろう
波動砲発射のシークエンス。
「オレの方が完璧に言える」「オレの方がもっとリアルだ」と
小難しい用語の羅列を一生懸命覚えたものだが
本作製作の流れからして当然、
今回の波動砲発射はその子どもたちの行為の延長上にあり
あのリアル描写が売りだった波動砲発射を
今ならもっと、こんなによりリアルに映像化できる!

という「リアル描写再現自慢」をしたい監督の
オタクならではの大いなる自己満足(褒めてます)を満喫できる。
旧作では、波動エンジンの全エネルギーを一気に放出するとされていた波動砲
本作での波動砲とは「次元波動爆縮放射機」
波動エンジン内で解放された余剰次元を射線上に展開
超重力で形成されたマイクロブラックホールが瞬時にホーキング輻射を放ち
域内の物質を蒸発させる

とされており、単なるエネルギー兵器ではないように変更されている。
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見事というか・・・
浮遊大陸のみならず木星の大気の層を一部消滅させて
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ヤマトは無事木星圏を脱出。
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波動砲の威力に有頂天になる南部と
逆に、より慎重になる他のクルーたち
ここで肝心なことは波動砲が及ぼす全機関への影響。
旧作では、波動エンジンの全エネルギーを一気に放射するため
エンジン内はエネルギー0、推進力を失うとされている。
そのために発射後の波動エンジン再起動にそなえるために
艦内の電力はすべてカット、照明は消え、廊下の動く歩道もストップ。
さらに撃った後には、推進力を一時失ったヤマトが
木星の重力場に飲まれかけるところを
メインエンジンフルブーストでなんとか切り抜けるという
この波動砲のリスクを感じさせる緊張感が本作にはない。
「再起動時に備えて非常電源に切り替える」と
真田さんから一言あるだけだ。
本作では
波動砲を撃つことによって起きるヤマト自身のリスクよりもむしろ
ワープや波動砲が敵はおろか宇宙全体に及ぼすかもしれない影響
そしてそんな大それたことが果たして許されるのか、という
ぶっちゃけ今考えても仕方のない、
ある意味、偽善的・独善的懸念をよりフィーチャーしている。
我々の目的は敵を殲滅することではない。
ヤマトの武器はあくまで身を守るためのものだ。

この沖田艦長のセリフは非常に重要。旧作とはニュアンスが若干異なります。
自衛隊でもあるまいし、専守防衛に徹するわけでもないでしょうが
シリーズを重ねるたびに、好戦的に外連味を増してきた
古代進の性格とヤマトの武装。
僕たちの記憶はその回を重ねるごとに刷新されていたのかもしれません。
しかし出渕監督が言うには、ファーストシリーズの”本来の”ヤマトは
これ以降、直接人に向けて波動砲を撃つことはしなかったと言います。
(すいません、検証してません。)
禁断のメギドの火を手に入れた我々へ下る審判はいかなるものか。
ヤマトと地球のあしたはどっちだ。
あー・・・04話はレビューしないかも。

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Comment

  1. BIE(管理人) より:

    ありがとうございます。
    同調意見がもらえると非常にやりがいを感じます。
    04話は書くべき事があんまりないなーと思っていたのですが
    せっかくリクエストをいただいたので書きました。
    今後ともよろしくお願いします。

  2. エスティ より:

    DVD一話しか観てないので、非常に参考になりました。
    OPの件、まったく同感です。
    過去何度も再録してきましたが、オリジナルを越えたと思わせるモノはありません。
    私は特に女性コーラスでフェードアウトしていくTVサイズ用が好きです…余韻がグッド。
    是非、次回も期待しておりますので、どうか続けてください。お願いしますm(_ _)m

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