Cogito, Ergo Sum

我思う故に・・・新館

ONEPIECE 1047「都の空」

 




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周囲の物質のみならず、他者の身体にまで影響を及ぼすルフィの覚醒能力が、雷を掴んだ。遂に自然現象まで漫画的に我がものとしたそのデタラメさに、カイドウも慣れてきたのか、もはや惑わされず冷静に捌きはじめた。


カイドウが云うには「悪魔の実」の能力がいかに凄かろうと、海の覇者にはなれない。肝心なのは「覇気」なのだと。
そこでサラッと触れているのが「ロジャーが能力者じゃなかったように…」
かねてから不明瞭だったが、ロジャーは非能力者だったそうだ。

実は僕は、そうであればいいな…とは思っていた。
東の海で「海の秘宝」として伝説級の扱いをされていた「悪魔の実」が、偉大なる航路に入って以降はまるで「能力者に非ずんば海賊に非ず」のような雰囲気で、船長ならば食ってて当然の「悪魔の実」。比類なき強さを見せる非能力者といえばガープ、レイリー、ミホークくらいだが、皆どちらかというと前時代の戦士であることが不満だった。(シャンクスもおそらくそうだと思うが未確定のためここには含めない。)

ロジャー海賊団の主要メンバーには能力者の戦いがほぼ描写されておらず、航海途中で手に入れた「バラバラの実」にもバギー以外誰も興味を示さなかった。(バギーですら食うつもりはなかった)


そんなロジャー海賊団において、ロジャーに次ぐ「覇王色の覇気」を持つといわれたダグラス・バレットが伝説にもなっていないのは、ひとえに「悪魔の実」に頼った戦闘のスタイルが「海賊王」の戦いにそぐわなかったからと考えれば納得がゆく。

だが、毎度毎度疑い深くてお恥ずかしい限りだが、僕はこれを経てなお、まだ「ロジャーは非能力者」と断定しない。レイリーやシャンクス、あるいは白ひげがそう言っていたならいざ知らず、あくまで接点がそう多かったとは思えないカイドウがそう認識しているにすぎないからだ。

でもまぁ、ロジャーが非能力者だったことを僕も望んでいることは事実だし、逆に作中でまだ何の言及もないロックスが能力者だったと仮定して、名だたる能力者ばかりのロックス海賊団を非能力者のロジャーとガープが壊滅させたと考えると、これは悶えるほどに熱い。
続報に期待する。

まぁ、ロジャーのことはさておき、
リンリンによってもたらされた「ウオウオの実 モデル:青龍」のおかげで、カイドウの覇業は目まぐるしい前進を遂げたはずだ。巨大な龍の邪悪と神々しさが共存した姿と桁違いの破壊力は、相手の心を折ることに十分以上に役に立ったであろうし、カイドウ自身その効力を最大限に利用してここまで組織の規模と版図を拡大してきたのだ。

要は、「悪魔の実」はあくまで道具にすぎず、最終的には根っこの強さが物をいう。すなわち精神と身体の強さ、それを練り上げたものが「覇気」の強さということなのだろう。

ではルフィとカイドウ、いずれの「覇気」がより強いかといえば、それはカイドウだろう。


「武装色の覇気」「見聞色の覇気」は得手不得手があるが、鍛えれば強くなる、または研ぎ澄ますことが可能だが、一両日に強くできるものではない。現状のディスアドバンテージを即座に詰めることは難しいだろう。
しかし「覇王色の覇気」は天性のもので後天的に強くすることはできないが、その真髄を深く理解するに至っていない場合はまだ伸びしろがあるとも云えるだろう。
やはり、海の覇者にもっとも必要な資質は「覇王色の覇気」の強さ、ということになる。

さて、ルフィの「覇王色の覇気」はカイドウを凌ぐことが出来るや、否や?
もしくは、覚醒した「ヒトヒトの実 モデル:ニカ」は、「覇王色の覇気」の絶対的な不利を覆すほどにデタラメなのか?

ともあれ、相討つ最強戦力の戦いは終わりが近く、ふたりの体力も限界を迎えつつある。


カイドウが力尽きれば討ち入り勢の勝利だが、支えを失った鬼ヶ島は落下し、討入り勢を含むほぼ全員が花の都の民大勢を巻き込んで絶命するだろう。
しかし、彼らの覚悟はそれを受け入れ、より良いワノ国の再興のための尊い犠牲になる気満々だ。

だが、なお彼らを犠牲としない道を最後まで諦めないのがヤマトとルフィである。
ヤマトは自分の力ではどうすることもできないが、唯一カイドウと同じ龍の力を持つ(はず)でありながらすでに事態を諦めつつあるモモの助を叱咤する。

宥めすかしたりなどしない、「君にしかできない」「諦めることは許さない」とひたすら厳しく詰め寄る様子は、自らをおでんと称した父の、子に対する愛情を表しているのだろうか。

そしてルフィは、

カイドウを倒すという、自分にしかできない役割を全うするべく最善を尽くすのみ。鬼ヶ島を落とさないように頑張るのはモモの助の役割と、信じて任せた。
さぁ進退窮まるモモの助、もう逃げることも先延ばしにすることも許されない。お前が「今」何とかするのだ。

さて、モモの助が思い出すおでん城陥落のとき。彼にとってはほんの数週間前の出来事。
事情が分からない8才児にとっては、ある日突然身に降り掛かった不幸。
父親が公開処刑され、城に火を放たれ、御家存続のために母妹とも引き離された。


まだ母の膝が恋しい幼子には辛い決断ともいえるが、侍の男児の理想にはその甘えは許されない。
幼いといえども、父亡き今、母と妹を守るのはモモの助の役割。母の決死の覚悟に応えずして、亡き父に顔向けできようか。


ここで退いては母に合わせる顔がない。
決断の時だ!モモの助、肝を括れ。

だがなぁ…
弱冠8才とはいえ、モモの助がこれだけ意気地なしなのには、周囲にも責任があるような気がしてならない。


モモの助は父おでんが身勝手に世界周遊中に船の上で産まれた。
赤ん坊が懐かしいロジャー海賊団では蝶よ花よと可愛がられ、ロジャー最後の航海前に母妹とともに父に先んじて帰国。だがその間に御家は没落し、帰国した父はそれから5年にわたり理由も告げずに国中の笑いものとなった。
父の名誉が回復したのは父のいまわの際で、父を失った動揺のなか、燃え落ちる城でカイドウに殺されそうになった。

周囲に翻弄された、同情できる面があるとはいえ、本人の、そして近しい人々の心構えに至らぬところはなかっただろうか。

おでん不在の間、没落した九里の郷の民心を、細君ときはよく繋ぎ止めた。
だが、不条理に将軍の座に就いたオロチの悪政と後ろ盾たるカイドウの無法の中で、いつ戻るとも分からない主君をひた待ち、ただひとりの光月家の跡取りであるモモの助に、人の上に立つ資質も、まともな武術も身につけさせる暇がなかったとは言わせない。

8才児に背負わせることが酷であることを承知の上で重ねて云うが、モモの助は甘やかされ過ぎだ。
「食わねど高楊枝」の精神や高いところが怖いと認めないのは立派だが、


「控えおろう!」「拙者は将軍になる男でござる」己を知らないこの物言いはいささか傲慢。
努力なしに将軍になれる、産まれの良さが貴賤を決めると、少なからず考えていたフシがある。

何年もの不遇の間、家臣たちは、そしてときは、いったい何をしていたのか。

だが今モモの助は、自分に足りない20年の経験を補うために大人の身体を手に入れた。


それはカイドウに抗う手段として成長した龍の力が必要だったからだが、少年の精神のまま身体だけ大人になることの意味を熟考したうえでの決断であるはずだ。もはやモモの助は「まだ子供だから」という甘えが許されない存在になったのだ。

急げ、モモの助よ!
ワノ国の民は、今か今かと君の精神の覚醒を待っている。
ワノ国滅亡まで、あと数分。あと数分しかないのだ!!

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